Pumpkin (and Kabocha) Beer

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米国のクラフトビールの世界では、秋はオクトーバーフェストだけでなく、パンプキンビールの季節である。そして今やこの傾向は日本にもかなり及んでおり、サントリーがこの10月にクラフトセレクトシリーズとして「ザ・パンプキン」、発泡酒扱いで「パンプキンスペシャル」という二つの銘柄を発売することからも見て取れる。米国ではほとんどのビール愛好家がパンプキンビールに一家言持っている。パンプキンビールを愛そうが、嫌おうが、これはクラフトビールの世界で人気のある季節のビールの一つであり、長い歴史も持っている。

パンプキンはアメリカ大陸原産のカボチャの一種である。日本のカボチャは16世紀にポルトガル船でカンボジアからもたらされ、それが名前の由来になった。日本ではカボチャをビールづくりに用いるのに約450年かかったかたちになるが、アメリカ大陸よりは短い。ヨーロッパからアメリカ大陸に来た移民は当然、出身国のビールを愛していたが、醸造に使える品質の大麦を新天地で得るのは、多くの場合難しかった。そうして、麦芽と一緒にしたり、単独で用いたりして、パンプキンでビールをつくるようになった。米国初代大統領のジョージ・ワシントンもパンプキンエールのレシピを遺したと言われている。

製麦した(麦芽にした)大麦がもっと入手できるようになると、パンプキンビールは支持を失い、20世紀初頭までにまったくつくられなくなってしまった。この状況が変わったのは1985年である。この年、カリフォルニア州ヘイワードにあるバッファロービルズブルワリーがこのビアスタイルを初めて復活させた。しかしこのときは、米国の秋の楽しみであるパンプキンパイの味わいをビールでつくろうとして、さまざまな香辛料を加えた。残留糖度を多くもたらすカラメル麦芽がふんだんに使われ、デザートのような仕上がりだった。この味わいのパンプキンビールはやがて人気を博した。

現在、米国にはパンプキンビールの銘柄が数百ある。それらのほとんどにシナモン、ナツメグ、クローヴ(チョウジ)、オールスパイス(ジャマイカペッパー)、そして時にショウガも用いられ、甘くスパイシーな特徴を持っている。今やスタウトやポーター、ウィートエールを元にした銘柄、さらには野生酵母を使ったサワーパンプキンビールも出てきているが、多くは琥珀色をしていて麦芽の甘い特徴が出ている。ボディーは、セッションビールと呼べるほど低アルコールで軽いものから、例えば木樽熟成でアルコール度数12%以上もあるどっしりとしているものまで幅広い。

パンプキンを醸造で用いる際は、あらかじめ加熱処理をしてもしなくても、麦汁を糖化する際に投入する。しかし煮沸時や発酵時、もしくはその両方に投入するつくり方も時折ある。パンプキンビールは一般的に初夏に仕込まれるので、使用するパンプキンは採れたてではなく缶入りや冷凍モノである。早めの工程で投入される場合は、実の糖分のほとんどを酵母が食べて発酵し、パンプキンらしい味わいがほとんどない、すっきりとした出来上がりになる。だから、ブルワーは甘味を保つためにカラメル麦芽をよく用いるのである。さらに、はっきりとしたパンプキンの味わいを少しは保つために、多くのブルワーは発酵タンクに直接投入している。

米国の最高レベルのパンプキンビールのいくつかは、日本に輸入されている。サザンティアの「パンキング」はスパイシーで甘く、ボディーが強い。そしてそこにアルコールの好ましい熱さが加わり、またこれは甘味とのバランスをとっている。エリシアンの「パンクチーノ」は、あのスターバックスコーヒーのパンプキンフラペチーノに似せた甘い飲み物にするために、複数のスパイスとエスプレッソコーヒー用の豆を用いている。それでいてセッションビールの感じを出すために、アルコール度数と甘味はいくぶん低くしている。ローグのファームズパンプキンパッチエールもスパイスが使われているが、アルコール度数は低くて甘さ控えめで、より季節感が感じられる輸入ビールとなっている。

日本のクラフトブルワーたちも美味しいパンプキンビールをつくっている。ハーヴェスト・ムーンの園田智子は2001年から醸造していて、近年のものは熟成をさほどきかせていない。園田は冷凍のカボチャを、スパイシーさを出すためのジュニパーベリー(ジンらしい香りの素)、シナモン、クローヴと一緒に、糖化と煮沸の最後の両方で投入している。そしてアルコール度数と秋らしい味わいを増幅させるために、メープルシュガーもいれている。出来上がりのビールは非常にスパイシーだが、ほど良く甘くて非常に杯が進む逸品だ。

ベアードブルーイングのブライアン・ベアードの母のために名付けられた「カントリーガールかぼちゃエール」は、2002年から毎秋に発売されている。複数のカボチャ類をゆでてから糖化工程に加えていて、スパイスは用いていない。米国の多くのパンプキンビールと比べると甘くないが、フルボディーで麦芽の特徴が出ている。香りにはパンプキンとともにカラメルとチョコレートの感じもある。

奇抜なのは、いわて蔵ビールの「ベルジャンパンプキンエール」だ。バランスに優れた金色のビールで、ベルジャン酵母由来のスパイシーさと、ほんのりとしたパンプキンの味わいを伴う。よりアメリカンスタイルに近いのは麦雑穀工房マイクロブルワリーの「かぼちゃエール」で、甘くてスパイシーで、カボチャの味わいにあふれている。京都の一乗寺ブリュワリーの「かぼちゃのエール」もカボチャの味わいにあふれているが、スパイスは控えめだ。

特に米国にパンプキンビールが苦手な人がある程度いることは、知っておいた方がよい。ある人々は単に「ビールにパンプキンパイのような甘味やスパイシーさがあるべき」とは考えていない。ほかの人々は、晩秋の季節限定銘柄になるべきパンプキンビールが、非常にマーケティング優先な方法でもって、軽快ですっきりとした夏らしいビールが好まれるはずの夏真っ盛りに売られていることに、怒りを感じている。ブルワリーのなかには少しやりすぎのコンセプトでつくってきたところがあるだろう。つまり、甘味とスパイシーさの度が過ぎていてほとんど怪奇と言っていい銘柄が存在するということだ。願わくは、そうしたビールには10月までお目にかかりたくない。美味しいパンプキンビールはたくさんあるが、パンプキンパイやフラペチーノに親しんでいない日本のブルワリーの多くは、すっきりとしている方のパンプキンビールをつくるべきだと思う。アメリカンな感謝祭の料理でも、栗や柿、そしてカボチャを使った日本らしい食材でも、パンプキンエールを合わせてみて、どれだけうまく食事の味わいを補ってくれるか、確かめてみよう。うれしい驚きがあるだろう。

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All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


This article was published in Japan Beer Times #24 (Autumn 2015) and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.