Spring Valley Brewery Talk Session

先月、東京・代官山にあるスプリングバレーブルワリー東京で、日本のクラフトビール業界の重要人物を迎えたディスカッションパネルが開催され、本イベントの映像が最近スプリングバレーブルワリーにより公開された(映像はこちら: https://www.youtube.com/watch?v=MT5O2kCLtoQ)。 本イベントに関する本誌シニアライター・熊谷ジンヤの考察は以下の通り。 2015年4月10日、1週間後にオープンを控えている東京・代官山のスプリングバレーブルワリーにて、興味深いトークイベントがなされた。 登壇者は五十音順に、青木辰男(麦酒倶楽部ポパイオーナー)、朝霧重治(コエドブルワリーの協同商事代表取締役社長)、小田良司(日本地ビール協会(クラフトビアアソシエーション)会長)、木内敏之(木内酒造取締役)、田山智広(スプリングバレーブルワリー シニアマスターブリュワー)、チャック・ハーン(豪モルトショベルブルワリー マスターブルワー)、ブライアン・ベアード(

Averyブルワリー新設!マハラジャ初上陸&スーパーセールスジェニファー来日記念イベント

アメリカのベストクラフトブルワリーの一つ、エイブリーブルーイングのイベントが今週いくつか開催されます! 来る4/9~10、Avery Brewingよりスーパーセールスのジェニファーさんが来日!これを記念して東京・横浜の4店舗にてイベントを開催します。この機会に、日本でまだ知られざるエイヴリーの一面や新醸造所の旬な話をお楽しみいただけます。 Avery Brewingについて エイヴリーブルーイングはBrewers Associationの本拠地としても知られるコロラド州ボルダーに位置し、1993年よりビールを醸造、コロラド州の5大ブルワリーの1つとしても知られている。作られるビールは非常に多彩で、定番以外にも三位一体シリーズ、独裁者シリーズ、悪魔シリーズ、バレルエイジドシリーズ、果ては有名ブルワリーとのコラボビールまで数多くラインナップしている。2015年1月に醸造所を移転・新設し、今後ますます飛躍が期待されるブルワリーの1つである。 ≪イベント内容≫ 4月9日(木) 【Avery Brewing 関係者向けビアトークイベント】 at デビルクラフト浜松町 14:00~16:00 Averyスーパーセールスのジェニファーさんより、アメリカ国内でのクラフトビール事情やAveryの現在と今後の展望などをお話します。日本初上陸のマハラジャインペリアルIPAや、バレルエイジドのボトルビールをご試飲頂けます。 ※人数20~30名 ※当日のご参加も可能ですが、ご試飲いただけますボトルの数が非常に限られていますので、お早目にお越しください。 (お申込み詳細はAQベボリューションまで) 【Maharaja Night!】  at デビルクラフト浜松町 通常営業時間+21:00~来店予定  RateBeer100ポイントを叩きだしたMaharaja Imperial IPAを含む全5種類のラインナップを予定。  https://www.facebook.com/events/368963449957348/ 【Rare Beer Bottles Tasting!】  at ロイヤル・スコッツマン神楽坂  19:00頃~21:00来店予定  現地でも入手困難のレアなボトルビールx4種をお楽しみ頂けます。  ・Antonius` Carmen (バレルエイジドサワーエール)他  https://www.facebook.com/pub.royalscotsman 4月10日(金) 【CBM x Avery Tap Takeover】  at クラフトビアマーケット三越前  17:00頃 来店予定  https://www.facebook.com/craftbeermarketmitukoshimae 【THRASH ZONE Hardcore Night】…

スプリングバレーブルワリー東京

2015年4月17日に東京・代官山にオープンするキリンビールのグループ会社「スプリングバレーブルワリー」によるブルーパブ「スプリングバレーブルワリー東京(SPRING VALLEY BREWERY TOKYO)」の記者会見が同年3月18日に行われた。会見では、同社の和田徹・代表取締役社長が「店舗・ビール体験・ブランド」について、田山智弘・シニアマスターブリュワーが「ビールと設備」について説明した。 スプリングバレーブルワリー東京の1回の仕込み量は250リットル、年間製造量は60キロリットルであり、これはご存じの通りビール免許のための最低醸造量である。つまり、ビール免許で運営しているブルワリーの中では小さい部類に入る。席数は215あり、さらにこれまでプロトタイプを取り扱っていたオンラインショップDRINXでのボトル詰めの販売もするそうである。これに親会社キリンのマーケティング力を持ってすれば、60キロリットルはあまりにも少ないように思える。しかし、もし不足しそうな場合は、3月25日にオープンする「スプリングバレーブルワリー横浜」での製造分でまかなうという。 仕込み釜やタンクはシースルーになっていて製造工程を可視化している。これまでどこの工場見学に行っても、各設備はブラックボックスのように見えないでいたことを考慮すると、これは評価できる取り組みだ。リアリティーを持って製造工程を理解できる。なお、このシースルーの仕込み釜は、素材の問題による麦汁の焦げを防ぐため、煮沸中は下から撹拌する仕組みになっている。 製造スタッフは4人で、現在は立ち上げ時期のため応援でもう1人が加わっている。このブルワーに選ばれたのは社内公募ではなく、任命される形で決まった。そのため「自分がやりたかったのに」と思ったキリンの社員は少なくなかったという。 定番銘柄は、496、COPELAND、Afterdark、on the cloud、Daydream、JAZZBERRYの六つ。気になる価格は、ブルーパブで提供される際は380ミリリットルで680円前後。驚くほど高くもなく安くもなくといったところだろう。DRINXで販売するボトルは330ミリリットルで400円台にするという。 これら定番銘柄はいずれも一定のクオリティーを満たしていると思う。これらが代官山と横浜でいつも飲めるのは価値があることだ。特に代官山は朝8時から営業しており、朝からビールが飲めるお店が東京に一つ加わることになる。東京観光のスポットになるかもしれない。 記者会見を受けて、気になったことがある。それは和田社長の説明による同ブルワリー事業の目的だ。そこには「クラフトビール市場の拡大・定着をリードすること」とある。キリンは30年以上、小規模での醸造を続けているそうだが、「地ビール」または「クラフトビール」という枠組みでは後発だ。「先輩」をリードするということが、尊大な形でないことを心から願う。また、使いたいホップなどの原料を、キリンの力を持ってして買い占められてしまうのではないかという、ブルワーの危惧も聞いたこともある。 スプリングバレーブルワリーは「クラフトビール市場の拡大・定着を、既存のブルワリーと一緒に進めていくこと」ができるかもしれない。しかし興奮したゾウは人間を踏みつけることがあるが、大人しいゾウも普通に生きているだけで地面の虫を踏み潰している。つまり、同社が全うに利益を追求していくだけで、ほかの既存のブルワリーの商機を奪うこともあり得る。これは本誌2015年冬号の記事「クラフトビールは死んだ?」でも指摘しているところである。今後も同社の動向を注視していきたいと思う。 Kumagai Jinya

How Many Breweries Can the US Take?

日本のクラフトビールのブルワリー数は約220。この数はどこまで伸びる可能性があるのだろうか。国別の人口1人当たりのブルワリー数のランキングを用いて、米国のブルワリー数がどこまで伸びる可能性があるのかを検証している興味深い記事がある。 How Many Breweries Can the US Take? この記事の訳はこうだ。 米国のブルワリー数が4500まで伸びる可能性があるのだろうか。この答えは、これからできるブルワリーの規模、場所、そしてつくられるビールの質によるが、とにかく推定をしてみよう。比較できるデータを用いれば、ほとんど確実に4500カ所までいくという結論が導き出せる。 2012年現在のヨーロッパの「ビール好き」諸国のそれぞれのブルワリー数と人口のデータを用い、人口ブルワリー率、つまり1人当たりのブルワリー数を計算した。米国のブルワリー数は2014年7月31日現在で3084であり、1人当たりのブルワリー数をヨーロッパ諸国のランキングに入れると8位に入る。ちなみに1位から、スイス、デンマーク、リトアニア、オーストリア、ドイツ、英国、ベルギーの順に並んでいて、その後に米国が入っている(興味がある人は国別コードを参照してランキングを見ることをお勧めする)。 米国がスイスと同じ人口ブルワリー率を持っているとすると、なんと1万4000以上ものブルワリーがあることになる。スイスよりも規模が大きいドイツや英国の方が、より適しているだろう。ドイツや英国が米国と同じ人口を持っている場合、それぞれ5300と4700のブルワリーがあることになる。 ここで米国の過去の人口ブルワリー率を見てみよう。最高だったのは1870年代で、この率を現在に適用すると3万を超えることになる。しかし、1900年の人口ブルワリー率を適用すると7604になる。現在はちょうど1910年代、つまり禁酒法が施行される直前と同じ率である。 しかし率は同じでも、たくさんの違いがある。例えば、1900年には2社で75%の市場シェアを占めるような大手メーカーはなかった。しかし市場の細かな点を見ると、クラフトビール市場が世紀の転換を象徴する一つの例として見られ始めていることも含め、類似点が増えてくる。小さなブルワリーが地域市場に貢献しているのだ。 以上が記事の訳だ。米国の2013年の人口は約3.2億人であることを考慮すると、スイスの人口ブルワリー率は約0.004%である。2位のデンマークは0.002%で、8位の米国で0.001%。それぞれに日本の人口(約1.3億人)を掛けると、5200、2600、1300となる。冒頭で示した現在の217という数値と比較すると、膨大な数である。 もちろん、ランキング上位の国の人口ブルワリー率をすぐに日本に適用することはできない。それは、「ビール文化」の深さが違うからだ。日本もこれから再びブルワリーの数が増えていくためには、ビール文化が深くなり、一つひとつが地域に根差していくことが必要になるだろう。 Kumagai Jinya