Hakkaisan: Brewing in the Snowy Quiet

歴史ある一流の酒造メーカーならビールを造っても良質のものができると一般的には考えられる。原料の選別、衛生管理、実際の醸造工程についても日本酒とビールは共通点が多いからである。彼らはアルコールの魅力も知り尽くしている。

1990年代に酒税法が改正されビール製造のライセンスを取るための最低製造量のハードルが下げられたことにより、多くの酒造メーカーがビール製造のライセンス取得に動いた。彼らは元々アルコール飲料業界には精通していたわけで条件的に有利だったし、ビールも日本酒も醸造酒ということでは共通、という意味でも酒造メーカーはビール造りに参入しやすかった。

八海醸造もこの規制緩和の波に乗った酒造メーカーの一つである。質の良いビールを造ることに深い喜びと目的意識を感じている同社は崇高な理念を持ってビール造りを行なっている。清酒「八海山」でよく知られている同社であるが、現在はアルト、ピルスナー、そして素晴らしいコクと香りが自慢のヴァイツェンの製造も行なっている。八海山がある新潟が寒い季節を迎える10月から3月に掛けてはアルトに代えて、ローストされた麦芽が香るポーターが造られる。

日本酒の場合と同様、同社はビール造りにあたって料理との相性をよく考えている。醸造スタッフの細川正弘は「バーレーワインやインペリアルスタウトを造りたい気持ちはあるのですが、あまりクセの強いビールはお米を中心としたこのあたりの食文化に合わないのです」と説明してくれた。学校では建築を学んでいた彼はビールが大好きだった。卒業当時、周囲に地ビールの醸造所は無かったので仕方なく普通のサラリーマンになったが、その後間もなく酒税法が改正されて地ビール業界が注目されたことから、醸造を学べる教育学科がある東京農大に入学する決意をしたという。醸造主任を務める角本琢磨は八海醸造に入社して清酒の醸造に携わっていたがその後ビール部門に移った。本場のビールを知るためにドイツ、ベルギーを旅行したり、その後も時間を掛けてビール醸造を学び、知識と技術を習得した。有能なスタッフ、素晴らしい設備にも恵まれ、いい環境の中で角本は仕事が出来ているという。

ビール工場棟がある八海山泉ヴィレッジには婚礼などに使われる美しい木造のイベントホールや、窯焼きピッツァが自慢のイタリアンレストランなどがあり、ここでももちろん造りたてのビールが味わえる。泉ヴィレッジは人里から離れた田舎に立地し、特に冬場は閑静なところである。六日町駅からタクシーで20分(2500円程度)。

登山やスキーの対象としての八海山周辺には魅力的なスポットが多い。八海山スキー場へは上越新幹線・浦佐駅からタクシーで。スキーヤー達の多くは浦佐駅の手前の越後湯沢駅で下車していく。国内有数のスキー場である苗場スキー場があるからだ。苗場は標高が高いので確かに雪質もいい。しかし八海山スキー場のほうがワイルドな趣に溢れていて上級・中級のボーダー、スキーヤーに人気が高い。また、何といっても斜面の途中にあるレストランで八海山ビールが飲めるのがいい。何人かで行くならピッチャーで頼もう。ランチを終えてほろ酔い気分でのんびり楽しむボーディングは最高だ。 (八海山周辺の宿泊施設は限られているので、越後湯沢駅周辺で宿を取ることを勧める)

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