Pucker Up to the New Rogue Ales



ローグエールズは過去30年以上、米国におけるクラフトビールムーブメントの中でも圧倒的な存在感を放ってきた。1988年にオレゴン州で創業したローグは、えぞ麦酒の創設者であるフレッド・カウフマンの先駆的な努力によって、最初に日本に輸入された米国のクラフトブルワリーの一つとなった。日本国内の何千人もの人々にとっては、初めて触れる米国のクラフトビールはローグだった。

多くの伝説的なブルワリーがそうであるように、ローグもブルワリーのあり方について見直しを迫られた。同社の経営者交代、そしてローグに長い間関わってきた著名なブルワー、ジョン・メイヤーの引退もその要因となっただろう。さらに影響を及ぼしたのは、消費者の行動と嗜好の変化だ。従来、ローグのビールは多様な複雑性とホップの特徴を持つ、麦芽が利いたエールが主で、太平洋岸北西を代表するお手本のようなビールをつくってきた。しかし現代の消費者は常に目新しいものを求めている。つまり、ブルワリーも目新しいビールをつくり続けなければならないことを意味している。

最近日本市場に入ってきたローグの新商品3種類は、とても興味をそそるビールだ。えぞ麦酒が少なくとも過去10年に提供してきた重めのエールからは大きく様変わりしている。我々がこの3種類のエールを飲んで感じたことをお伝えしよう。


コンバットウォンバット
サワーIPAと聞いて、我々は懐疑的にならざるを得なかった。ローグの豊かな麦芽とホップが利いたIPAに慣れていたからかもしれない。米国でもサワーIPAは珍しい。苦味と酸味の組み合わせは合わないように思えるが、このビールは奇しくも美しく融合させている。まず酸味は口をすぼめるほどの強さはなく、上質な梅酒のようだ。そしてホップの苦味は存在感がありつつも強烈ではない(国際苦味単位、IBU49)。小麦とオート麦を加えたことで、ベルベットのようなミディアムボディが生まれ、苦味と酸味のバランスが取れている。そしてグレープフルーツとブラッドオレンジが果実味に溢れた余韻を残す。シトラとギャラクシーのホップがその果実味にアクセントを加えている。梅肉ソースがかかった焼き鳥やしそ巻きと一緒に合わせたら最高の味わいだろう。

マリオンベリーサワー
もう一つのサワーエール。なんとなくパターンが見えてきた。グラスに注ぐとブドウジュースのような色調で、ほどよく泡が立ち、かすかなベリーの香りが漂う。鮮やかな果実味が口の中に広がると、やや強めの酸味を感じる。麦芽やホップの苦味はほとんどない。このビールはオレゴン州で開発されたマリオンベリー(ブラックベリーに似ている)を前面に押し出すことを主な目的としているようだ。さらに飲み進めると、サワーエールのベースがよりはっきりと現れてくる。日本では長年フルーツビールがつくられていて、クラフトビール界の黎明期から常に一翼を担ってきた。このビールは、サワースタイルに慣れた消費者たちからは高い評価を得ることだろう。とてもユニークなビールでもあるのだ。焼き肉と合わせてみよう。酸味が肉の脂を切ってくれ、うま味が引き立つ。

ジャストアピンチ
そう、これもまたサワーエール。そしてこれもまた驚きが隠されている。ひとつまみ(ピンチ)の塩だ。塩分を含んでいるのでゴーゼを思わせるが、ゴーゼとは呼んでいない。泡立ちがよく、明るめの琥珀色をしたこのビールは、酸味と果実味の香りをまとっている。ミカンとアロエの香りも感じ取ることができる。ボディは軽めでなめらかだ。前述の二つのビールのように、酸味はほどよく、強すぎない。塩はブルワリー近くのヤキナ湾で採れたものを使用している。後味は驚くほど辛口だ。アルコール度数は4.5%で飲みやすく、次の一杯にも手が伸びやすい。このビールは我々のお気に入りだった。セッションビールとして飲むもよし、なにか食べ物とペアリングするもよし。使い勝手の良いビールである。


ローグの新商品がサワーに注力しているのは興味深いが、中には期待したほどではないという人もいるだろう。サワー人気を沸騰(再燃)させた木樽熟成プログラムでつくられたものではない。我々が知る限り、これらのビールは醸造プロセスの中でつくられたケトルサワーだ。酸味はほかの原料によってほどよく和らげられ、バランスが取れている。地場産の原料に焦点を当てているのも素晴らしい。これらはフードと合わせやすいビールだ。

サワーは日本では(まだ)人気が出ていない。それはただ単純にこのスタイルのビールが新しいからだと考えている。卸業者は買うのをためらっていて、消費者も飲むのをためらっているのかもしれない。しかしひとたび味わってみたら、評判は高まるはずだ。我々なら、ホームパーティやBBQに手土産として持っていく。もし読者の皆もそうしたなら、感想を聞かせてほしい。

(小売店様や飲食店様からのご注文はこちらまで: order@ezo-beer.com)