Garrett Oliver’s Crystal Ball
クラフトビールの世界はときに気まぐれだ。拡大していくと思われた流行は、突如として思いもよらなかった新しい流行に取って代わる。業界内のベテランですら驚かされることもある。逆に、かなり早い段階で変化の兆しを読み取ることもある。今年初めに行った、ブルックリンブルワリーの醸造責任者ギャレット・オリバーに行ったインタビューでもこのことが話題に上っていた。近年の変化について彼はどう思っているのだろうか。
「サワービールが注目されていることにはまったく驚きません。おそらく、これからさらに拡大していくでしょう。苦味よりもサワービールに惹かれることは自然なことだと思います。サワービールが流行らないと思っている人にとっては、予想外の状況となることでしょう。唯一、まったく私が予想していなく、さらに今でも理解できないのが、米国市場での大きいサイズの瓶の不振です。特別醸造のビールは、750ミリリットルと、いくつかの市場で流通している22オンス(約651ミリリットル)の瓶を使用するのが一般的でした。しかし、ここ数年で、消費者は25年以上親しまれてきたサイズの瓶はもう不要だと判断し、これらの瓶は姿を消してしまったのです。タップルーム以外でこのサイズの瓶を売ることができるブルワリーは、今ではごくわずかとなってしまいました。5、6年前までは完全に標準サイズだったにもかかわらずです。考えられる原因は、もしかしたら缶の台頭が関係しているかもしれませんが、あまりよくわかりません。ソーシャルメディアもその一因だと考えています。数人で集まって一緒に飲むよりも、一人で全部飲めるだけの量を買うのでしょう」
それは興味深い考察だ。注目すべきは、この750ミリリットルサイズの米国からの輸入ビールは、日本国内での売上はいまいちなのだ。このような「大きな」商品は、スペースが限られている日本では受け入れられなかったのかもしれない。彼は、今後5年間でどう変わっていくと考えているのだろう?
「サワービールが大人気となっているでしょう。樽詰め、瓶や缶になっても、木樽熟成ビールも変わらぬ人気を集めていると思います。これらのビールは愛されています。ビールとワイン、またビールと日本酒の間にあるようなビールも増えていくでしょう。蒸留に関するプロジェクトを始めたり、カクテルを元にしたビールをつくるブルワーも増えるでしょう」
それらの中で、日本で躍進を遂げたものがあるとすれば、ビールと日本酒の間にあるビールだ。小西酒造がワールドビアカップのエクスペリメンタルビール部門で金賞を受賞したビールを含め、ハイブリッドビールはいくつかある。これから日本国内でどう発展していくのか、また醸造の流行の先端に位置していくのか、今後の展開が楽しみだ。