82 ALE HOUSE Rolls Out New Craft Collaborations



東は仙台、西は神戸まで、HUB(ハブ)と82(エイティトゥ)の店舗ブランドで103店舗(2017年11月現在)を展開している株式会社ハブ。12月4日には東証二部から一部に昇格し、当日は各店で記念セールとして銘柄指定のビールが1杯180円で提供された。

こうした「破壊的」な価格を聞くと思い出すのが、スーパーマーケットのダイエーを創業した中内功である。中内は食料品を中心に従来の価格を大胆に値下げし、「価格破壊」と呼ばれた。この中内はまた、ハブの創業者である。

中内は渡英した際にパブ文化に感銘を受け、それを日本で広めるべく事業化し、1980年4月に1号店「HUB神戸三宮店」オープンさせた(1986年9月閉鎖)。気軽さで最も分かりやすいのが、キャッシュオンデリバリーである。

例えば、1杯だけ飲むために、0次会や2次会の会場として気軽に利用できる。そして、前払い制なので、解散直前に割り勘などによる支払い額の調整が生じない。この気軽さは、自分で持つ買い物カゴに欲しい商品を欲しいだけ入れてレジに持って行く、スーパーマーケットの気軽さに通じるところがあるのではないだろうか。お通しや席料を前提としないのも気軽だ。この「ノーチャージ」という選択肢を日本で広めたことの意義深さを評価する声もある。

我々ビール好きの間でHUBと82が記憶に残るのは、オリジナルビールや小規模ブルワリーによるゲストビールが提供されていることだ。特に、2005年に1号店がオープンした82では、2007年からゲストビールを提供している。当初はおおむね季節ごとの年に4銘柄の提供だったが、次第に月1銘柄、そして月3銘柄まで増やしていった。

そしてこの12月から2018年2月までの毎月それぞれ、スワンレイク、反射炉ビヤ、山口地ビールで製造されたオリジナルビールを提供する。これらのビールは82でしか飲めない。

Brewing at Swan Lake in Niigata

第1弾のスワンレイクは、実は2010年から82でゲストビールを提供している。その前後には、82の店長をスワンレイクのブルワリーに送り込み、仕込みの手伝いなどをする研修制度を導入している。そして2012年、82のオリジナルビールをつくることとなり、その仕込みもこの研修の一環となった。以来、スワンレイクでのオリジナルビールは、毎年12月の好例行事となり、2012年と2013年はストロングペールエール、そして2014年から今年に至るまではセッションIPAを製造・提供してきた。

ビアスタイルをセッションIPAにするのは、スワンレイク側からの提案だった。一方、82は以前ブリュードッグにつくってもらっていた、出来の良いお気に入りビールの製造が、惜しくもブルワリーの都合により停止となっていた。そのビールは、アルコール度数4%台の、ホップの香りと苦味がはっきりとしたセッションIPAのようなスタイルだった。こうして、スワンレイクの提案と、82が復活させたいと考えていたものとが合致したというわけだ。

今回つくられたセッションIPAは見た目は泡立ち・泡持ちが豊か、金色で白濁している。ホップはカスケードとアマリロが使用されており、まずグレープフルーツのような香りがして、その周りにかすかに他のフルーツの香りもある。濁りは渋味はもたらさず、まろやかな口当たりと適度なボディーをもたらしている。それでいて後味はすっと消えるきれいさ。小さいサイズではなくパイントで注文して良かったと思える一杯である。

料理メニューの中から春菊サラダを注文し、合わせてみた。ビールの柑橘類の香りがドレッシングの酸味と合わさってフルーツの味わいが強調される。ビールの苦味と春菊の苦味は当然強まり合い、それが適度に入ったベーコンのうま味を強調する。このビールとサラダを組み合せることにより、複合的なマリアージュが生まれた。

このセッションIPAに続く反射炉ビヤと山口地ビールによる82オリジナルビールも楽しみである。それらが飲めるまで、このセッションIPAを飲みながら待つのがいいだろう。