German Kellerbier (and Landbier, Zwicklbier, and Ungespundet)

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今回は、ケラービアという、日本ではあまり知られていない、様式的なビアスタイルを取り上げたいと思う。無ろ過で、下面発酵のラガーである。主にドイツのフランケン地方やバイエルンのバンベルク周辺が発症のこのビールは、同じくドイツのバイエルン州やオーストリアでも広くつくられている。このカテゴリーは、レシピというよりも、ビールの貯蔵や提供の方法を示している。筆者のお気に入りのビアスタイルの一つなので、日本のブルワーたちがつくるようになってくれたり、輸入代理店が仕入れるようになってくれたりすることに期待を込めて、ややひいき目に書くことにする。

タイトルに挙げた四つの名前は、それぞれ一つひとつのビアスタイルとして扱われることが多いが、本来の意味はそれぞれかなり違っている。ケラービアは、ブルワリーの中にある「ケラー」で貯蔵と提供をされるようにつくられたビールのことである。フランケン地方では、ケラーは単に、ビールを長期熟成させるセラーを意味するわけではなく、たいていはブルワリーのビアガーデンのことを言う。ラントビアは「地元のビール」もしくは地域のビールを意味し、日本語の「地ビール」に非常に似ている。地元向けに、地域の食に合うようにつくられている。ツヴィッケルは、発酵タンクに付けられた蛇口の意味で、ブルワーはそこからビールを注いで試飲できる。つまり、タンクから直出しで提供するという意味を含んでいる。ウンゲシュプンデトは「栓をしていない」と訳すことができ、二次発酵の際に木樽は密閉されないことを意味する。これらはすべて文字通りの意味であり、現実はすべてその通りになっているとは限らない。

まず、ケラービアというビアスタイルの基礎的な在り方に触れ、その後に、前述のほかの三つの名前がどのようにケラービアとは違う何かを指しているのかについて、言及する。フランケンのケラービアは一般的に若く、無ろ過で熱処理をしないラガーであり、金色から淡い琥珀色をしている。麦芽の配合具合はヘレスとメルツェンの間に当たり、アルコール度数はたいてい4.8から5.5%。麦芽の特徴が豊かで、パンやトーストのような香ばしさがありつつ、甘すぎることはない。香辛料やハーブのような香りホップの特徴ははっきりと出ていて、後味もはっきりとした苦味と香辛料らしさが出ている。酵母を入れて長期熟成させるので、発酵がよく進み、後味はすっきりとしている。味わい豊かでバランスが取れた飲み応えのあるビールである。ピルスナーよりは麦芽の特徴がよく出ていてボディーが強く、ヘスよりは苦い。ピルスナーとヘレスのいいとこ取りをしていると言う人もいるかもしれない。見た目は濁っていて、伝統的には陶製のマグに提供されていた。しかしその提供方法で美味しくなるとは思われていたわけではなかった。

Bamberg, Germany Bamberg, Germany

ケラービアはミュンヘン周辺の南バイエルン発祥で、色は明るく、ホップの特徴は薄く、基本的にはミュンヒナーヘレスの無ろ過バージョンである。ドイツもしくはオーストリア発祥のビン詰めのツヴィッケルビアは、多くは金色をしていて、フランケンケラービアと比べるとホップの特徴がない。フランケンラントビアはやや濃色であるものが多く、無ろ過でホップがよくきいたドゥンケルといった感じだ。

現在、伝統的なケラービアに当てはまる良いビールを日本で見つけることは難しい。輸送に向かないのである。理想的には木樽から提供されるべきであり、二次発酵中のビールから出てくる二酸化炭素を外に逃がすために、その木樽はたいてい栓の穴を開けたままにしている。この結果、発泡は極度に弱くなり、泡はあまり出来上がらない。この発泡の弱さのおかげで、数リットル飲んでもお腹いっぱいにならないほど、極度に杯が進む。広く流通している最高レベルのボトルのケラービアは、バンベルクやその近くのブッテンハイムにある、ゲオルゲンブロイ、マールズ、レーベンブロイブッテンハイムというブルワリーでつくられている。ミュンヘン式のケラービアの方が日本で見つけやすい。特に、全国各地で開催されているオクトーバーフェストではそうである。安くはないが、アイインガーのケラービア、ホフブロイのミュンヒナーゾマー、ハッカープショールの1417を探してみよう。

ケラービアは日本のクラフトブルワーのなかで人気があるスタイルではない。おそらく、最高なのはベアレンのクラシックの無ろ過バージョンである。この銘柄は普通はブルワリーでのイベントでしか飲めないので、飲むためには盛岡に行く必要がある。ベアードは、ケラービアというよりは無ろ過ピルスナーといった趣だが、ケラーピルスという銘柄をつくっている。ほかに近い銘柄には、富士桜高原麦酒のミュンヘンラガーがあり、こちらもケラービアではなく無ろ過のアンバーラガーである。ホップの強い特徴がなくやや甘味が強いが、多くの面がフランケンスタイルによく当てはまっている。小樽ビールのブルワリーを訪れると、タンクから提供される新鮮なツヴィッケルビアを試飲できる。ケラービアのレシピが用いられているわけではないが、若くて無ろ過のラガーだ。ほかにも、日本クラフトブルワリーの無ろ過のビールは、ケラービアに近い特徴を持っている。特に優れているのは、ハーヴェスト・ムーン、明石ビール、門司港地ビール。誰かが本物をつくってくれるまで、以上のような「近い」銘柄で我慢するか、フランケンに飛んで行かなければならない。

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


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