Malt Kith and Kin



by Brian Kowalczyk

クラフトビールとウイスキーは、いずれも麦芽を主原料とする。どちらかのファンならば、両方好きな人も多いだろう。大麦などの穀類は共に育ち、同じモルトスター(麦芽製造業者)に引き取られた後、各々別の道を進んで行く。しかし近年、この生き別れ状態であった兄弟達を再び引き合わせることに人気が集まっている。

近頃ベアードビールの高田馬場タップルームでまさにそのようなイベントが行われ、筆者も参加してきた。正直なところ、最初は懐疑的であった。ビールとウイスキーをペアリングすることで、次の日はひどい二日酔いになると思ったからだ。大学時代、強いお酒とビールをちゃんぽんした翌日は、昼頃にゾンビのような状態で起きていたことを思い出し、一抹の不安を感じずにはいられなかった。

さて、当然のことながら、品質の高いドリンクを用いることにより事態は大きく好転する。このイベントは、その辺の安いウイスキーと大量生産の黄色い炭酸飲料をペアリングするというものではなかった。ベアードの洗練されたクラフトビールと、ウイスキーの中でも特に飲み口が滑らかな3回蒸留のジェムソンが組み合わされたのである。そして、大学時代と比べ、飲む量とスピードを少しはコントロールできるような大人に成長したと自分では思っている。

ショットのチェイサーとしてビールを飲むのは目新しいことではないが、敢えてビールとウイスキーをペアリングするというコンセプトは筆者にとっては耳慣れないことであった。知っている人もいるかもしれないが、アイルランド人は長年ウイスキーとビールを一緒に飲んできた。それも1600年代からのようである。この習慣は、ウイスキーを飲む人達がのどの渇きを癒すために、アルコール度数の低いビールを少量だけウイスキーの横に置いて飲み始めたのがきっかけだ。「トールアンドショート」「ハーフアンドハーフ」「ビアバック」や恐らく一番浸透している呼び方であろう「ビアチェイサー」を注文することは、時が経つにつれごく普通のこととなった。

二つのドリンクを横に並べて飲むならば、それらのレベルを揃えたくなるのはもっともだ。良質なカベルネソーヴィニヨンのワインと安いチーズ菓子をペアリングしたくはないだろう。今回、参加者に楽しんでもらえるよう、ジェムソンとベアードのチームは協力して、最も合う香味プロファイルのドリンクを厳選して提供した。その結果はうれしい驚きどころか、それ以上の喜びを味わえるものであった。

筆者が毎年楽しみにしているベアードの季節限定ビールの一つ、ダークスカイインペリアルスタウトがジェムソンアイリッシュウイスキーと共に提供された。ウイスキーは軽めでピート香は無く、バニラとナッツの味わいを持ち、少しばかりスパイシーな後味を感じさせる。そしてもちろん、シルクのような滑らかな口当たりだ。日本では最初にビールを飲んでから他のお酒へと進むのが一般的であるが、今回は最初にウイスキーを少し飲み、ジェムソンの後味の余韻がまだ残っている状態ですぐビールを飲むことにした。スタウトの焙煎された麦芽の味とチョコレートの風味は、ウイスキーが持つ味わいを絶妙に引き立てる。最初にビールを飲んでからウイスキーを口にしても同じような効果は得られなかったため、毎度ウイスキーを先に飲むことに決めた。もしかしたら「ビールの前にリカーを飲め」という古いことわざには、何かしら科学的根拠があるのかもしれない。

二番目のペアリングは、麦芽が際立つベアードの帝国IPAとジェムソンブラック・バレルだ。ブラック・バレルを飲むのは初めてであったが、飲んですぐにまた飲みたくなるほど美味しかった。(正直に言うと、ウイスキーとビールの記事を書く作業とのペアリングにも最適だ。) アルコール度数40%ながら、驚くほど(危険なほど?)飲みやすい。ブラック・バレルはシェリー樽と、二度のチャーリング(火入れ)で焦がしたバーボン樽で熟成される。バニラとナッツの味わいはジェムソンアイリッシュウイスキーよりも深みがあり、シェリー樽はフルーツの香りを添える。その豊かな後味は、帝国IPAをひとすすりし、その麦芽の味わいが口内を支配するまで余韻が続いた。ジェムソンによると、ホップの利いたビールが持つフローラルな特性は、ブラック・バレルの甘くフルーティーな香りととても合うのだそうだ。

個人的に、ウイスキー単体ではジェムソンアイリッシュウイスキーよりもブラック・バレルの味が好みであったが、ペアリングにおいてはダークスカイとの組み合わせの方に軍配が上がった。ウイスキーを少し口にすることでビールの味わいが高まったように感じ、ほのかなバニラの香りがダークビールにとても合っていた。但しこれはあくまで個人的な好みで、両方のペアリングとも非常に素晴らしいものであった。何が美味しく感じるかは十人十色だが、このような「研究」をすることも大事だと思う。飲み進めるうち、ものすごくホップが利いているウェストコーストIPAには何が合うか考え始めた。チリ入りのバニラポーターではどうだろう? 実験のために早速「ラバーラトリー」(ラボラトリー × バー)に行かなくてはいけないようだ。

このペアリングの旅に出かけようとしている人がいるならば、駆け足で行くというより、ぶらぶら歩くように進むことをお勧めする。上質なウイスキーをクラフトビールの中に落としてグビグビ飲むのは良品の完全な無駄であるし、恐らく次の日も無駄になるだろう。また、ペアリングのガイドラインは役立つけれど、結局は飲む側の好み次第ということも覚えていてほしい。友達を集め、アイリッシュ音楽をかけ、くつろぎながら心ゆくまで味わって、この旅を楽しもうではないか。

(現在デビルクラフトでもウイスキーとビールのペアリングを提供している。店舗ではビールのラインナップが比較的早く入れ替わるため、スタッフは一般的なガイドラインに沿ってビールを選んでいる:濃色系のビールにはジェムソンアイリッシュウイスキー、IPAにはブラック・バレル)