ビール輸入会社であるKOBATSUトレーディングの社長を務める小林努は、そのカリスマ性で広く知られ、多くの人が彼のことを会社名にもなっている「こばつさん」という名で呼んでいる。レーダーホーゼン(伝統的ドイツ衣装)に身を包み、頭にトールハットを乗せて笑う大柄な男性をビアフェスで見たことはある?その人こそがこばつである。
彼はコスチュームを着たただの目立ちたがり屋では決してない。ビールの大使である。彼の物語は2001年、ビールに関係のない仕事の研修でヨーロッパに派遣されたことに端を発する。それまで日本のラガーしか飲んだことがなかったこばつだが、色々な候補地があった中偶然ミュンヘンに滞在することになり、そこで上司に連れられて地元のビールを口にした。こばつの人生が変わった瞬間である。
帰国後こばつはSNSでドイツビール愛好家のコミュニティを作成し、情報交換の場とした。その結果ビジネス上のコネクションも増え、最終的に彼自身ドイツビールを輸入するのに必要なすべてを持っていることに気づく。偶然にも当時彼が働いていた会社は幾度の吸収合併に伴い、人員を縮小する方向で動いていた。2011年4月、彼は早期退職制度を利用し、その退職金で会社を興した。
輸入を試みた醸造所には断られたものの、日本への輸出に非常に興味を持っている知り合いのブルワリーの紹介を受けることができた。それがプランクだ。一度も聞いたことのない名前だったが、ビールファンから非常に高い評価を受けていることを知り驚く。届いたサンプルを口にし、感動した。
こばつは自身のネットワークを活かし、プランクの樽を日本各地の50カ所に配送した。さらに、プランクは輸入直前、World Beer CupでBest Small-Scale Breweryを受賞。しかしその後、大惨事が起きてしまう。輸入したヴァイツェンの9割が輸送中に酸っぱくなってしまったのだ。それ以来、樽をより低温冷蔵で輸送するなど幾多の安全策を採っている。
こばついわく、「大きな損失だったが、良い教訓となった」。
それ以降はおおむね順調だ。「みんなドイツビールを知っているのに、ブランド名は一つも挙げられない」と、こばつは言う。その現状を変えることが彼の目標だが、どうやらプランクがその流れをリードしていくようだ。
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