Beer Roundup (Winter 2016)

日が短くなった。外気も冷たい。外から聞こえてくるのはちらちらと降る雪の音だけ。また冬がやって来た。火のそばでくつろぎ、バーレイワインで酔っぱらいながら雪景色やキツネの俳句をつくる時間だ。バーレイワインでべろべろになる時間だ。しまった、冬休みの前に何本か買うのを忘れてしまった? まずは年末の仕事を終わらせるのが先だ……秋の出来事を皆様にお届けするとしよう。


Barley wine aging at Swan Lake Brewery Barley wine aging at Swan Lake Brewery

一年の主要なビアフェスティバルの最後の二つである、けやき広場ビール祭りとビアフェス横浜が無事に終わった。しかし、なにか起きてくれてもよかったかもしれない。参加者が服を脱ぎ捨て、『We are the World』を手を取り合って歌ってもよかった。もう少しイベントが盛り上がるなにか。事実、多くの人にとってビアフェスティバルは恒例行事となった。早春から晩秋にかけて、数年前には、ビールイベントがまだ珍しく、特別だった。当時、どんな感じであったか忘れている人は多い。多様性に富んだエンターテイメントや、なにか新しいものが少しくらいあってくれてもよいと思う。いかがだろう? ゲームなどはどうだろうか。海外のタップルームにはボードゲームやカードゲームがあることが多い。豆知識コンテストなんてどうだろう? 仮装コンテストもいいかもしれない。ここ数年、音楽パフォーマンス(よいものだと思う)を行なうイベントが増えているが、このトレンドはなかなかよい。しかし、もっと多くのゲームがあってほしい。グラディエーターがトランプとサイコロをもってきてくれるとありがたい。

Yokohama BeerFes. There’s enough space here for Twister. Yokohama BeerFes. There’s enough space here for Twister.

Games at Fieldwork Brewing Company (Berkeley, CA) Games at Fieldwork Brewing Company (Berkeley, CA)

あなたの頭を混乱させること

2015年、政府がビールの酒税を引き下げるだろうという憶測がメディアで飛び交っていた。来年度はまだ実現しそうにないが(少なくとも本稿を書いている今現在においては)、政府の発言が信用できるものなら、再来年度以降には実現するかもしれない。いずれにせよ、私たちはいつも懐疑的だった。労働力の減少によって税収が下がり、どのようにして社会保障をまかない続けるかについて不安が渦巻く状況において、比較的安定した財源を、政府がそう簡単に諦めるとは思えない。あなたもビールを飲むのを簡単にやめたりはしないはず、そうだろう? 増加傾向にある日本を訪れる観光客も、ビールを飲まなくなることは絶対にない。お手頃価格のビールは社会保障制度の中心であるべきなのだから、日本政府がそのことに早く気づくことを願ってやまない。

もちろん、私たちの誰もが値引きを望んでいるが、日本の状況はそんなに悪くないかもしれない。諸外国に比べて、日本の小売店で販売されているクラフトビールはさほど高くない。例えば、アメリカでは、1パイントあたり大抵7ドル(またはそれ以上)かかる。チップや為替レートを考えると、その価格は日本の多くのバーのパイント価格に匹敵する。ヨーロッパの一部に住む友達は、さらに高いと言っていた。

観光業はインバウンド・アウトバウンドともに進む

11月、コロラド州デンバー市長のマイケル・ハンコック(およびその側近)が、デンバービアカンパニーのメンバーとともに、日本を訪れた。そこで、東京に最近できたクラフトビールバー、ウィズが彼らを歓迎する会を主催した。デンバーは、旅の特別な目的地ーーそう、ビール目的の観光地として、自らを日本でプロモーションしたいと考えている。2014年、私たちはデンバーで行われたクラフトブルワーズ会議に参加したが、デンバーの大都市圏においても数十のブルワリーとブルーパブが存在し、クラフトビールを飲むには素晴らしい場所だと断言できる。また、エイヴリーブルーイングカンパニー、ニューベルジャンブルーイングカンパニー、レフトハンドブルーイングカンパニー、そしてスカブルーイングなど、日本に輸入されている多くのブルワリーがコロラド州にあるが、デンバーにおけるクラフトビール発祥の地はご存知だろうか。前デンバー市長であるジョン・ヒッケンルーパーが共同で設立した、ワイクープブルーイングカンパニー(コロラド州初のブルーパブ)だ。現在、コロラド州知事を務める彼は、アメリカのクラフトビールの最も支援的な政治家の一人だ。あなたがビール好きなら、デンバーとコロラド州では、きっとよい時間を過ごすことができるだろう。

日本は、ごく当たり前のことながら、自身を、日本酒を楽しむ目的地として喧伝している。しかし、そんなことは周知の事実である。日本が寿司の目的地であるとプロモーションするようなものだ。私たちは、もっと多くの街や地域が、デンバー(または、サンディエゴ、ミュンヘン、プラハなど)のように宣伝するべきだと思う。実は、数年前にそれをやった都市がある。横浜だ。同市は、資金を投じて、オンラインや紙媒体の雑誌で、ビール目的の観光のプロモーションを行った。興味深いことに、日本のクラフトビールは観光業のおかげで始まったのだ。1994年の規制緩和により、地方はビールをつくり、人々を呼び込んだ。残念なことに、品質管理を怠ったブルワリーがあまりにも多かったため、1990年代後半にはクラフトビール産業が崩壊してしまった。今日、私たちは、ビール観光にはより肯定的である。また、大阪や横浜、新潟、仙台において、いわゆるビールマップが人気を集めていることは、ビール観光の分野にチャンスがあるということを証明している。

Mayor Hancock with Patrick Crawford and Charlie Berger of Denver Beer Co. at the Wiz Mayor Hancock with Patrick Crawford and Charlie Berger of Denver Beer Co. at the Wiz

ビールは一大ビジネスである

ビール界の大幅な改革は今後も続くだろう。前号で、私たちはある重大な合併と買収について伝えた。今号では、サンディエゴのバラストポイントが、複合企業であるコンステレーション・ブランズに、1,000億円で買収されたことを取り上げたい。バラストポイントの日常業務はほとんど変わらないだろう。雇用を続け(おそらく、今となってはさらに多く)、非常に優れたビールをつくり続けるだろう。本誌2015年春号では、ビール業界で最も尊敬されているブルワーの一人、スペシャルティーブルワーであるコルビー・チャンドラーのインタビューを交えながら、当ブルワリーを特集した。2010年のワールドビアカップでは、小規模ブルワリー部門でチャンピオンを獲得した。バラストポイントはクラフトブルワリーを定義づけるブルワリーであったのに、今では巨大複合企業の一部となってしまった。依然、クラフトビールと言えるだろうか。それは重要なことだろうか。これは私たちが問い続けている疑問である。そして、バラストポイントのタンバックラー(アルコール度数10%のインペリアルレッドIPA)を数本開けた後には、なにを疑問に思っていたかも忘れている……

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