世界を見渡しても、ドイツほどビールとの密接な関係を連想させる国はない。日本でもそのイメージはすっかり浸透している。
1994年にビール製造に関する規制が緩和されて小規模なブルワリーが興り始めた頃、ほとんどのブルワリーがドイツスタイルを踏襲していた。明治時代にドイツ人ブルワーが招聘されて日本のブルワリーで働いたり技術を伝授したのと同じことが、また起こったのである。その後ほとんどが帰国してしまったが、エチゴビールで最初の頃ブルワーを務めていたマルクス・ルツィンスキは日本に残り、現在は醸造設備を取り扱う会社を経営して成功している。醸造設備を輸入し、ラフ・インターナショナルの堀輝也(今年春号で特集)とタッグを組んで、ブルワリーへの設置も行なっている。また、ヨハネス・ブラウンは何百年も昔から伝わるレシピを元に、北海道の小樽ビールで本格的なドイツスタイルのビールを造り続けており、なんと全国チェーンのハンバーグレストラン「びっくりドンキー」でも彼のビールを飲むことが出来る(2ページ参照)。あまり知られていないが、バイエルン出身のブラウマイスター、シュテファン・ラガーは富士山にほど近いブルワリー「バイエルンマイスタービール」のオーナーで、ドイツスタイルのオリジナルラガーを造っている。
ドイツスタイルの影響は全国に流通している様々な国産クラフトビールのスタイルの中に見て取れる。“Craft Beer in Japan: the essential guide”(39ページ参照)の著者であるマーク・メリによれば、日本のクラフトブルワリーの約半数が、ピルスナーかヴァイツェンを手掛けているという。それら以外のブルワリーでも、創業当時に入手したレシピに手を加えながら、ピルスナーやヴァイツェン以外のドイツスタイルのビールを造っているところは多い。
とはいえ、誰もが認めるクオリティーのドイツビールを造る技術を持ったクラフトブルワリーは日本ではまだ数えるほど。富士桜高原麦酒(19ページ参照)は2012年度のWorld Beer Cupラオホ部門で金賞を受賞、田沢湖ビール(41ページ参照)のラオホも今年のWorld Beer AwardでWorld’s Best Flavoured Beer賞を受賞した。ドイツスタイルのブルワリーの中で、富士桜高原麦酒は世界でもトップクラスに入るといわれる。
今号では日本におけるドイツスタイルのビールをもう一度見直すという趣旨で、シャトーカミヤ、みちのく福島路ビール、カリスマ的存在感を放つインポーターなどを特集した。また、本場ドイツの現状にも注目し、関連記事を掲載した。BGMはオクトーバーフェストの生演奏だ。
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