京都にある彼の焼き物ギャラリーは世界的に知られており、その取引先は美術館から世界のセレブまで幅広い。イエリンは30年間にわたって焼き物について足を使った調査・研究を重ねてきた。机上の研究だけではなく日本各地にある焼き物の町を実際に訪ね、陶芸家たちとの交流を深めてきた。そうした実績もあって、イエリンを現代日本陶芸の第一人者であると考える陶芸ファンは多いし、少なくともクラフトビアに最適な器について彼の右に出る者はいないだろう。
昨年京都に移り住むまではベアードビールのブルワリーがある沼津に長く暮らしていたので、彼がクラフトビアに対する興味を膨らませていったのはごく自然なことだったろう。それ以来ずっと、クラフトビアの魅力を最大限引き出せる器とはどんなものかということについてセンスを磨いてきたのである。
「ヨーロッパでは昔から陶製ジョッキでビールを楽しんできました。一方日本では昔から焼き物で清酒が飲まれてきました。備前焼の陶芸家である中村真さんのお宅にお邪魔した際、彼が自作の器にビールを注ぎながら、この器でクリーミーなヘッドができますよ、と言ったのですが、確かにその器に注がれたビールは素晴らしくクリーミーでした」。
陶磁器の原料となる陶土は多孔質であり、その粗い表面がクリーミーな泡を作る。イエリンによると、素焼きが特徴の備前焼、信楽焼、伊賀焼がビールに最も向いているという。
「焼き物には飲み口が分厚いもの、薄いもの、滑らかなもの、ザラついたものなど様々ありますし、飲み口の形状も多様です。これらの違いはすべてビールの味や香りの感じ方に影響を与えます」。
またイエリンは、従来の陶器はビールを楽しむにはどれも小さすぎるとして、陶工たちにビール用として330mlサイズの器を造るように働きかけている。岡山出身の一井慶はそうした大きなサイズのビアマグ造りを行っている一人である。
「日本では一つのビール瓶からみんなに注ぎ分ける場面が多かったのでビール用としても小さめの器で事足りていたわけです。しかしクラフトビアのファンは大きなサイズの器を好みます。大きめの器をあらかじめ冷蔵庫で冷やしておくとビールがさらにおいしく飲めます」。
京都の歴史ある名店でもクラフトビアを提供する店が出てきており、例えば高台寺にある「名代おめん」ではイエリンのビアマグを使っている。高価なビアマグを落として割ってしまったりしたら大変、と心配する人もいるかもしれない。しかしイエリンは割れたらそれは割れる運命だったのだから心配することはない、と言う。そして焼き物はただ鑑賞するだけではなく、実際に使うものだと。そして意外に手ごろな価格のものもたくさんある。2000〜3000円のものもあるし、10,000円以下で芸術性の高い見事なビアマグが手に入る。一方、高価なものでは数百万円以上もする国宝級の志野焼もある。イエリンはこれからもクラフトビアをよりおいしく飲めるような器の探求に投資していきたいという。
Robert Yellin Yakimono Gallery
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