The Importance of Style

今年初頭にブルックリンブルワリーの醸造責任者ギャレット・オリバーに長時間インタビューをしたところ、話題は多岐にわたった。我々はこれまで、ほぼ月1回のペースで、そのインタビューを分割してお届けしてきた。まるで連載の物語のようかもしれない。ビアスタイルの混成やさまざまなIPAが存在するこの時代において、彼の発言の一つに非常に印象深いものがあった。

我々はこう質問した。「米国のクラフトビール業界はかなり成熟してきましたが、ここ数年を振り返って、ブルワーズアソシエーションが間違っていたり、彼らがもっと違う判断をすれば良かったのにと思った変化はありましたか」。

オリバーの回答は以下の通り。

我々がかつてはっきりしていた多くの系統をぼやけさせてしまったのは、確かだと思う。IPAが一番分かりやすい例だ。10年前だったら、クラフトビール初心者のためにIPAが何たるかを説明する方法は、発祥地、味わいの特徴、歴史など、決まりきっていた。それはビアスタイルというものの根本的な考えでもある。

しかし、バナナスムージーのような見た目をして、苦味は比較的弱めで、乳糖を使っていて、それでいてホップの上立ち香がするビールをつくって「ミルクシェイクIPA」と呼んだら、そこにはIPAとの何の類似も連想もない。その命名の方法は破綻していることになり、もともこもない。文化がないとも言える。比較的最近のクラフトブルワーの多くが理解していない点だと思う。

言葉には意味があり、それであるからこそ、言葉は人を動かす力を持つ。自分の言葉に意味がなかったら、力を持っていないことになる。ブルワーに創造的になるなと言っているわけでは決してない。イチゴミルクシェイクのような味がするビールをつくりたいなら、どんどんつくればいい。その出来が良かったら、僕も飲むよ。でも、それをIPAと呼ぶと、自分のプロ意識とプロ歴を粗末に扱うことになる。さらには自分の未来を台なしにしてしまうことにもなるんだ。

多くの人が目先のことにとらわれてしまっている。彼らは「だけど、ビール名にIPAを付けたら売れるんだ」と言うだろう。しかし、銘柄名に付けられたビアスタイル名に意味が全くなかったらどうだろう。例えば、濁っていたり黒かったりバナナのような香りがしたりするビールをピルスナーと呼んだら、ピルスナーという言葉には何も意味がなく、ほかの人に対して説明できないことになる。

これはワイン業界でも多く起きている問題でもある。多くの人は専門用語に慣れていないので、専門用語が消費者に壁をつくってしまう。我々はこうした壁なんか欲していない。ビアスタイルでもって意味を成り立たせた。ブルワーたちにはその名前が持つ意味をそう簡単に放棄しないでほしい。

新しいビアスタイルを創造したら、全く新しい名前を付けることだってできる。例えば、ホッペンヴァイツェン(通常よりもホップをきかせたヴァイツェン)のように。このスタイルをヴァイツェンIPAと呼んでいたら、誰もが特徴を理解し、より早く売れただろう。だけど自分はそうしたくなかった。