秋といえばオクトーバーフェストの季節だ。(近頃、日本ではいつでもオクトーバーフェストが開催されているようだが。)初めてのオクトーバーフェストは1810年、バイエルンの王子ルートヴィヒの結婚を祝うために開催された。そして伝統的にミュンヘン郊外のテレジエンヴィーゼ広場で催され、今日まで続いてきた。
ドイツでは多くの醸造所で独自のフェストビアがつくられるが、オクトーバーフェストでの提供が許可されている「オクトーバーフェストビア」は、ミュンヘン市内の6つの醸造所によるビールに限られる。オクトーバーフェストビアは、デュンケルからボックへ、そして現在の独自のスタイルへと何年もかけて変化してきた。アルコール度数5.5%から6.3%の金色のラガーで、甘みとパンのような香ばしいモルト風味が感じられ、苦みが少なく、ホップの特徴は少ししか現れない。あっさりしていて、1リットルグラスでどんどん飲める。
しかしながら、何十年もの間、オクトーバーフェストスタイルのビールとして人気があったのはメルツェンだ。冬の終わりの3月に仕込まれる琥珀色をしたラガーで、それゆえこの名前が付いた。夏を通して貯蔵され、秋に飲まれる。現在のような冷蔵技術が開発される前は、夏に仕込んだビールはしばしば汚染され、悪くなってしまった。だからバイエルンでは、4月中旬より後に仕込むことは許されなかった。メルツェンは、夏の熟成工程に耐えるために少し強めにつくられた。多量のミュンヘンモルトが濃色と豊かな香りをもたらし、淡色ラガーよりもウィンナスタイルラガーやデュンケルに近いビールになったのである。今日の6つのオクトーバーフェスト公式ビールのうち、ハッカー・プショール醸造所のオクトーバーフェスト・メルツェンが伝統的なスタイルに最も近い(そして味も最高である)。他の5つのビールは淡色である。
伝統的なメルツェンは下面発酵でつくるラガーであり、深い金色から琥珀色をしているのが望ましい。ボディーはやや強く、豊かなモルト風味を持つべきとされる。パンやカラメルのような味がする。ホップ由来の草のような香りが少しあるかもしれないが、強くあってはならない。苦味が強くあってもならない。
日本でも多くのフェストビアがつくられているが、多くが黄色すぎる。ハーヴェスト・ムーンのオクトーバーフェストは深い琥珀色をしており、カラメルモルトがもたらすパンのような風味が同時にあり、スッキリ感と土のような香りで後味がきまる。小樽ビールのフェストビアは伝統的なメルツェンにとても近い。淡い琥珀色で、穀物感のあるモルトの味と少しローストされたカラメルの風味をともなう。ベアレンのフェストビアはもっと今日的で、金色でフルーティーかつモルト風味があるが、伝統的なフェストビアと比べるとホップが強い。もし日本でフェストビアを飲むなら、熱処理を施され、いくつもの海を船に揺られてきたドイツ製フェストビアよりも、ここに挙げた国産銘柄を試すほうが遥かに意義深い。さあ、地元のフェストビアを飲もう!
All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.
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