Sato Hitomi

ベルギービール広報センター代表、佐藤ひとみ。

どのような経緯でベルギービールを熱心に応援するようになったのですか?

90年代の初め頃、ベルギーから日本への輸入品について市場環境を調査する仕事から始めました。最初はダイヤモンドとチョコレートが主な対象でしたが1992年頃初めてベルギーに行く機会があり、現地で初めて白ビールというものを勧められて驚き、牛乳かカルピスみたいなものだろうかと思ったのですが、目の前に出てきたのはそれまで見たことも無かったものでした。とても印象的で一気に興味が湧きましたが、自分で輸入しようという考えは起きませんでした。しかし日本にベルギービールの魅力を紹介するお手伝いが出来ればと思いました。そこでまずはベルギーの大手ブランドのビールを日本のマーケットに紹介しました。小西さんがすでにベルギービールの輸入を行っていたので同社に相談にも行きました。最初に日本にヒューガルデンを紹介して人気ブランドに育て上げたのは小西さんでしたね。

1996年、97年、98年と私は伝説的なビール評論家・ライターのマイケル・ジャクソンを小西さんのお力添えにより日本に招くことができました。ちょうどその頃日本ではクラフトビアが出始めてきたところだったのでマイケルは日本の状況を知りたいという意向を持っており、来日のタイミングとしてはパーフェクトでした。彼は日本でベルギービールについての講演を行い、謝礼を要求しないかわりに私たちに各地のクラフトブルワリーまで案内するように提案してきました。氏の著作”Great Beers of Belgium”の日本語版を田村功が出していたのでその販促という目的もあったようです。講演会は毎回盛況で、たくさんの人が氏の話を聞きにやってきて一緒に写真に写ったりしていました。マイケルの来日は日本におけるベルギービールと国産クラフトビアにとっても大変大きな力になったと思います。

ベルギービールの認知度が上がったことは国産クラフトビアにも影響したとお考えですか?

いくつかの点で良い影響があったと思います。当時から日本に入ってきていたベルギービールはどれも大変質が高かったので国内のブルワーたちにとって重要なお手本になったということがまず挙げられます。さらにベルギービールは日本人の嗜好にも影響を及ぼしました。日本のクラフトビアシーンにとって最初の2年間は特に大きな意味を持っていて、当時各地のブルワリーを回ったマイケル・ジャクソンからのサポートも大きな意義がありました。当時は品質の劣悪なものもたくさん見受けられましたが彼はそれらに対して否定的なコメントをするのではなく、別のこういう方法でやるのもいいかもしれませんよ、などの柔らかい言い方でブルワーたちにアドバイスしていました。彼はまた、ビールおたくを意識しすぎたビール造りにならないように、というアドバイスもしていました。クラフトビアの世界をマニアに乗っ取られてはいけない、一般の人たちに広くアピールするように努力すべきだと。

一般大衆へのアピールという点で重要な役割を担っておられるベルギービール広報センターですが、これはいつ頃立ち上げられたのですか?

1998年です。それまでベルギービールに関する情報は業界誌やプレスリリースによって一部の関係者にだけ知らされるという状況でした。そういう状況を打破し、ベルギービールのことをもっと一般の人に知ってもらいたいと思いました。特に新しい情報を日本の皆さんに紹介したいと考えてこれまでずっとやってきました。

何年か前に起こったベルギービールブームが今でも話題に上ることがありますが、当時をどう思われますか?今の盛り上がりと同じようなものだったとお考えですか?

当時と今を比べて特に大きな違いはないのかもしれませんが、ベルギービールの売り上げは少しずつ確実に伸びてきています。ワールドカップの影響でベルギーに対する関心が大いに高まった時期もありました。サッカーの世界でベルギーは日本にとって大変手ごわい相手で、大会の半年も前から日本のメディアはベルギー文化を紹介していました。ベルギーのワッフルやビールの話題も頻繁に取り上げられ、2002年にはワッフルブームとも言うべき状況が起こりましたがこれは長くは続きませんでしたね。

今後の目標は?

ビールと食事の相性というテーマについて、もっともっと大きな関心が集まることを期待しています。このテーマについて最近あるトライアルを行ったのですがこれはうまくいきました。ビールと食のペアリングというテーマで啓蒙的なイベントを続けていくことが私個人の目標です。指でつまんで食べられるものとビールの組み合わせは皆さん大好きですね。


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