夏のために造られたかのようなビールスタイルがあるとすれば、それはベルジャンホワイトだ。アルコール度数5%程度の小麦のエールで、通常は大麦麦芽を半分、小麦麦芽または発芽させていない小麦を半分用いる。発酵に使われるベルジャンエールイーストが生み出すスパイシーな味わいに加え、伝統的なウィットビアではコリアンダーシードとオレンジピールがこのビール特有のフレーバーとアロマを与える。ホップ使いは通常とても小さく、アロマや苦みにほとんど影響を与えない。
もちろん、白ビールとはいえ本当の白色をしている訳ではない。実際は最も薄い黄色のビールで、沈殿物の中にあるイーストがビールを白く濁らせるように、ろ過はしない。小麦の影響で泡は白くて大きくしっかりする。そして小麦由来の、柔らかくタンジーでフルーティーなとても爽やかなキャラクターが、オレンジピールと抜群のバランスを取っている。
ウィットビアの起源は中世まで遡る。小麦が豊富に収穫でき、近隣のオランダからスパイスの入手も可能なベルギーフランドル地方で生まれた。20世紀半ばには一時落ち込んだが、1960年代にヒューガルデンが再び生まれ変わらせた。ヒューガルデンは最も広く世に知られるベルジャンホワイトで、日本でも全国で入手可能だが、現在の工業生産品としてのバージョンはかつての姿とは別物である。
この有名ブランドの話はここまでにしたいが、日本にはヒューガルデンより遥かに素晴らしい例が数多くある。そうした日本のビールは独自に異なるスパイスやフルーツを使っている。人気の高い常陸野ネストビールのホワイトエールは、ナツメグとオレンジ果汁を用いタンジーでスパイシーなフルフレーバーを持つ。日本国内と同じようにアメリカでも人気だ。箕面ビールのゆずホ和イトはワールドビアカップで金賞を獲得した。心地良い渋みとドライ感があり、柚子がはっきりとわかる超絶に爽やかなビールだ。
それほど暑くない時は、伊勢角屋、島根、横浜が造っているようなアルコール度数が高く7-8%もあるようなウィットもいい。一方、何も添加しないバージョンも徐々に人気を集めている。大山Gビールの「ホワイトネルソンソービン」のように、ドライホッピングでスパイシーさとシトラスのキャラクターを出したものが多い。
日本でも世界でも、「白ビール」は女子の飲むものとして広告販売されている。多くの女性が白いビールを好んでいるのは事実だろうが、日本の夏では、ウィットビアは女性だけのためにあるものではない。
All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.
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