Epic Times for Epic Brewing



エピックブルーイングは、その名の通り、この数年間ユタ州で英雄的な名声と共にビールをつくり続けている。しかし日本のビールファンは、エピックな(壮大な)味覚の冒険を求めてアメリカのロッキー山脈まで旅する必要はない。高アルコール・大胆な味でありながらバランスにも優れたエピックのビールは、ありがたいことに日本でも手に入るのだ。

ユタ州を知る者なら誰でも、高アルコールビールで有名な醸造所があるとは意外だろう。ユタ州では2008年まで、アルコール度数4%以上の飲料はその種類を問わず厳しく制限されていた。その後の法改正により、醸造所は、厳しく管理された州の流通・小売システムを通さずに高アルコールビールを一般消費者へ直接販売することが許されるようになった。エピック創業者が「ゲームチェンジャー」と形容したように、この法改正で彼らの状況が根本から変わったのだ。

エピックブルーイングは、デビッド・コールとピーター・エリクソンによって設立された。そしてユタ州にある3つの醸造所で計15年ほどの経験を積んでいたケビン・クロンプトンがヘッドブルワーとして大きく貢献している。エピックという夢のプロジェクトを立ち上げる前のコールとエリクソンは、1992年からユタ州で水産養殖の企業を経営していた。水産養殖から醸造とは、とっぴな軌道変更に見えるだろう。だが彼らの説明を聞けば納得がいく。両者は「単細胞生物を利用する技術が驚くほど似通っている」そうだ。そう、イーストのことだ!

エピックブルーイングは設立のほぼ直後から成功を収めた。需要が高い州でタイミング良く創業しただけが理由ではない。次々と賞を獲得し、ユタ州への訪問者はエピックのビールを追い求めた。新たな伝説が一瞬にして生まれたかのようだった。もちろん、彼らはビールについて正しく仕事をおこなっていたのである。

コールとエリクソンは次のように説明している。「我々の哲学は、適度なアルコール度数および高アルコール度数のビアスタイルを数多く上手に造ることでした。バラエティが欲しかったのです。ですから、面白くてフルフレーバーのビール造りに注力しました。現在では『クラシックスタイル』、ホップなど何かしらのヒネリを加えた『エレベーテッド・シリーズ』、大変個性的な『エクスポネンシャル・シリーズ』(エピックといえば主にこのシリーズで知られている)の3シリーズに分けてビールを造っています」

この3シリーズが「遊び場」だって?いや、スリリングなジェットコースターや驚きでいっぱいの贅沢なテーマパークだろう。

コールは、ある出来事を例に挙げた。「(ヘッドブルワーの)ケビンは優れた味覚の持ち主で、ビール造りで避けるべき方向を示してくれます。ある時、スモークをした風変わりなベルギースタイルのビールを熟成させようとしました。ケビンがリードしていましたが、彼は出来上がりが不安でもありました。結局、そのビールはピートの強いウイスキーのような「モルト爆弾」になりました。そのビールを大いに好むか、嫌うか、飲んだ者の反応が2極端に分かれるようなビールです。このような場合は、ビールに欠陥があるのではなく、感想が個人の嗜好に拠るのだと言えます」

醸造チームは、小規模のパイロットシステムでアイディアを試している。失敗もある。ある時わさびラガーを造ったが、マスタード味が強烈だったため良い反応は得られなかった。一方、誰かが持ち込んだ自家製ビールからインスピレーションを得て素晴らしいハーブセゾンを造りもした。その後改良が重ねられたハーブセゾンは、競合ひしめくグレート アメリカン ビア フェスティバルでメダルを獲得した。日本でも販売されているスパイラルジェティIPAなど多くのエピックビールが国際的なビールコンペで金賞に輝いている。

また、エピックにはしっかりとした樽熟成プログラムがあり、彼らは1000樽ほどを抱えている。コールとエリクソンは笑う。「樽熟成に全てつぎ込んでしまいましたよ!大きな賭けです!」彼らは、ワイン造りでは必要とされなくなった赤ワイン樽を主に使用する。ビール熟成時に加える果実はチェリーがお気に入りだ。また、「ブレインレス・オン・ピーチ」も興味深く、そしてもちろん美味な試みだ。アイダホ州のSawtoothワイナリーから譲り受けたシャルドネの樽で熟成させ、オーガニック桃のピューレを「ブレインレス・ベルジャン」に加えたビールだ。美しく、攻撃的ではない、『美しいもの』と彼らが呼ぶビールだ。

しかしどちらかとえいばやはり、エピックは強く挑戦的なビールで知られている。デンバーのダウンタウンに昨年醸造施設を開いたことからも、それで上手くいっている様子がうかがえる。なにしろ、少規模の仕込み量で造られた奇跡のビールが25タップも並ぶタップルームを備え、2つめの醸造施設を創業後わずか数年でオープンさせたのだから。

エリクソンは言う。「デンバーでも非常に好調です。クラフトビールの潮流は、船をすべて持ち上げることができる上げ潮のムーブメントです。デンバーでは、全ビール市場の約30%をクラフトビールが占めていますが、まだまだ伸びしろがあると考えています。同志として、我々で60~70%は掴めますよ!」
まだアメリカ国内でも多くの地方がエピックを待っているというのに、なぜ、これほど成功している小規模仕込みの醸造所が日本へ進出してきたのだろうか?どうやら、日本の多くのクラフトブルワリーと同様に農業のバックグラウンドを持つ彼らにとって、日本は常に興味の対象だったようだ。エピックにとって、日本市場とは賢い選択肢だったのだ。

さて、日本向けの特別なビールを期待しても良いのだろうか?コラボレーションビールなどは?すると彼らは一斉に笑いながら言った。「エピックはどんなことでも検討してみますよ」

これぞ、エピックブルーイングのスピリットそのものではなかろうか。

詳しくは Facebook、AQ HP でお知らせします。

https://www.facebook.com/AQBevolution
http://www.aqbevolution.com



This article was published in Japan Beer Times # () and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.