Sugawara Ryohei



菅原亮平は、M’s Kitchenの社長。

バーやレストランの経営、ビールの輸入、醸造、イベントやフェスティバルの企画・運営と様々なことをやっておられますが、日本のビア・シーンにおけるご自身の役割をどのようにお考えですか?

難しい質問ですね。私はお店や輸入業の経営者であり一人のブルワーでもありますが最初に始めたのはビジネスのほうです。2004年の5月にもう一人と共同でベルギービール・バー「ベル・オーブ」をスタートさせました。大学時代からの友人とタリーズで緑茶事業を立ち上げた後、カフェ以外に何か面白い事がしたいと考えていて、ちょうどその頃よくシメイを飲んでいて「これだ!」と思いました。ビールはもともと大好きでしたし、今のお店を始めることにしました。

ベルギービールが日本で人気が出るだろうということは当時から予想していました。ある意味、ニッチな市場、 手をつけている人がほとんどいないところを開拓することにも興味がありました。美味しいベルギービールを日本に紹介し、広めることができたらいいなと。そしてお店を始めて間もなく、輸入も自分でやりたい想い、さらにはベルギーのデリリウムカフェも日本やアジアで展開したいと思うようになりました。

最初からうまくいきましたか?失敗談などは?

大きな失敗をいくつか経験しました。立て続けに3店舗オープンさせたのですが、そのうち2店舗はすぐ閉店せざるを得ない状況に追い込まれました。有能なオープニング・スタッフに巡り合えることは本当に難しいし、なにより自分が未熟だった。ビールにはどんなスタイルがあるか、それぞれどんな味か、どのように提供するのがベストか、などについてスタッフに教えるには相当な時間と労力が掛かります。以前に比べて、スタッフは皆、知識が豊富になりました。お客さんのほうも場合によってはスタッフよりも知識が豊富だったりします。今では本当にたくさんのお客様にベルギービールを楽しみに来て頂けるようになりました。現在7店舗を運営する一方、ベルギービールの輸入、またベルギーでビール醸造も行っています。

ビール造りを始めたのはいつ頃のことですか?

2008年2月にベルギーで始めたのですが(Rio Reserva Ratebeer.comで99点)、自分が輸入しているビールの醸造を手伝いながら学び、本格的に始めたのは昨年のことです。当然ですが、初めからうまくいったわけではありません。最初はヨーロッパの大寒波でうまく発酵しなかったり。しかし今は確かなものを造る自信があります。向こうの仲間と話しながらビール造りをすることは本当に楽しい。ベルギーのビール酵母はとにかく素晴らしく、ベルギーでしか造れないものがあると思います。しかもまだまだこれから学ぶべきスタイルがベルギーにはたくさんあるのです。

日本におけるベルギービールは今後どのような展開を見せると思いますか?

日本人もベルギー人のように例えばオープンテラスで昼間からビールを楽しんでもらえたらと思います。そうした思いが私の店舗展開の動機にもなっています。特にビールマニアでなくても一般の人が普通にそういったスタイルで昼間からビールを楽しんで欲しい。そういった意識づけをすることは今のところ順調にいっています。ベルギービールは今やビールマニアが通う薄暗いバーでしか飲めない特別な存在というわけではありません。今ではすっかり一般に浸透し、ビールの主流になってきています。

お店ではどんな銘柄が人気ですか?

セリス・ホワイト、デリリウム、セント・ベルナルデュスが人気です。これらの銘柄についてはビール評論家のマイケル・ジャクソンも著作の中で評価しています。白ビールの魅力にハマる人が確実に増えてきていますね。私もセリスを初めて飲んだ時のことを覚えています。白ビールの美味しさを初めて知った時のことは誰でも印象に残っているようですね。

あなたは国産クラフトビア関連のイベントやフェスもこれまで何度か開催されていますが、日本のクラフトビアをどう思いますか?

日本でも本当にクラフトビアの人気に火が付き始めて個人的にも大好きですが、今のところブルワーがちょっとアメリカのクラフトビアに関心が向きすぎなのかなとも思います。他にもいろいろな種類があることを知って、ベルギービールの魅力も知って欲しいですね。私も毎年アメリカに行きますが、向こうではブルワーたちもビール好きたちもベルギービールについて大変知識が豊富です。アメリカで起きたクラフトビア革命の起爆剤としてベルギービールが重要な存在だったことは間違いありません。クラフトとベルギーをつなぐ立場の方が少ないので私が少しでも役に立てればと思っています。

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