Lambic



by Mark Meli

ランビックは、ベルギーのブリュッセル周辺のパヨッテンラントと呼ばれる地域でつくられるビールの種類である。この地域に生息している野生酵母が、木樽のなかで自然に発酵して出来上がる。日本を含めた世界中の多くの醸造所が「ランビック」と名づけたビールを生産している。しかし、本物のシャンパンがフランス北部のシャンパーニュ地方でつくられなければならないのと同様に、本物のランビックはパヨッテンラントでつくられたもののみを指す。

ランビックはたいてい、30%の麦芽にしていない小麦と、70%の大麦麦芽でつくられる。さらに、ホップは防腐剤として使われるものの、一般的なホップアロマは、この自然発酵由来の酸っぱくて「風変わり」な特徴と対立すると考えられている。そのため、古くて乾ききって香りに乏しいホップだけが使われている。

麦汁は一度煮沸した後、「クールシップ」と呼ばれる浅くて広いプールに移される。そこで野生酵母にさらされるのだ。野生酵母のうち最も重要なのはブレタノマイセス・ブリュセレンシスである。麦汁はその後、オーク製の樽に移され、そこでほかの様々な酵母やバクテリアも発酵に加わる。

ベルギーでは、木樽から直接注がれるブレンドしていないランビックを飲むことができる。若いものも古いものもある。しかしながら、ほとんどの人々は、2通りの方法のいずれかで飲む。一つはグーズであり、違う年月(たいていは1年熟成と2~4年熟成)のランビックをブレンドするものだ。もう一つはクリーク(さくらんぼ)などのフルーツランビックで、こちらは新鮮なフルーツを熟成樽に加えてつくられる。

グーズはさっぱりとしていて、甘みはごくわずかに感じられる程度。酸味は、わずかでレモンのような感じのものから、強烈に酸っぱいものまで幅があるが、野生酵母からもたらされる「馬の背にかける布」のような、風変わりな特徴は常にある。同様に、皮革や干し草、古い書籍、ヨーグルトのような味わいが感じられることもある。フルーツランビックも類似の特徴を持つが、フルーツの豊かな香りと味わいをも併せ持つ。しかしそうであっても、一般的に甘くはない。

ランビックを選ぶときに重要なのは、アウデ(古い)なグーズかクリークを見つけることだ。「アウデ」は、ランビックではないビールを一切混ぜない「ランビック100%」を意味し、たとえフルーツが使われているとしても、シロップや甘味料は不使用で、果実を丸ごと使うものに限る。日本で最も簡単に見つけられるブランドのランビックは、「アウデ」ではない。実際、今日生産されているランビックのほとんどは、あるべき特徴に乏しく、甘くてフルーティーな飲み物にされてしまっている。そんな風にする必要はないのに。すべての本物の醸造所でつくられたランビックは、一生懸命探せば日本でも見つけることができる。がんばって「アウデ」を見つけよう。そして初めて飲むときは、チーズと素朴なパンと合わせて楽しむことをお勧めする。このマリアージュはパーフェクトだし、初めて飲む人が感じるショックをやわらげてくれるだろう。

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


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