English Bitter

by Mark Meli

ビターはとてもイギリス的なビールスタイルだ。イギリス国外では未だに若干珍しく、殆ど理解されていない。「正しい」ビターは琥珀色〜銅色で、アルコール度数は4%未満、リアルエールとしてカスクから注がれる。これはセッションビール、つまりゴクゴクと沢山飲めるように造られたものだ。麦芽由来の甘みは充分に際立っていると同時に控えめで、キャラメル香を伴う場合も多い。ホップは顕著で、伝統的にファグルやケントゴールディングスといったイギリスの品種が使われる。ホップの香りと味はどちらもよく認識できるが、アメリカンスタイルのペールエールやIPAほどに支配的ではない。柑橘類またはトロピカルフルーツの香りは弱めで、代わりに花の香り(フローラル)と草の香り(グラッシー)がする。時にはタバコ香もある。リアルエールとして注ぐので炭酸は少なく柔らかい。もちろん、冷やし過ぎは禁物。アルコール度数が低く甘味が控え目なので味わいは軽くクリーンだ。フィニッシュはさっぱりとクリスプで苦味が感じられる。また、ビターを造る醸造所の多くは「ベスト」や「エクストラ・スペシャルビター」というアルコール度数が強いバージョンのビターも造っている。ビターと比べるとフレーバーが強くボディがしっかりしている。

ビターやベスト、エクストラ・スペシャルビターはできる限り新鮮なうちに飲むべきビールで、通常は低温殺菌処理を施さずにカスクで出荷される。カスク内のビールを、飲める状態になるまで引き続き数日間熟成させるためだ。一方、瓶詰めのビターはイギリス国内では「ペールエール」と記載されるものが多く、アルコール度数も若干高めの場合がある。

本当の意味でのイギリススタイル・ビターをレギュラーで造っている醸造所は、日本国内には数えるほどしかない。ベアードの中目黒タップルームでは、ハンドポンプで注がれるハウスビターが常に飲めるが、そのレシピは常に入れ替わっており、ビターよりもアルコール度数の高いベストビターであることが多い。箕面のイングリッシュビターも麦芽とホップの組み合わせがよく変化しているが、いつもアルコール度数が低い。いわて蔵のペールエールは、アルコール度数とキャラクターの点から基本のビターにとても近い。大変イギリス的だ。

瓶や樽に詰められた輸入物のイングリッシュビターと飲み比べてみるなら、フラーズのロンドンプライドやシェパードニームのスピットファイアーが日本でも見つけやすく典型的なビターだ。但し、ティモシーテイラーのランドロードがあったら絶対に飲んでみること。これが世界一だから!

日本のブルワーの方々には是非、イングリッシュビターにもっと注力していただきたい。なにしろアルコール度数が低いので午後から楽しめる。一晩中飲み続けても大丈夫。それでも二日酔いにならないのだ!

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


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