Altbier

by Mark Meli

アルトビールはライン河畔にあるデュッセルドルフ辺りで造られる、アンバーもしくは茶色のビールである。アルトとは「古い」という意味で、ドイツでは古くから上面発酵のエールタイプのビールが主流だったが、ここ150年で下面発酵タイプのものが立場を逆転した。アルトビールは上面発酵酵母を使って造られるので「古い」というわけである。とはいえ現在のアルトビールのレシピは19世紀の中頃に作られたものが基本になっている。

アルトは比較的低い温度で発酵させるという点でイギリスやベルギーのアンバーエールとは異なる。発酵過程の後、さらに0度に近い低温で長期間貯蔵、熟成させる。これにより、上面発酵酵母特有のフルーツ香がほど良く抑えられ、その代わりにスムーズでクリーンな風味が生まれ、飲みやすいビールとなる。アルトはモルティな香りが特徴で、ノーブルホップによる、草や土を思わせるアロマを持つ。しかし、ホップアロマはそれほど強くない。典型的なアルトはしばしばナッツを思わせるカラメルモルトのフレーバーを持つが、甘みは抑えられており、ほど良いフルーツ香とクリーンでクリスピーなホップの苦みが感じられる。ホップアロマは草の匂いを連想させるがシトラス香とは全く異質のものである。また、カラメルモルトのフレーバーはタフィーやバタースコッチキャンディーのような甘さを感じさせるものではなく、スタウトが持つ焦げたようなものとも異なる。アルトは気の置けない仲間と一緒に楽しむようなシーンに最適なビールで、酔い過ぎず、飽きのこない風味を持ったビールである。

アルトは日本国内の醸造所でも以前から人気が高く、第一次地ビールブームの頃はダークエールをアルトと称し、ブロンドエールをケルシュ(ドイツのケルン地方がルーツ)として区別していたが、アルト本来の低温での長期熟成を行なう醸造所は少なく、アルトと銘打っていても中身はイギリス風のものが多かった。現在日本で造られているアルトは50銘柄を超え、本来のアルトの製法を忠実に守っているものからそうでないものまで様々である。田沢湖ビールや横浜ビールが造るアルトは高品質で特に美味しい。田沢湖ビールのアルトは本来の製法に忠実に造られているのに対して、横浜ビールのアルトはやや自由な解釈で造られており、比較的濃い風味を持つ。一方、未だにアルトとケルシュだけを看板に掲げているような醸造所には旧態依然とした印象を持たれる方もいるのではないだろうか。ここはデュッセルドルフではないのだから、もっと色々なビール造りにチャレンジして欲しいと思う。

本場のアルトビールを飲みたいと思ったらデュッセルドルフに今もある古い4つのブルーパブがお勧めだ。Uerige、im Füchschen、Schlüssel、そしてShumacherである。これらのブルーパブでは今でも木製の樽からアルトビールを注いで飲ませてくれる。炭酸はほとんど含まず、熱処理もされていない。とびきりフレッシュかつエレガントで豊かな風味が堪能できる。唯一無二の味である。

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


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