若いカップルが恐る恐る地ビール専門ビアバーのドアを開け、店内を覗く。年季が入ったインテリア、職人の手造りによる見事なテーブルとチェア、そしてカウンターには優雅なデザインのビアサーバーがずらりと並んでいる。二人は覚悟を決めて店内に入りカウンターに座る。すると如何にもビールに詳しそうな風貌のマスターがにこやかに近づいてくる。その表情は自信に満ちている。 彼女「私たち二人とも地ビールって初めてよね?どうしよう・・・」 彼「僕が選んで注文してみるから任せて」 カウンターに置かれたチップ入れの瓶に書いてある「your souls」という文字がちょっと不気味な感じ。 2人はドキドキしながらまるで聖なる儀式を見つめるようにマスターが2杯のパイントグラスにビールを注ぐのを見つめている。1杯は濁った感じのブラウンエール、そしてもう1杯はオニキスのように真っ黒な色をしている。彼が彼女のために選んだのは「クアドラプルIPA・アナイアレイター(死滅させるものという意味)」アルコール度数20%、自分用に頼んだのは「スーパーインペリアル・ダースベイダー・スタウト」アルコール度数22%。二人は見つめ合いながらそれぞれのグラスに入った液体をグッと飲んだ。それまで体験したことのない強烈なホップ臭が彼女の可愛らしいピンク色の舌の上で炸裂し、次の瞬間、彼女の鼻からまるで仕掛け花火のようにビールが吹き出しカウンターの上に飛散する。一方、彼の目からは涙が溢れ次の瞬間、彼の鼻から鮮血が吹き出して誕生日にお母さんからプレゼントされたネクタイを真っ赤に染める。二人は同時にトイレに駆け込み、危うく下着まで汚すことを免れるのだった。 「2杯目を飲む準備が出来たらいつでもおっしゃってください!」とマスターが叫んだ。 さあ、「ジャパン・ビア・タイムズ」第2号の登場です。創刊号に対する反響は想像以上に大きく、たくさんの励ましのお便りなどを頂いた一方、ご批判もたくさん頂きました。「ビールについての役に立つ情報が少ない」というご批判が多かったので今後はもっと掘り下げた内容も掲載していく予定で、今号ではいくつかそのような記事も盛り込んでいます。しかし創刊号では「クアドラプルIPA・アナイアレイター」のように地ビール初心者に敬遠されそうな存在にはなりたくないという思いがありましたし、実際、創刊号を最も歓迎してくださったのは地ビール初心者の方々でした。そして創刊号に広告を載せてくださっているお店を訪ねてみて、生まれて初めて手造りビールというものを飲んだという地ビール初体験の方がたくさんいらっしゃったようです。私たちが知る限り、彼らは皆めでたく地ビールファンになってくれました。そういったこともあるので今後もビギナー向けの記事、あるいは直接ビールには関係の無い記事を掲載することもあるかと思います。本誌は広く情報を収集しながら幅広い読者層にアピールしていきます。地ビールを造っている皆さまにとっても本誌にとっても、新しい地ビールファンに高品質のもの、充実した内容を提供することで明るい未来が開けるものと確信しています。お互いに力を合わせて頑張りましょう。今後ともご支援をよろしくお願いいたします。 A young couple timidly opens the door and peeks in: an interior of wood worn smooth over the years, tables and chairs hand-made by a craftsman, a row of elegant taps. They sit at the bar and the master comes over, his smile, friendly, wise. “Um, we’ve…