Fruit Beers

フルーツビールは複雑なカテゴリーで、記述するのは今まで意図的に避けてきた。しかしフルーツビールがかなり一般的になってきた今、分類して記述する必要は明確にある。

現在消費されているほとんどのビールにフルーツは含まれていない。しかし歴史的には、フルーツは穀物と並んで醸造に使われるのが一般的だった。例えば、古代エジプトのビールの器からブドウのかすが考古学者によって発見されたこともある。現代では、フルーツと聞いて最もよく連想されるのは、ベルギーのランビックだ。本誌2013年秋号で書いたように、この酸味があって風変りなビールは、空気中に漂う酵母による自然発酵でつくられる。ランビックは一般的にオーク樽で熟成され、たいていはサクランボまたはラズベリーが丸ごと漬け込まれる。これらのフルーツの風味は、ベースとなっているランビックの土っぽい香りや鋭い酸味とバランスを取る。しかしながら近年、クラフトビールのブルワリーは、フルーツの数多くの新しい使い方を見出してきた。丸ごと、果汁、煮て裏ごししたもの、または皮を使い、シロップと一緒にビールの煮沸に加えることもあるし、発酵や熟成の過程で加えることもある。

今回は消費者の視点から、ランビックではないフルーツビールについて、いくつかの基本的な区分をしてみよう。最初の区分は(1)フルーツが味わいの主になるようにフルーツを使っているビールと、(2)フルーツビールでないタイプのビールの特徴を強調するためにフルーツを使っているビール。ここでは(1)をフルーツビール、(2)をフルーツ入りその他のビール、と呼ぶことにする。(1) はさらに、(a)麦芽とホップの特徴が顕著で、ビールらしさをはっきりと持つビールと、(b)ビールらしさは弱く、むしろカクテルのようなビール、に分類できる。(2)については、(a)フルーツが、ベースとなっているビールのスタイルの特徴を強調しているビールと、(b)フルーツの特徴が支配的もしくはビールらしさを覆い隠しているビール、に分類できる。

(1)、(2)のそれぞれの(a)に属するビールが、我々が探し求めるべきビールだと思う。これまでたくさんの(1.b)と(2.b)に属する美味しい「ビール」を試してきたが、それらはビールらしさを保っていなかった。美味しい「飲み物」かもしれないが、美味しい「ビール」としてとらえることは難しい。私が好きなのは(1.a)と(2.a)に分類でき、フルーツがビールの特徴を補っているビールだ。日本のクラフトビールにはこうしたビールがたくさんある。(1.a)では、ひでじビールの「へべすラガー」、ベアードブルーイングの「静岡サマーみかんエール」、サンクトガーレンの「湘南ゴールド」、アウトサイダーブルーイングの「梅麦酒」、ハーヴェスト・ムーンの「ラズベリー」、鬼伝説の「ラズベリー」が挙げられる。(2.a)では箕面ビールの「ゆずホ和イト」、ノースアイランドの「グレープフルーツIPA」、城山ブルワリーの「ベルギーホワイト」、志賀高原の「山伏 アプリコットセゾン」。それぞれのカテゴリーに属するビールはたくさんあり、紙幅の都合で全部は挙げられないほどだ。

今回取り上げた分類法に異論もあるだろうし、建設的な批判は歓迎だ。当てずっぽうでもいいので、今回の分類法でとらえきれない面や、この分類法が適切なのかどうかを確認しつつ、いくつかのフルーツビールを並べて味わうのは面白いだろう。きっと、「銘柄名が示していることは何か」「ブルワーが意図したであろうことは何か」「フルーツが麦芽、ホップ、酵母とどのように作用し合っているか」「ビールが嫌いな人やビール初心者向けにつくられたものか」といった疑問が出てくるだろう。

最後に強調しておきたい点がある。日本や欧米ではフルーツビールはしばしば「女性向け」として売られているが、以下の二つの理由からして、全くおかしな話だ。まず女性は、どんなに苦く、もしくはボディーが強くとも、フルーツビールを除いたすべての種類のビールの魅力を見極めることができる。そして男性も当然、フルーツビールを美味しく飲める。クラフトビールの世界に人種差別や性差別はないのだ!

by Mark Meli

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


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