小西酒造は2010年で創業460周年を迎えた。歴史の重みについて尋ねると小西は「大きな責任を感じますが、仕事をするうえで特に毎日意識しているわけではありません。もっと多くの人にビールの魅力について知ってもらいたいという思いで仕事をしています」とにこやかに答えてくれた。小西が言うビールとはもちろんベルギービールに限らず、手造りで丁寧に造られた地ビール全般を指している。小西酒造は同社の核となる清酒「白雪」の名前を付けた「白雪ビール」のシリーズを出している。同社はベルギービールの輸入にも力を入れているが、ベルギービールについて小西はデュベル社のミシェル・モルトガット社長が本誌のインタビューで語っていた事と同じ考えを持っている。それは、ベルギービールの魅力が広く日本に紹介されることで日本の地ビールに対する関心も高まる、ということ。「大局的にみれば今後も地ビールがビール全体の主流になることは無いかもしれませんが、ニッチな市場とはいっても今後ますますファンを増やし、確実に成長していく市場だと思います。アメリカでは地ビールがとても大きな市場になっていますが、日本でも同じことが起こる可能性があると思います」。
小西はモルトガットと仕事上の付き合いが深く、メールのやり取りも頻繁に行っているという。モルトガットは「日本では小西がベルギービールの立役者。彼がすべて仕切っている」と言っていたが、小西は「どんなビールを輸入するかということは我が社にとってとても重要なことです。ベルギービールには色々な種類がありますからそれぞれが持つ風味について我々は慎重に吟味をしなければなりません。デュベル社はビールの風味についてとてもシビアな考え方を持っており、我が社の考え方とよく似たところがあります」と説明してくれた。しかし風味がビールの価値の全てというわけではなく、料理との相性も重要だ。兵庫県伊丹市にある小西酒造の直営ブルワリーレストラン「長寿蔵」ではどんな料理にどんな風味の日本酒やビールを組み合わせるかということにとても気を使っている。
ベルギービールを日本に広めた功績が本国ベルギーでも認められ、1996年にベルギー大国より「王冠勲章オフィシエ章」を、1999年にはベルギー醸造組合より「ベルギービールの騎士」(日本人として初)を授与された。小西は確かにビールの騎士である。しかし長年にわたりベルギービールの魅力を日本に紹介し続けると同時に日本の良質な地ビールに対する評価の基礎をも築き上げてきた彼の大きな功績は、日本風にいえば騎士というより「麦酒奉行」と呼ばれるに相応しい。
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