Yo-Ho Brewing: dispensing with the preliminaries



人気のよなよなエールを醸造するヤッホー・ブルーイングは、日本で最大かつ街で最もよく見かけるクラフトビール醸造所の一つだ。日本でリアルエールの道を切り開いたその象徴的なバーのハンドポンプから、スーパーやコンビニで買い求めることのできる、目を引くデザインの缶ビールに至るまで、この会社を知らない日本のクラフトビール消費者はほとんどいない。

しかし、有名であることと質が良いことは別である。ヤッホーはありがたいことに後者においても成功している。近年、ヤッホーは多くの愛飲家のためにラインナップを多様化し始めた。よなよなビアキッチンもオープンし、ヤッホーを取り巻く興奮は高まっている。新たに森田を醸造ユニットのディレクターに迎えたヤッホーに関し、クオリティが変わるかもしれないという不安はどうやら忘れ去られているようだ。

新しい醸造長というのはおそらくどのブルワリーにとっても心配事だろう。しかし森田は今年、巧みに統治し、ヤッホーブルーイングを野心的な新たな方向へ導こうと熱心なようだ。彼には自信、才能、そして少なからぬ良いアイディアがある。彼とマーケティング部の稲垣は最近、いくつかのビールに関するそれらのアイディアを喜んでシェアしてくれた。

最近、御社の新しいビールを多く目にします。何か理由がありますか?

「前略」シリーズの目的は、自身にチャレンジし定番のラインナップに新しいバリエーションを開発し、次々そのシリーズをリリースしていくことです。しかし基本的にはいたずらにラインナップを増やさない。「よなよなエール」が我々の主力ビールということに変わりはありません。

クラフトビール造りにたずさわったきっかけは?

僕が最初に出会ったビールは、2002年、学生時代に茨城県のブリティッシュパブで飲んだバスペールエールでした。これほど豊かにキャラメルフレーバーが香るビールが存在するのかと驚き、エールを飲み始めるようになりました。ちょうど同時期に常陸野ネストビールがワールド・ビアカップで金メダルを獲得した頃(2004年)に飲んでいたのはラッキーだったかもしれません。(2000年も受賞)。世界一になったこと、さらに茨城県で醸造しているとも聞いて、クラフトビールに興味を持ち始めました。当初はネストビールをいっぱい飲みました!今でも常陸野ネストのホワイトエールの味は忘れられません。よく覚えています。

それがブルワーになりたいと思ったきっかけですか?

はい、大学を卒業する前から、ずっとエールの魅力を伝える人になりたいと思っていました。在学中から主に書籍で醸造の勉強を始めました、当時はそれしかなかったから。当時、ホームブルーイングは非合法でしたし、僕は真面目だったので密造なんかしませんでした。僕は原料の観点から醸造にアプローチしました。ゆくゆくはビール会社に入りたかったので、大麦についての研究をし、その中でも特に、なぜ日本の大麦の質は悪いのかについて勉強しました。日本製の質が低いために、ほとんどのビール会社が輸入物の大麦を使っていたんです。大学院でも2年間にわたり引き続き同様の研究をしていました。

その原因は?

梅雨です。日本では収穫時期に長い雨が降ります。そのため、麦芽のタンパク質が増え過ぎてビール醸造には向かない大麦になってしまうことが多いんです。

長年研究された結果、輸入モルトの品質がよく理解でき、見分けられるようになったということですよね?

はい。僕はクオリティに関しては非常にこだわっています。そのクオリティを自分が使用する原料全てに求めているわけですが。

話を少し戻します。森田さんが実際に醸造を学び始めたのはいつですか?

2008年にヤッホーに入社してからです。当時のブルーマスター、石井敏之さんから学びました。石井さんの他にもう一人、キリンビールのOBで60代のベテランじいちゃんも僕のビールの師匠です。このじいちゃんの知識と経験は豊富でした。彼は毎日ビールをチェックして、色んなことをたくさん教えてくれました。

彼らから教わったことで、今でも心に残っていることは?

あぁ、石井さんからは心を込めて、信念を曲げずにビールを造れ、品質が大切だということを叩き込まれました。じいちゃん師匠からは毎日ビールの顔を見にいくことを教わりました。それは本当に大切なことなんです、実際。

昨年、2012年12月にディレクターに就任しましたね。大きなプレッシャーはありますか?

日々の醸造業務ではほとんど感じませんが、マーケット全体に関しては少しありますね。どちらかというと、圧倒的に美味しいエールを造り続けなければいけないという責任感はあります。

新しいビールを造るとき、ディレクターとしてのあなたの意見はどの程度採用されますか?大規模の醸造所では、ブルワーではなくオーナーがビールに関して決定を下すことが多いですが。

ヤッホーではバランスが良くとれています。我々は一つのチームで動いています。マーケティング側からアイデアを持ち込んでくることもあれば、我々醸造側がこんなビールを造りたい、と伝えることもあります。やりたいことを我慢させられることもないし、彼らのためにも喜んで造る。マーケティング側と醸造側のアイデア交換もあります。

マーケティングチームからはどんなアイデアが出たのでしょうか。

これまでビール造りで使われたことのない日本的な素材を使ってビールを造ってほしいと言われました。まず、菊の花をどこかで使って欲しい、と。(笑)それは断念しましたが、そのアイデアにインスピレーションを受けて、例えば鰹節といった原料を使うことを考えました。

醸造チームが「売れる」と考えてマーケティング側に持ち込んだアイデアは何でしょうか。

「前略」シリーズが代表的な例ですね。ブルワーがいくつかアイデアを思いついて、試験的に造ってみた。5人が思い思いに造った5種類が全部美味しいということで、全てのアイデアが採用されました。それらを順次リリースしていこうと計画しています。第一弾は日本酒にインスパイアされて酒かすと米麹を使ったビールです。

ヤッホービールを象徴するものとは何でしょうか。

モルトのフレーバーが活きていることだと思います。そこにヤッホーっぽさを感じることができる。ホッピーに造るんですがやっぱりモルト感も戻ってくる。アンバーエールが良い例ですね。

今後造ってみたい、まだ試していないのはどんなビールですか?

いま言えないものもいくつかありますが、日本スタイルのビールを造り続けていきたいことは確かです。例えば「しそ」を使ったものとか。日本のホップによりこだわったものも造ってみたいですね。あとはサワーエール。とはいえ現時点では、今造っているビールの改良に集中するつもりです。

よなよなビアキッチンが赤坂見附駅前に新しくオープンしましたが、それに合わせて特別なハウスビールを造る予定はありますか?

ありますが、まだ計画中です。すでにスペシャルビール用に4本のタップを用意してもらってあります。

自社タップルームの設立はヤッホーにとって大きな目標達成だったと思いますが、その他にも近い将来の大規模な目標はありますか?

色々考えてはいますが、基本的には国内のマーケットを拡大したいです。今までラガーしか飲んでいなかった人達にアプローチする。それが最優先の目標です。その目標を達成すると、ヤッホーのビールがより多くのコンビニでも取り扱ってもらえ、売上を伸ばすこともつながります。そこはヤッホーにとってまだ挑戦です。

他のブルワリーのビールを飲んで、「わぁ、こんなの造りたい」と思うことはありますか?

あります、いつもですよ。最近ではたとえば、志賀高原ビールのHouse IPA、スワンレイクビールのインペリアルスタウト、COEDOのHoppy Wind Session Aleです。大山Gビールと御殿場ビールのヴァイツェンもですね。海外のブルワリーでは、まずFirestone Walker、素晴らしいです。彼らのビアフェスには毎年行って醸造長のマット・ブリニルドソンさんとも話します。

彼からはどのような価値あるアドバイスを受けましたか?

ビールを造るときは細心の注意を払わなければいけないということですね。酵母を例に挙げると、完璧な酵母を完璧な量だけ使用しなければいけない。他にも樽熟成やドライホッピングの技術も教わりました。彼は特殊なドライホッピングの技術で有名なんです。ホッピングの技術については、Bear Republicからもいくつか良いテクニックを学びました。彼らのレーサー5はすごく良い出来だと思います。あとRussian RiverのVinnieも。

それらのブルワリーは、アメリカ全土とは言わずとも、アメリカ西海岸においては最も素晴らしい醸造所3つです。もし、ヤッホーが彼らとビアフェスを開催することになったら、御社のビールは彼らと互角に戦えると思いますか?

そうであって欲しいと思いますし、全力で頑張ります。そのために僕がここにいて、ビールを造っているんですから。ただ単に国内マーケットを拡大したいわけじゃない。世界クラスのビールを造りたいんです。

ヤッホーならできると思います。グッド・ラック!

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