今年は名古屋が新たに日本のクラフトビア勢力図に名乗りを上げた年だった。クラフトビアを造る醸造所が増え、8月には地ビールフェスティバルを成功裡に終えた。Craft Beer Keg、岡田屋、Chicken Boy、モクモク・・・そして名古屋におけるクラフトビアの大きなうねりの牽引力となっているのが愛知県犬山市に醸造所を構える「金しゃち」である。
名古屋を一次市場としているので、金しゃちが造るビールには地元のカラーが反映されている。「名古屋赤味噌ラガー」「八丁味噌ラガー」はどちらも同社を代表する逸品で、名古屋がルーツとされる手羽先唐揚げなどとの相性が特に素晴らしい。
名古屋の味噌を食べてみることはこれらのビールに対する理解を深めることになるだろうが、それは必ずしも必要条件ではない。名古屋味噌の味を知らなくても、これらのビールの個性的な風味は充分に魅力的である。
醸造長の山口は同社がまだ創業間もない1996年入社、当初から赤みそのような地元の食材をどのようにビールに取り入れるか、社内で議論したという。そのような風変わりなものを原料に使いながら高品質のビールを造り出すことは難しいだろうと思われたが、山口のアイデアは最終的に取り入れられることになった。そして当初考案されたレシピがほとんどそのまま現在も使われているという。糖化工程終了後に赤みそを加えるのがポイントらしい。八丁味噌ラガーも味噌の種類が違うだけで造り方は基本的には赤味噌ラガーと同じ。赤みそは親会社の盛田酒造が造っているもので、八丁味噌は岡崎市にある「カクキュー」のものを使っているという。
山口は醸造所の創業に協力したサントリーで6ヶ月間研修を受けて醸造技術を学び、最初の10年間は一人で頑張っていたが、2007年に助手として杉山が入社して二人体制となった。ローカル色豊かなビール以外にも、好評を得ているIPAや、ドイツスタイルのビールも造っている。杉山が「IPAがとても好評だったので、いろいろなペールエールを造ってみたいと思っています」と付け加えてくれた。山口はフルーツビールに取り組んでみたいという。
金しゃちの地元に根差した活動は名古屋で次第に認知されてきており、地元住民に愛されながら今後さらに規模が拡大していくことを二人は期待している。金しゃちは以前、「ランドビア サーカス」というビアホールを名古屋市内で経営していたが、現在は残念ながら休業している。名古屋のクラフトビア好きたちは金しゃちの樽生を飲める直営店舗の再開を心待ちにしている。クラフトビアが盛り上がりつつある今こそ是非店を再開して欲しいものだ。
名古屋以外のクラフトビアバーで金しゃちの樽生が飲めるところがあるし、金しゃちのホームページで通販も行なっているので是非利用しよう。www.kinshachi.jp
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