Water, Water Everywhere

by Kido Hirotaka

ビールを醸造するには、常に大量の水が必要となる為、古くからビール醸造で有名になった地域は、ホップや麦が育つ地域と言う条件の他に、近くに湖や川が流れているなど、質の良い水を手軽に取得できる地域だったと言います。

ビールは、そのほとんどが水で出来ている為、水がビールの味に与える影響は大きく、その土地の水質によって出来上がるビールの味が大きく左右されるのです。その土地の水がその土地で出来たビールの特徴を作いるといっても過言ではないでしょう。

例えば、ペールエールは、英国の中部『バートン・オン・トレント』と言う街で発祥しました。この土地の水はカルシウムやマグネシウムを大量に含有し硫黄を含む硬水です。カルシウムは糖化酵素の働きを助けてモルトの甘みを十分に引き出します。また、硫黄分はホップの苦みを効率よく引き出してくれる為、モルトの甘みをホップの苦みが爽快にしてくれる、とてもバランスがとれたビールになりました。

現代では、醸造したいビールのスタイルに合わせて、ミネラルを取り除いたり、逆に添加するなどして水質を調整しています。軟水の地域でバートン発祥のペールエールを醸造する時、水にミネラルなどを添加して硬水化します。これを『バートナイズ』と呼ぶそうです。ところでこの『軟水』や『硬水』と言った水の表現は、何を表したものなのかご存知でしたか??確かに、飲み比べると、硬水は、硬いと言われれば硬いし、軟水は軟らかく感じますよね。でも、実は、これ『石鹸の泡立ち方』から来ているそうです。

ミネラル含有量の多い水は石鹸の泡が立ちにくいようで〝泡立ちにくい〟という言葉を英語では、〝Hard to lather〟と言います。ここから〝Hard Water(硬水)〟と言われる様になったといいます。反対にミネラル含有量の少ない水を〝Soft Water(軟水)〟といったのでしょう。

生物を構成する物質の70%〜80%を占める『水』。ビールもまた、それを構成する物質のほとんどが『水』です。全ての生命体にとっても、ビールにとっても、水は必要不可欠で、とても重要なものなのですね。

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