Sound Brewery

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ワシントン州ポールスボーにあるサウンドブルワリーの創業者マーク・フッドは、自社が新設する大規模な醸造所に興奮している。同醸造所は、米国において最もハイテクな施設の一つとなるだろう。しかも、彼がもともとの小さなシステムでプロの醸造家として始めてからたった5年しか経っていない。彼が数々の名誉ある賞を受賞したことも、同ブルワリーが醸造可能な量の限界に達した理由の一つである。また、米国の太平洋岸北西部がビールの消費が多い地域であることも理由に挙げられる。クラフトビールを飲む人の数が飲まない人よりも多く、なかでもIPAが人気のスタイルだが、日本も今、彼のビールを強く望んでいる。

米国内でも需要に供給が追いつかないような状況だと思われますが、そのような状況で、なぜ日本への輸出を行っているのですか?

主な理由は、当社の本来の目標である「幅広い製品をつくり、それを世界に広める」ことにあります。ワシントン州だけで売れればいいという考えなら商売は楽でしょうが、IPAやダブルIPAに偏り過ぎるとバラエティに乏しいラインナップになってしまいます。また、当社は、常に先を見据える姿勢を失わないように努め、将来大きな工場に移転して次のステップに進んだときのために流通ネットワークを構築し始めておきたいとも考えていました。当社の製品はすでにカナダと日本に流通しており、両国との結びつきもでき、ある程度認知されています。私が長く日本に旅行に行っていましたし、以前コンピューターゲーム開発の仕事をしていたころに日本とビジネス関係にあったことも理由の一つです。

あなたのバックグラウンドは自家醸造にあるとのことですが、その経験はプロの醸造家になる過程で、どのような形で役立ちましたか?

ビールについてどのように考えるかという点において、自家醸造の経験は大いに役立ちました。自家醸造では売れるかどうかを考える必要がなく、品質とつくりたいスタイルだけを考えればよいのです。さまざまな種類の酵母、麦芽、ホップを使って、年に30〜40種類のスタイルを自家醸造でつくっていると、それぞれの原料の特性に精通してきます。プロレベルの大掛かりな設備ではなかなかこうはいきません。

米国ウェストコーストスタイルが話題に上ることが多いですが、南カリフォルニアのビールとパシフィックノースウェスト(太平洋岸北西部)のビールは大きく異なります。パシフィックノースウェストスタイルの特徴はどのようなところにあると思いますか? また、サウンドブルワリーはそのスタイルのイメージに当てはまるでしょうか?

ウェストコーストの人々と同様に、ノースウェストの人たちも概してホップが強く効いているビールを好むと思いますが、ノースウェストスタイルは圧倒的な苦みではなく、バランスを重視すると思います。バランスと微妙なニュアンスがこのスタイルのビールにおいては重要なのです。また、よりアルコール度数が高いビールを好む傾向もあるようです。寒冷な気候も大いに関係しているのでしょう。サウンドのフムロ・ニンバスというダブルIPAのIBU値(国際苦味単位)は77ですが、多くの南カリフォルニアビールよりも、使われているホップの総合使用量ははるかに多いのです。ビタリングホップだけでなく、フレーバーホップやアロマホップもたくさん使っているということです。さらにサウンドは、クリスタルライ麦モルトを少量加えることで、IBU値100でモルト香の弱い、ホップの味と香りが炸裂しているビールよりも、複雑な風味を持たせ、全体のバランスを取っています。サウンドのラトナIPAやフムロ・ニンバス、さらにはアメリカンスタイルIPAであるリラクタントIPAでさえ、こうした醸造哲学に基づいてつくられています。

サウンド社は2010年に中古の醸造システムを導入したということですが、ここ5年間の歩みについてお聞かせください。最新式のブルワリーも近く完成するという話もあるようですが。

2010年に、1999年式スペシフィックメカニカル10HLという醸造システムを購入するのに、当時の会社の利益すべてを投入しました。その後、つくりたいビールの醸造に必要な設備の購入に、さらに大きな投資を行ないました。南カリフォルニアの研究施設でほぼ使われていなかった1976年製の遠心分離機を見つけた私は、車を走らせ、新品を買うコストと比べると断然破格の値段でそれを買い取りました。その機械のおかげで私たちは飛躍的に増産することができ、よりクリーンで新鮮、かつ安定したビールづくりを行えるようになりました。遠心分離機は一般のろ過機よりもはるかに優れています。新しいブルワリーではベルギーのMeura社製マッシュフィルターあたりを導入することになるでしょう。このフィルターの導入で大量生産と少量生産の切り替えが柔軟に素早くできるようになります。しかも従来よりもはるかにエネルギー効率がよく、最終的に必要な原材料も少なく済むようになります。ワシントン州でこのシステムを導入するのは私たちが初めてになるでしょうし、米国内においても、このシステムを導入する最も小規模なブルワリーの一つになるでしょう。これは大手ブルワリーでは以前から導入されている技術で、例えばシメイ、ウェストマール、ローデンバッハ、フルセイル、アラスカン、さらにはステラ、バドワイザー、クアーズといった最大手ブルワリーも、マッシュフィルターを導入しています。小規模ブルワリーがこの技術を利用することができるようになったのは、ごく最近のことです。現状では6時間以上かかって7バーレル(約833リットル)の生産がやっとですが、新しい技術の導入により、8〜10時間で60バーレル(約7140リットル)の生産が可能になります。15バーレルタンクも少量生産用(現状のタンクを満たすには2日間必要)に導入予定で、これは約2時間半で満たすことが可能です。60バーレルタンクも1日以内に満たすことができるようになる予定で、これは現在当社が1日の醸造可能量の8倍を超えます。

貴社の企業理念は「伝統からの解放」ですが、伝統の縛りから解放されたビアスタイルの具体例を挙げてください。

「伝統からの解放」という言葉が実際意味するところは、醸造の歴史と指針となるスタイルを踏襲しながらも、それに制約されない、ということです。流行りの原料を使えばいいということや、単に受け狙いのビールをつくるということではありません。伝統のスタイルや、ここ100年間でビールをポピュラーな存在にしてきたものを大切にします。ただし、味わい、香り、バランスを重視しながら、合理的な方法で伝統的なルールを曲げることはあるかもしれません。

モンクス・インディスクレションが典型的な例です。伝統的なベルジャンスタイル(基本的にゴールデンストロングあるいはトリペル)に、かなり強烈なホッピングを施すことによって、ベルジャン酵母由来のバナナ香とホップ由来のトロピカルな香りと味わいを生み出しています。苦みと甘みのバランスは伝統に沿ったもので、使用している酵母も非常に伝統的なベルジャントリペル酵母です。穀類の使い方や発酵も伝統的な方法で行っていますが、特にシトラホップの使用がベルジャントリペルの特徴である果実のような特徴を際立たせています。

また、ベルジャンスタイルインペリアルスタウトではベルギーのブルワーが用いる技術をたくさん応用しています。その技術とは、アルコール度数10%でも、ボディをライトに仕上げ、杯が進むビールにするというものです。アルコール度数10%のインペリアルスタウトながらベルギー産の氷砂糖をたくさん使うことで、ごくごく飲めるような仕上がりになっています。フムロ・ニンバスというダブルIPAでは、クリスタルライ麦を使うことにより、ギャラクシーホップとシトラホップの果実っぽさを強調しています。クリスタルライ麦が、ホップのアロマとフレーバーをいわば「熟成」させる働きをすることで、より飲みやすい仕上がりになるのだと思います。

夏場に一番人気なのが、サマーヴァイツェンです。スタイルとしてはクリスタルヴァイツェンで、オーストリアやドイツでは時々見かけますが、有名なヘフェヴァイツェンほどどこでも見かけられるものではありません。現在米国では、力強くて苦く、アルコール度数が高い、濃厚なポーターが好まれていますが、当社のポンデージ・ポーターは、それとは対照的に、英国のポーターを意識して、スムーズなバランスと飲みやすさを追求しました。また、アンタンデ・ノエルはアルコール度数11.8%という強力なベルジャンクアドラペルで、「伝統からの解放」の好例です。伝統的なクアドラペルに特有のカラメル風味を出すのではなく、ニュージーランド産の新種ホップであるモトゥエカの果実っぽさを強調して、メロンを思わせる素晴らしくフルーティーな味わいを加味したかったので、当社ではこれをペール・クアドラペルと呼んでいます。

ありがとう、マーク! 新しいブルワリーがうまくいきますように!

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