Goose Island Japan

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米国のクラフトビールムーブメントの先駆者であるグースアイランドブルワリーが、ついに日本に上陸した。このシカゴ発のブルワリーは米国でもそうだったように、日本で話題を呼び、そして議論を招くこととなるのだろうか。日本のように競争が激しい市場では、新規参入者はなかなか受け入れてもらえない。しかし、グースアイランドは成功するために必要な経験と資質を兼ね備えているだろう。

『ジャパン・ビア・タイムズ』27号の木樽熟成特集で紹介したように、グースアイランドは米国最大級の木樽熟成プログラムを有す。同社のバーボンカウンティースタウトは、木樽熟成ビールというカテゴリーの中で最高傑作であり、いくつかの人気ビールレビューサイトでは最高得点がつけられている。また、ここの木樽熟成プログラムはただ大きいだけではない。米国初のプログラムであり、全ブルワー世代に影響を与え、ファウンダーズやエリシアンなどの業界大手がすぐに後に続いたのである。

グースアイランドは複数のビールカテゴリーに革新をもたらしてきた。中でも、アメリカンIPAに与えた影響は大きい。ファイアストーンウォーカーのマット・ブライニルドソンが私たちのインタビューで言及したとおり(第24号)、マットが1990年代後半、グースアイランドの創設者グレッグ・ホールの息子であるジョン・ホールのもとで働いていた当時、彼らは積極的に様々なホップの品種やブレンド、手法を試していた。その実験から、クラフトビールムーブメントにおけるもう一つの最高傑作であり代表作となる、グースアイランドIPAが生まれたのである。同社は、アンカーブルーイングカンパニー、シエラネバダブルーイングカンパニー、そしてラグニタスブルーイングカンパニーと共に、よりホップが利いたビールの流行を促した。

グースアイランドは、ビールおたくに好かれるようなビールだけでなく、多種多様なビールを揃えている。何年にもわたり、グレート・アメリカン・ビア・フェスティバルやワールド・ビア・カップで、様々なビールスタイルの部門で数多くのメダルを獲得してきた。シカゴのクライボーン近くにある同社のブルーパブは、1988年からその地域に住むビール愛好家やこの「風の街」で知られるシカゴを訪れる観光客から親しまれてきた。

その他の大規模で象徴的なブルワリーと同様、グースアイランドはこれまでにいくつかの困難を乗り越えてきた。その歴史の中で最も物議を醸した出来事が、2011年3月に起きた同社のアンハイザー・ブッシュ・インベブへの売却であるだろう。同社ビールの筋金入りのファンは失望した。これまでに、米国の偉大なクラフトブルワリーのいくつかが、巨大ブルワリーへ完全譲渡または一部売却を行ったが、同社の売却が最初の一つである。このテーマについては、以前「Craft Beer is Dead」と「Craft Beer is Not Dead」という連載記事を2回にわたってお届けした。それ以降、かなりの数のブルワリーが後に続き、彼らは米国のブルワーズアソシエーションが指定する「クラフトブルワリー」という枠組みから外れる結果となった。私たちのこのトピックに関する見解は一貫していて、重要なのは品質であり、最終的にクラフトブルワリーか否かを決めるのは消費者であると考えている。

クラフトと非クラフトの境界線がはっきりとしていない日本では、グースアイランドは「クラフト」という称号云々に関係なく、優れた製品で新しい消費者を引きつけるだろう。特に、同社が日本市場にもたらしていることについて考えると、彼らの行方は心配する必要はない。興味深いことに、グースアイランドは、3ヶ月間の定期配達という形で日本デビューを果たし、オンライン限定で販売されている(http://www.rakuten.co.jp/gooseisland/)。初回はGoose Honkers Aleの6本セットが6月に、続いて7月にGoose IPAの6本セットが注文者のもとへ配達された。そして最終月の8月はSofie(765mlボトル)が届けられる予定だ。Sofieは、オレンジピールで風味付けされ、ワイン樽で熟成されたファームハウスエールである。この定期配達の注文は、8月14日の23:59まで可能で、商品は、8月19日、9月16日、そして10月21日に配送されることとなる。

これらのビールに加え、Matilda(765mlボトル)というベルジャンストロングペールエールが9月、同社サワービールシリーズのSour Sisters(765mlボトル)が10月にリリースを控えている。日本では、ビールのオンライン販売は合法であり、ついでに言えば、ブルワリーが直接消費者に商品を送ることも合法である。グースアイランドがこのような方法でビールを販売すること自体は、変わったことではないということだ。しかし私たちの知る限り、大手ブルワリーが小売りを通さず、敢えてオンラインで新規市場に参入するというのは前例を見ない。 消費者への直接販売というモデルはおそらく機能するだろうし、グースアイランドはこれからも新境地を開いていくだろう。その答えが出るまで、彼らの歴史あるビールを飲みながら待つとしよう。

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