Beer Roundup (Autumn 2018)



読者の皆様、こんにちは。今年の夏は、十分に水分補給をしただろうか(水、麦芽、酵母とホップでつくられた飲み物で)? 秋に進む前に、少し立ち止まって、ここ3か月間に行われたビールのイベントについて振り返ってみよう。

イベントが目白押しだった、夏のフェスティバルシーズンも終わりを迎えた。純粋なビアフェスだけでなく、世界的に有名な、フジロックなどのミュージックフェスティバルも幕を閉じた。これらのイベントで、国内のクラフトブルワーやインポーターがビールを注いでいるのを見て、またしても希望を抱いた。ライブ音楽とクラフトビールの組み合わせは間違いない。このペアリングが見られるようになったのはごく最近のことで、今後もこの流れが続くことを願っている。ついでに言えば、フェスティバルの規模に関わらず、クラフトビールの提供があってもいいのではないだろうか? ところが、残念なことに、多くのフェスティバルでは、大企業がビールを提供する権利を買うので、地元のクラフトブルワーは締め出されてしまうのだ。しかし、読者の皆は知っているだろうか? 主催者側の中には、クラフトビールを出したいけれど、大企業からの支払われる大金を考えると、リスクを取ることができないのだと教えてくれた人もいる。コンサートやフェスティバルに行くのが好きな人は、主催者側に、地元のビールがあれば、もっと飲むと伝えてみてはいかがだろう。大手のビールでも別に良いのだが、もっと選択肢があるべきだと考えている。時として、消費者が声を上げることが重要だったりする。

ジャズ界の伝説的アーティスト、フランク・ザッパ。彼の名言は当コラムでも紹介したが、彼の素晴らしい金言をもう一度取り上げたいと思う。「ビールと航空会社がなければ真の国家とはいえません。サッカーチームのようなものや、核兵器があれば、さらに国らしくなりますが、少なくともビールは必須です」。驚くほどではないかもしれないが、ビールで有名な国の大使館は、自国の商品や新商品を紹介するために、ビールをテーマにしたイベントを開く。先日、アイルランドの大使館公邸で行われた、アイルランド人が代表を務める「巨人の会社」の発表イベントに本誌も出席した。同社はアイルランド文化を広めることを目指している。イベントで紹介されたのは、同社が輸入を開始した新しいビールのブランドだ。ギネスやマーフィーズは誰もが知っているが、北アイルランドのホワイトウォーター・ブルーイング・カンパニーをはじめとして、アイルランドではクラフトビールも盛んにつくられている。ホワイトウォーターの社長バーナード・スローンも来日し、素晴らしいアイリッシュ料理と音楽とともに、「ベルファストラガー」や「マギーズ・リープIPA」をPRしていた。

さらに、ビールに関しては知名度が高くない国も、日本国内でその存在感を増している。例としては、北欧・バルト三国のクラフト商品を輸入販売するJLS Tradingから連絡をもらったり、また、小規模の輸入業務を始めようとしているポーランド、スペインやチリなどのビール醸造業者も知っている状況だ。日本の市場は、「ビール国連」ともいうべき存在になるのかもしれない。

ビール国連の参加国の一つ、デンマークは世界有数の巨大ビール企業、カールスバーググループの本拠地だ。同社は、6缶パックのビールを缶同士直接のり付けし、販売を開始した。1缶欲しいときは簡単に外せる。この仕様変更で、これまで使用されてきたプラスチックの留め具や包装材の量が減り、環境負荷が低減される。同社によると、年間1200トンのプラスチック(6000万枚のビニール袋相当量)を削減できるという。セースト・ハートCEOは、カールスバーグを、世界で最も環境に優しいビール会社にしたいと語った。大企業を非難する人も多くいるだろうが、このような動きは応援せずにはいられない。

親愛なる読者の皆様へ、あなたは死にます。最近の研究によれば、アルコールを摂取する人は早く死ぬそうだ。本誌を読んでいる人ならば、おそらくこれに当てはまるだろう。この議論は以前から耳にしているが、数年ごとに主張が変わるようだ。まず、アルコールの適度な摂取は健康に良いとされ、その次には反対のことが発表される。先日、英医学誌『ランセット』に掲載された論文によると、この研究は、世界各地の研究者数百人で構成された、これまでもっとも包括的なものだとしている。飲酒にいくらかの利点はあるかもしれないが、アルコール摂取によって高まるリスクを相殺するほどではないと結論付けた。50歳以下の死因のトップはというと……結核、交通事故、そして自殺だ。

想像に難くないが、この研究結果に対しての否定的な意見はすぐさま示された。ケンブリッジ大学のデイヴィッド・シュピーゲルホルター教授は、CNNの記事中で、「自動車運転の安全なレベルはありませんが、政府は運転を避けるようには喚起しません。考えてみれば、生活の安全レベルもないですが、生きること自体を節制するよう言う人もいません」と述べた。自動運転車の潜在的安全性については指摘できるかもしれないが、彼が言いたいことはこれだ――多くの人にとっては、適度な飲酒がもたらす楽しみは、アルコール摂取の危険性を上回る。



ビールと研究といえば、カリフォルニア州スタンフォード大学の考古学教授リ・リュー教授とその研究チームは、ビールは農学的な努力によってもたらされたものではないかもしれない、との研究結果を発表した。反対に、イスラエルの洞窟での発見により、原始的な醸造技術は、近東における穀物栽培よりも数千年もさかのぼることが明らかになった。今回の発見は、60年前に考古学者たちが最初に立てた仮説を裏づけるものだ。言い換えれば、ビールのために、人々は穀物を組織的に栽培しようとした。より広い意味で考ると、ビールは文化を促進し、文明が進み、科学を確立させ、私達がビールを飲むべきでないという研究を出したいうことだ。

訳がわからなくても無理はない。もし誰かと話したい気分なら、仲間と集まって、このような話題を話せるブルーパブが近場にあることを願う。

しかし、バーテンダーは人間か、はたまたロボットか? 米国では、アリゾナ州の上院議員ジェフ・フレークが、「ビアボットやビアバーテンダーの開発」に特定の資金が投入されないよう規定した法案を米国連邦議会に提出した。この修正案は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生研究家たちが、政府からの資金を前述のロボット制作に充てて、実演を行ったことを受けて起案されたものだ。実際は、ロボット同士で意思疎通が図れずとも、協業できるようなアルゴリズムを開発することに焦点を絞った試みだった。これは、産業界、小売や日常生活(自動運転など)に密接な関係がある。災害時にはとても有効だ。研究者たちは、わかりやすい環境下でアルゴリズムを発表しただけだが、議員にはそれがわからなかったようだ。学生なら、ビアボットを作りたいはずだ! または命を救うことも……ありがとう、学生たち!



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