ビールは、皆さんご存知の様に、麦から得られた糖分を酵母が食べて、発酵して出来るお酒です。酵母の違いでエールとラガー等に分類されており、エールでは約20℃〜22℃で3〜4日、ラガーは、約10℃〜15℃で約10日間ほど発酵させます。酵母が投入された麦汁は、発酵が始まり麦汁の比重が徐々に下がり始めます。1週間〜10日ほど経つと比重の低下が安定し、酵母の活動が、休止状態になります。ここまでが、いわゆる一次発酵です。今回は、この次の工程『二次発酵』についてお話します。
自家醸造でもプロの設備でも、一次発酵が終わった若ビールは、次のタンクに移送されます。この目的は、発酵が終わったビールは、酵母臭がつく前に酵母を取り除きます。これを『澱引き』といいます。休止した酵母は、酸素に触れたり、高温にさらされたりすると、自己消化を起こし細胞膜が壊れ、やがて死んでしまいます。この自己消化は、硫黄系やゴムの様な臭いを発生させます。ワインでは、この自己消化時に発生する香りをポジテブに捉えられる場合があるようですが、ビールでは、あまり好まれません。このような理由から、主発酵が終了したビールは、まず別の容器に移す事が、理想です。
酵母から切り離された若ビールには、まだ発酵可能な酵母が微量に残っています。ナチュラルカーボネーション(自然発泡)による、優しい炭酸ガスをビールに溶け込ませたい場合は、この二次発酵容器に移された若ビールに、新たに何らかの糖分を加えて、発酵を誘発させます。イギリスの伝統的な『リアルエール』が正に、この製法ですね。リアルエールの場合、二次発酵容器は『CASK』という事になります。
日本でも、この造り方をしている醸造所があります。彼らのビールもまた、樽や瓶のなかで二次発酵が行われ、優しく、生き生きとしたビールに仕上げていると言っています。
二次発酵は、ビールに優しい炭酸ガスを溶け込ませると共に、若ビールに見られる“未成熟香”をレストする時間にもなっています。酵母は、発酵時に二酸化炭素・アルコール・エステルを生成しますが、それとともに未成熟な香りが醸し出されます。この未成熟香は、熟成が進むと、酵母が回収し、無味無臭物質に換えてくれます
二日酔いの原因になっているアセトアルデヒドもそのひとつです。二日酔いは、アルコールが分解されて、アセトアルデヒドとなり、それが体内に残っている状態です。アセトアルデヒドは、とても毒性が強いため、吐き気や頭痛を起こします。ここでゆっくりと熟成させて、未成熟香をレストする事で、美味しいビールが出来上がります。ビールにフレッシュなホップの香りを付ける『ドライホッピング』も、この二次発酵タンクで行われる事がほとんどです。
二次発酵とは、ビールの好ましくないフレーバーをレストし、やさしい炭酸ガスを溶け込ませるなど、ビールを更に美味しくする為のコンディションを整える、最終調整セクションとなっています。
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