Garrett Oliver on Pizza and Beer



日本の豊かな食文化が世界で注目されつつある昨今、同様に日本国内でも世界各地の定番フードが親しまれるようになってきている。その代表格がピザだろう。今から数年前になるが、日本における新たなピザ&クラフトビールシーンについて、小誌で3回シリーズを組んだことがある。カリフォルニアピザがメインのピザカヤ、シカゴスタイルのデビルクラフト、ニューヘイブンスタイルのべアード中目黒タップルームの3店だ。アメリカの他の地域及び当然イタリアにもそれぞれの特徴があるが、アメリカにおけるピザの中心地といえばニューヨークだ。

19~20世紀にかけて、イタリアから多くの移民がニューヨーク経由でアメリカにやってきたことで、国内各地に「リトルイタリー」が誕生する。ニューヨークのみならず、ボストンやサンフランシスコでも豊かなイタリアの伝統が受け継がれているが、アメリカで最初にピッツェリアがオープンしたのは1905年のこと、場所はニューヨークのリトルイタリーだった。それからほどなくして「ニューヨークスライス」として知られるようになった食べ物が、今日のように誰もが知るピザへと発展していったのである。

今年の初め頃に行われたブルックリン・ブルワリーの醸造長ギャレット・オリバーへのインタビューでは幅広い話題で盛り上がり、ニューヨークのピザ文化についても話が及んだ。というのも、同氏は世界的に著名なブルワーである一方、熟達したシェフ・食のプロとしても造詣が深く、とりわけ地元ニューヨークの食の伝統や歴史に通じているからだ。

オリバーは次のように語っている。「ニューヨークスライスはアメリカ文化の象徴の一つと見なしている人が多いと思います。イタリアにはないスタイルのピザですからね。ニューヨークスライスは、言ってみればジェームスボンドの映画や西部劇みたいなものでしょうか。つまり、ベースとなる筋書きがあって登場人物が2~3人いる。で、そこから出来上がるものがほんの少し違う、というだけなんです。問題はどんなさじ加減のスタイルでもってうまく仕上げられるか、ということ。ピザの場合もクラストだったり、塩分と糖分の割合ートマトには糖分が多く含まれていますからーといったベースがあります。でも、そこからどんなスタイルのニューヨークスライスを出せるかーそこが腕の見せ所なんです」。

ピザとビールは相性が良いので、日本でもこの組み合わせは今後も受け入れられるだろう。自然な流れでオリバー氏のお薦めを聞いてみたくなった。答えはわかりきっていたはずだが。

「ブルックリンラガーはピザとの相性がすごくいいですね。ちょうどピザソースの糖分に負けないだけの残留糖分がありますから。キャラメルモルトフレーバーなら、クラストの焦げたところがちょうど良いおつまみになります。両者を実にうまく引き合わせてくれるフレーバーのタイプは他にもいくつかありますね。ソラチエースもピザにとても良く合うと思いますよ。ピザって、ワインでさえ組み合わせるのが時に難しいでしょう?その理由は、ピザには糖分と同じように酸味もたくさん含まれているからです。ですがソラチエースの場合、酵母と独特のホップの特徴が、ピザの酸味と糖分の両方にバランスよく馴染んで完璧にピザにマッチしたビールになるんです」。

ソラチエースは使われているホップにちなんで名づけられたセゾンビールだ。このホップの興味深い歴史については『ジャパン・ビア・タイムズ』最新号(38号)で詳しく紹介しているので、ぜひ読んでいただきたい。ピザとビールでチビチビやりながら…でも良いかもしれない。