Tadg's のキャッチコピーは、「京都で地ビールといえばタイグ」というものだが、公正に見てもそうだと思う。国内のみならず海外からも選りすぐられた最高品質のクラフトビアの品揃えが素晴らしいので、ここをクラフトビアの中心地と考えるビール好きたちが他の都市からクラフトビア巡りに集まって来る。
店名は、フレンドリーなオーナーの名前からつけられた。Tadg(タイグ)は、質の良いクラフトビアの製造に費やされる職人技を高く評価している。なぜなら彼自身も料理の職人のひとりだからだ。Tadg's でのひとときは、ふたつのメニューブックが揃わないと完璧とは言えない。細心の注意をもって提供される、アルコール・メニューとフード・メニューだ。しかしながらこの店の魅力は、アルコールとフードだけではない。Tadg's では不定期にライブ・イベントを行っており、よくあるアマチュアバンドの演奏よりも数段いいから、あなたは始めから終わりまで、すべてのセットを腰を据えて聞いてしまうだろう(さらにビールも進む)。Tadg's のお客はフレンドリーで、しばしば啓発的だ。それが京都という洗練された文化の都に負うところが多いことは否めない。しかしながら、それだけの理由ではないはずだ。学生や教授、アーティスト、カルチャー関係の人たちが、良い場の空気に、そして美味しいクラフトビアに引き寄せられ集まってきている。
彼は、自身は料理人でありビールのソムリエではないと主張する。彼の料理における経験と創造性は、出身地であるアイルランドの伝統料理の再評価に表れている。彼の作るポットパイは芸術だ。パイ皮はパリパリ、サクサクしていて、中はこってりコクがありクリーミー。この本格的な味がクラフトビアにぴったり合う。パブの伝統的な料理ももちろん味わうことができ、パスタやピザにも、彼の心配りと熟練した腕前が示されている。平凡とか即席ものといった料理は全くない。きちんとした料理を期待して出かけてみて欲しい。
クラフトビアの多くは伊勢角屋、京都の周山街道ビールといった周辺地域からの選りすぐりを揃えている。アメリカ西海岸からの輸入ものもある。価格はリーズナブルでありながら、最高のコンディションで提供している。2010年にクラフトビアへ移行したばかりであり、またセレクションも週替わりと充実しているので、彼の若いスタッフにビールオタク知識を期待するのはまだ難しいかもしれないが、彼らはベストを尽くしている。でも心配はいらない。冒険を好まないお客には、1、2種類の主流ビールを用意してくれている。Tadg's で美味しくないビールを飲まされることなどないのだ。