秋田の「あくらビール」は販路の拡大も手伝ってこのところクラフトビア好きの間で人気が高まってきているブランド。3月の雪の降る夕暮れ時、僕らは東北での救援活動の合い間をぬってこの醸造所を訪れた。そして彼らが造るビールの美味しさを再確認するためにゴールデンウィークに再度彼らを訪問したのだが、やはりうまかった!
醸造長の長谷川信はビール造りに対する熱意と自信に溢れている人物だが、それは彼が最近取り組んでいるビールの大胆なスタイルにも現れている。一方、彼が以前から造り続けているビールのスタイルからは彼のバックグラウンドが見て取れる。
長谷川はドイツで数ヶ月間醸造技術を学び、帰国後はドイツビールに詳しかったあくらビールの初代醸造技師のもとでさらに技術を磨いた。長谷川が責任者となってからのここ5年間はレシピの改良を続けてきたという。あくらビールで働き始めたのは単にバイトとしてだったというが、なぜここを選んだのか、なぜビールなのか、そのあたりを聞いてみたが彼の答えは「たまたまです!」というものだった。
ここ1年ほど、長谷川は自身が従来培ってきたスタイルとは違う、新しいスタイルを模索してきた。その結果、彼が造るIPAは最近多くの人に注目されるようになり、全国各地のクラフトビア・バーで取り扱いが増えてきている。
「IPAについては3回ほど試作を繰り返し、やっと思うような味になりました。IPAを造り始めた最初の頃はドライホッピングのことも知りませんでしたが、どのくらいのホップを使えばいいのか、いろいろ試してやっと今の味ができました。ドライホッピングに主に使っているのはカスケードホップですがセンテニアルホップも少し使います」。
その他の新しい試みもうまくいっているようだ。「さくら酵母ビール」は独特の風味と絶妙なバランスが両立した素晴らしい出来。「ビスケットヴァイツェン」はフルーティーで程よい甘さと豊かなボディが特徴。長谷川は他にもベルギースタイルのIPAやホワイトエール、そしてアンバーエールも造っていることを教えてくれた。現在最も力を入れているのがエールだという。日本の大手ビールメーカーの主力商品がラガータイプのビールなので彼はエールに注力したいとのこと。この調子では彼がインペリアルスタイルのビールに取り組む日も遠くないかもしれない。
「あくらビール」は秋田市の中心部から遠くないところに位置している。醸造所の2階にあるビアカフェ「あくら」は小さいながらもウッディーなインテリアでどこか懐かしさが漂う、寛げる雰囲気がいい。ビールは中(300ml)と大(500ml)があるが、おすすめは飲み放題。一方、レストラン「プラッツ」は1階100席、2階54席のキャパがありパーティーにも対応している。あくらビールには季節限定ビールなど何種類かのビールがセットになった商品もあるので、次の目的地に向かう電車の車中でゆっくり味わおう。
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