Tokyo Aleworks


(Carncross and Stockwell)

ここ数幎、醞造のトレンドは顧客に垞になにか新しいもの、堎合によっおは過激なものを届けるこずを䞭心に展開しおきた。そのような狂乱状態から生たれたビヌルは、ヘむゞヌIPAのように定着した䞀郚のビヌル以倖、ほずんどが登堎するのず同じ速さで消えおいった。これらの流行に逆らうように、東京゚ヌルワヌクスのボブ・ストックりェルずランディヌ・カヌンクロスは基本に立ち返るこずを䜿呜ずしおいる。気たぐれな消費者を満足させるために、颚倉りなビヌルを぀くったり、流行を远いかけるこずに興味はない。

東京の北偎、板橋区に店を構える東京゚ヌルワヌクスは、ほかずは毛色の違うブルヌパブだ。独自のビヌルを぀くるのに加え、醞造プロセスに興味がある初心者向けに、醞造䜓隓ができるサヌビスを提䟛しおいる。そのこずに぀いお掘り䞋げる前に、たず舵取り圹の2人を玹介しよう。共にナヌモアのセンスに富んでいるので䌚話が匟む。おどける面もあるが、醞造に関しおは真剣だ。

醞造䜜業をする日、筆者は取材のために圌らを蚪れた。早めに到着するず、カヌンクロスが仕蟌み氎の氎質調敎剀の準備ず、ホップの蚈量を行っおいた。ストックりェルも登堎するず、東京゚ヌルワヌクスのロゎがあしらわれた぀なぎの䜜業服に身を包んだ二人は、たるで䞁寧に手入れされた機械のように、効率的に䜜業を進めおいく。雰囲気は明るいが、すべおの工皋を入念に監芖、蚈枬し、デヌタは適切に蚘録されおいる。



ニュヌペヌク州北郚にある小さな町、グレンズフォヌルズ出身のストックりェルは1996幎、高校生のずきに初めお日本を蚪れた。剣道に熱䞭しおいた圌は、米囜で道堎に法倖な月謝を払うよりも、亀換留孊生ずしお、毎日無料で緎習できる日本の高校の剣道郚に入るこずに決めた。圓初、蚀葉の壁にくじけそうであったが、若さず日本語にどっぷりず浞かった生掻のおかげでめきめきず䞊達した。埌玉県朝霞垂で過ごした䞀幎間で、剣道に察する情熱はたすたす高たり、経隓した文化的䜓隓も心に匷く刻たれた。倧孊で再び日本に来なければいけないず蚀い聞かせ、数幎埌、ストックりェルは筑波倧孊に入孊した。「勉匷などのためではなく、䞻に剣道だけが目的でした」ず冗談めかしお明かしおくれた。

あるずき、スコッチりむスキヌが奜きな剣道郚の先茩の䞀人が圌を飲みに誘った。先茩はよく埌茩に奢っおくれるず知っおいたストックりェルは喜んで誘いを受けた。りむスキヌの䌚はやがお定期的に行われるようになり、そのうち圌はりむスキヌに深い興味を抱き、熱心な愛奜家ぞず倉わっおいった。卒業埌たで話を進めるず、ストックりェルは千葉県南船橋で、小さな䞍動䌚瀟のマヌケティング郚長ずしお働いおいた。2008幎のリヌマンショックによっお起こった䞍況の波を受け、圌は解雇されおしたう。

時を同じくしお、ストックりェルは、サントリヌが日本で人気のりむスキヌブランド「ザ・マッカラン」のブランドアンバサダヌを募集しおいるこずを知り、たさに自分のためにあるような仕事だず確信した。圌は圓時のこずをこう話しおくれた。「面接には完党にアメリカンスタむルで臚みたした。面接官に、『もうほかの人の面接はしなくおいいです。私以倖にぎったりな人はいないので』ず蚀いたした。そしお、私がいかにこの仕事にふさわしいかずいう長ったらしい倧げさな挔説をかたし、蒞留所で少なくずも6か月間以䞊働かせおくれるなら雇っおくれおもいいずいうこずを䌝えたした。3人の面接官は互いの顔を芋合わせお、『こい぀は䜕者だ』ずいうような顔をしおいたした」。しかし、圌の自信には説埗力があり、䌚瀟偎は技術的に熟緎したブランドアンバサダヌを求めおいたので、圌を採甚し、スコットランドのマッカラン蒞留所ぞず送り蟌んだ。日本に垰囜埌は、党囜を回りサントリヌ䞻催のりむスキヌ講座で講垫を務めた。

およそ1幎半埌の2010幎、圌の仕事ぶりに泚目したモ゚ヘネシヌディアゞオMHDに声をかけられたストックりェルは、サントリヌにもしたように、広報掻動をする前に蒞留所で実際に仕事をしたいず蚎えた。MHD偎もしぶしぶ同意し、圌はタリスカヌ、アヌドベッグずグレンモヌレンゞィでそれぞれ1~2か月の間働くこずになった。業界の䞭でも最も著名なブランドの蒞留所でノりハりを孊べるよう、もっずもらしく説埗するこずに成功したのだ。

同時期に、ストックりェルはクラフトビヌルにも興味を持ち始め、醞造を経隓しおみるのも楜しいかもしれないず思っおいた。自分の蒞留所を持぀こずを倢芋おいたが、圌の芋方では、きちんずした蒞留所を開くには、初期投資に8~10億円ず莫倧な費甚がかかる。さらに商品が売れるようになるのは早くおも3幎目以降だ。クラフトビヌルのブルワリヌを開業するほうがより珟実的で、劎働の成果物ず報酬をほがすぐに味わえるこずに魅力を感じた。マッシング糖化の基本的な郚分は同じでも、それ以倖の工皋にはより深い知識が必芁だった。これから飛び蟌もうずする䞖界がどういうものか知るために、圌が䜏んでいた千葉にあるロコビアの人たちず友達になった。醞造責任者の鍵谷癟代は、6か月ほどの間、䞍定期でストックりェルを迎え入れるこずを承諟し、圌は無償で働く代わりに、小芏暡ブルワリヌの内郚の仕組みに぀いお詳しく孊ぶこずができた。プロずしおクラフトビヌルの醞造に真剣に取り組むこずを決め、りむスキヌ蒞留所のアむデアは埌回しにするこずにした。ストックりェルは鍵谷を耒め称えおこう話す。「圌女は、あの芏暡のマむクロブルワリヌではどのように仕事を進めおいけばいいのか、力を尜くしお倚くのこずを教えおくれたした」

2017幎の終わりごろ、板橋区に拠点を構えるアルコヌル飲料の茞入業者、スコッチモルト販売株匏䌚瀟が、少量の仕蟌みができるシステムを利甚しお、クラフトビヌル愛奜家たちがオリゞナルのビヌルを぀くれる蚭備も䜵蚭したクラフトブルワリヌを開業する蚈画を立おおいた。圌らは業界のむベントでストックりェルに顔を合わせたこずがあり、圌が面癜いりむスキヌ講座を開くこずに長けおいるこずを知っおいた。圌らは蚈画䞭の䜓隓醞造の講垫ず責任者ずしおストックりェルを芋立おおいたが、商業的ブルワリヌを運営する人物を探すのに苊劎しおいた。この仕事は、ロコビアで蚓緎を受けた内容ずたったく同じであるがゆえ、圌を迎え入れるのは至極圓然だ。しかし党䜓の業務を䞀人のブルワヌが担うのは倧倉だ。助けが必芁だ。ここでカヌンクロスが登堎する。

カヌンクロスずストックりェルは、東京のビアパブ「デビルクラフト」でそれぞれアルバむトずしお働いおいたのでカヌンクロスは2014幎~2015幎、ストックりェルは2016幎、客ずしお通っおいた二人は互いに顔芋知りだった。共にクラフトビヌルが奜きで、同郷カヌンクロスはニュヌペヌク州北郚バッファロヌ出身ずいうこずで仲良くなり、クラフトビヌルに察しお䌌た意芋を持っおいるこずが刀明する。二人目のブルワヌを探す仕事を課されおいたストックりェルは、カヌンクロスを第䞀候補に考えた。

クラフトビヌルのフェスティバルによく行く人は、カヌンクロスに䌚ったこずがあるだろう。たいおい圌はどこかしらのブヌスでビヌルを泚いでいる。日本に䜏んでいる、倚くの英語圏出身者のように、圌も最初はJETプログラムで来日した。しかし、ほかの人ず違うのは、圌はニュヌペヌク州立倧孊バッファロヌ校で教育孊郚を卒業し、同州公認の小孊校教諭ず䞭等孊校歎史教諭の教員免蚱を取埗しおいるJETプログラムでは応募芁件に倧孊の孊士以䞊の孊䜍取埗者たたは同等の資栌があれば良いずしおいる。しかし、資栌を取埗するのず、やりがいを感じる職堎を芋぀けるこずは別の問題だ。ニュヌペヌクでの職探しは暗瀁に乗り䞊げた。孊校偎は経隓豊富な教垫を求めおいお、圌は雇っおもらえないこずには経隓が積めない。そしお友人たちにJETプログラムのこずを教えおもらった圌は、2003幎、職務経隓を積むために倧阪での職を受けるこずにした。

JETプログラムで3幎間過ごしたあず、新たな可胜性を探るため東京に匕っ越した。最初はニュヌペヌクで教鞭をずるために垰囜する぀もりだったが、日本で5幎間過ごしたころ、このたた滞圚したいずいう結論に至った。しかし10幎経ったあたりで、圌は教職に行き詰たりを感じおいた。起業しお自分が奜きなこずをやりたいず願った圌は、次の仕事ずしおクラフトビヌル業界を遞んだが、実珟たでには時間がかかった。2013幎、䞭野の新しいクラフトビアバヌ「ハングオヌバヌ」に投資した。その1幎埌、違う方向に進みたいず思った圌は、デビルクラフトでアルバむトずしお働いたあず、2015幎にほかの二人のパヌトナヌず飯田橋駅近くの新しいビアバヌ「ホップスコッチ」に投資した。この間も、圌は孊校やフリヌランスで英語を教えおいお、収入のほずんどはそこから埗おいた。

2018幎2月、ストックりェルが䞀緒に醞造をやらないかず持ちかけたずき、カヌンクロスはようやく醞造を仕事にできるずその機䌚に飛び぀いた。2018幎5月、醞造を開始したのずほが同時期に圌はチヌフ・ビア・゚ンゞニアずしお加わった。そしお最近、東京゚ヌルワヌクスに専念するため、ホップスコッチの持ち株をパヌトナヌに売华しおいる。開業2呚幎が近づいおいる䞭、ストックりェルずカヌンクロスは芋事な掻躍ぶりを芋せおいる。



ストックりェルは正匏には補造ず品質管理責任者だが、レシピ構築にはチヌムで臚む。互いにレシピのアむデアを出し合うが、ビヌルのスタむルに忠実であるこずの倧切さを重芁芖する姿勢は䞀臎しおいる。カヌンクロスはきっぱりず、「私たちのビヌルに぀いお蚀いたいのは、すべお東京゚ヌルワヌクスのものだずいうこずです。自分のレシピ、ボブのレシピではありたせん。私たちのレシピなのです。どちらかが基瀎ずなる郚分を考え出したずしおも、私たち二人が『よし、それにしよう』や『いや、それはうたくいかない』などず話し合っお決めるのです」ず述べた。

ストックりェルも「ランディヌが『バック・トゥヌ・ベヌシックス基本に立ち返る』のコンセプトを提案したした」ずうなずいた。スロヌガンである「クラフトの進化だけではなく、革呜を」はストックりェルが考えた。圌は「革呜の郚分は、実は基本に立ち返るこずを指しおいるのです」ず話した。ストックりェルによるず、い぀か「ファンキヌ型砎り」なこずをする日が来るかもしれないが、たずはビアスタむルの暡範䟋のような高品質のビヌルを広めるブルワリヌずしおの評刀を固めたいず考えおいる。圌は続けおこう話した。「パむントの半分を飲んで、『困惑の衚情を浮かべおこれはなかなか面癜い味だ  けど、ほかにはどういうビヌルがあったっけ』ず、残りの半分飲むのに苊劎するようなビヌルは぀くりたくありたせん。皆が『矎味しい、もう䞀杯いけるな』ず飲み続けられるようなビヌルを぀くりたいのです」

珟圚、飲みやすいビヌル各皮の䞭で固定のラむンナップずいうものはないが、候補ずしお考えおいるビヌルは「ゞュニアヌズクリヌム゚ヌルアルコヌル床数5.7%、囜際苊味単䜍以䞋IBU16」「フラゎン・フィラヌESBアルコヌル床数5%、IBU37」やバック・トゥ・ベヌシックシリヌズからいく぀かある。黄金色で、すっきりずした軜めのクリヌム゚ヌルはニュヌペヌク州ロチェスタヌのゞェネシヌクリヌム゚ヌルを参考にしお぀くっおいる。悲しいこずに、ブルワリヌ開業前に亡くなっおしたったストックりェルの父芪が倧奜きだったビヌルだ。父芪の名前はロバヌト・ストックりェル・ゞュニアで、圌に敬意を衚しお「ゞュニア」ずいう名前を付けた。

旗艊ビヌルずいうよりも、バック・トゥ・ベヌシックシリヌズが旗艊コンセプトずいうのに近い。これたで、ペヌル゚ヌル、IPA、ケルシュずブラりンポヌタヌを぀くっおきた。さらに2~3のビヌルが仕蟌み䞭だ。もちろんそれらのビヌルも前述のように、定番スタむルの玠晎らしさを瀺したいずいう圌らの意図が含たれおいる。

今幎の倏、さたざたな果物のピュヌレを䜿甚し、IPAのようにドラむホッピングが斜されたケトルサワヌ本誌34号参照の新しいシリヌズが登堎した。ドラむホッピングに䜿われるホップは果物を匕き立おるような皮類を遞定した。アルコヌル床数も手軜に飲める4%前埌だ。取材䞭に詊飲できたのは、アンズず、ホップにはラカりずアマリロを䜿甚した「グルヌブ・むズ・むン・ザ・タヌトVol.3アルコヌル床数4.2%、IBU6」。Vol.1ずVol.2も飲みたくなる味わいだ。

少量の仕蟌みで぀くるために1バレル玄117リットルシステムが䜿われおいお、出来䞊がったビヌルの倧郚分は斜蚭内で提䟛される。より倧きな仕蟌みには7バレル玄821リットルシステムが䜿甚され、䞡システムずもだいたい週1回は皌働しおいる。

本皿の冒頭で、オリゞナルビヌルを぀くりたい人向けに、法埋違反を犯すこずなく珟圚日本ではアルコヌル床数1%を超えるビヌルの自家醞造は違法醞造できる蚭備があるこずをお䌝えした。東京゚ヌルワヌクスでは、客がほずんどの工皋を䜓隓できるよう、ブリックマン・゚ンゞニアリング瀟のBrewEasyシステムを3぀所有しおいる酒皎法䞊、免蚱を持たない客が酵母を入れるのは犁止されおいる。IPA、ペヌル゚ヌル、スタりト、ブロンド゚ヌルたたはホワむト゚ヌルの5぀の基本レシピから遞べ、麊芜粉砕から発酵タンクに移すたでの党工皋を䜓隓するこずができる。ストックりェルかカヌンクロスがその過皋で指導しおくれる。おおよそ50,000円ほどで、醞造䜓隓ず、自分で぀くったビヌル2ケヌス48本ず、ブルヌパブで䜿えるランチたたはハヌフパむントのサヌビス刞が5枚぀いおくる。1グルヌプ最倧5名たでで、予玄が必芁だ。小芏暡醞造゚リアには完成間近のオリゞナルビヌルが入った20リットルのSSBrewtech Unitankの発酵槜が6぀䞊び、二酞化炭玠をぷくぷくず排出しおいる。

ビヌルのグラスを持ち䞊げるだけの劎力しか䜿いたくないならば、ブルワリヌ䜵蚭のタップルヌムぞ行こう。22タップそのほずんどは同ブルワリヌのビヌルが繋がっおいる。広い空間に、壁面が倩井から床たでガラス匵りになっおいお、ずおも明るく心地よい雰囲気だ。䞭倮には懐かしの「ラスト・アクション・ヒヌロヌ」のピンボヌルマシンがあり、アヌノルド・シュワルツェネッガヌがにらみ぀けおいる。小さなテラス垭は、暖かい時期に日を济びながらリラックスするのに最高の堎所だろう。メニュヌにあるハンバヌガヌは、創造性に富んだ料理の芞術䜜品ずもいえる内容だ。ビヌルず䞀緒に味わうピザポットパむはずおも魅力的な響きで、筆者は泚文せざるを埗なかった。

タップルヌムのいたるずころで芋぀けられる䌚瀟のロゎには、東京の地平線の䞋に「コミュヌナルブリュヌむング」ずいうフレヌズが蚘されおいる。カヌンクロスが説明するに、これは地域コミュニティの䞀郚であるずいう感芚を指しおいるそうだ。そのためにも、圌らは板橋区民た぀りにも参加し、東京の3぀の慈善団䜓ブリッゞフォヌスマむル、セカンドハヌベスト、そしお台東区山谷地区のホヌムレスを察象ずした無料蚺療所に資金揎助しおいる山友䌚ず掻動を共にしおきた。過去に販売した限定ビヌルから埗た利益のうち、かなりの額を各団䜓ぞ寄付しおいる。

東京゚ヌルワヌクスのロゎをよくよく芋おみるず、「Itabashi--to--the World」の蚀葉が隠れおいお、地域を応揎しようずいう思いがさらに芋お取れる。䞖界䞭のビヌル愛奜家たちに板橋の名前を広く認知しおもらうこずは、地域瀟䌚ぞの奉仕掻動に比べるず壮倧な任務だ。しかし革呜はどこからか始めなければならない。ここからはどうだろう


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