Beer Roundup (Autumn 2014)

日本各地のフェスティバル開催地では空のカップとビールゾンビが散乱している。ブルワー達は最終ヘリコプターで無事脱出。夏のビールフェスティバルシーズン、別名アルコール・アポカリプスが終焉を迎えた。皆様が楽しまれたことを願う。

たった数年前まで我々は、日本で行われるすべてのクラフトビールフェスティバルに参加していた。今となっては信じられない。フェスティバルの数は飛躍的に上昇し、それら全てに参加することは今では不可能だ。この成長は大局的には良いことだが、率直に述べるなら、存在理由が不明なイベントもいくつかある。開催の動機は何だろうか? 我々は信頼できる本物のイベントに戻りつつある。
とりわけ我々の関心を集めた初開催のイベントが二つある。神奈川県の「大船ビアフェスティバル2014」と、長野県の「クラフトビールフェスティバルin松本」だ。前者は、規模は小さいものの、巨大な観音のある大船観音寺で行われ、ナイトクラブのようにライトアップされる。眺めてみる。大船駅という人口の多い神奈川県の主要な乗換駅にほど近いため、好評を博するだろうと推測していた。観音様もライトアップショーが気に入ったようだ。一方、クラフトビールフェスティバルin松本は、松本城で行われた。これ以上の説明は必要だろうか? 城マニアか、黒沢明の映画を見すぎたかのどちらかだが、しかしクールな会場だ。ビア忍者が大量のビールを盗み出した。
 我々は今年で開催2年目を迎える「サッポロクラフトビアフェスティバル」に参加するため、遠く北海道を訪れることにした。梅雨が終わる7月に日本の他の地域がどろどろに暑いことを考えると、この北の大地を訪れるのはかなり嬉しい休暇旅行となった。北部の一流ブルワリーがサーブし、フレンドリーでローカルな雰囲気を持つこのフェスティバルは、ぜひとも訪れる価値があるし、成長してほしいと思う。もしかしたら酷暑に戻りたくない難民が増え、札幌の人口も増加するかもしれない。

現在、生演奏やその他のエンターテイメントをフィーチャーした新しいフェスティバルがあちこちで開催されるようになり、日本の主要都市で行われる日本地ビール協会主催の「ビアフェス」シリーズは普通のことのように感じられ始めている。しかし、「ビアフェス名古屋2014」、「ビアフェス大阪2014」、そして「ビアフェス横浜2014」こそは成功を収めたイベントといってよいだろう。近年のチケット料金の値上がりにもかかわらず、来場客数も増えている。依然、多くの人が無駄のない飲み放題という方式を好んでいるようだ。確かにこの方法ではゲストがよりビールに集中できる。ビアフェスシリーズ最大かつ最高のビアフェス横浜では、「ビールツアー」が催され、ゲストが多数の醸造所のブースを巡り、テイスティングと説明を受けた。これは素晴らしいアイデアだと思う。教育はビールの理解を深める。ビールがビールの理解を深める。

多くの偉大な先駆的クラフトビールフェスティバルの足跡に従い、東京都のすみだリバーサイドホールで行われる「ニッポンクラフトビアフェスティバル」もまた、その毎年恒例のイベントでセミナーを開いた。本イベントと、さらには300人の男女が集まる「ビアコン」。下降し続ける日本の出生率の上昇転換に一石を投じているだろう。

「新潟クラフトビールの陣」も再び、スワンレイク本社を擁する新潟市の屋根つきのアーケード商店街で開催された。チケット制の本イベントでは、ゲストはビールだけでなく、フードやアロマテラピーセッションといったものにもチケットを交換できる。その賢明なアイデアは無限の可能性を秘めている。

我々のお気に入りの一つ「タナバタビアフェスタトヤマ」は、屋根つきの野外会場、たくさんのフード、椅子があってリラックスできる雰囲気、そして飛騨高山麦酒といった普段フェスティバルではお目にかかることのできないような醸造所が参加していることなど、我々がこのイベントに関して好きな点を全て網羅していた。富士桜高原麦酒が参加者の人気投票で決まる「My Best Brewery」賞を再び受賞した。受賞理由が、醸造長の宮下天通が世界に通用するドイツスタイルビールをつくるからだけではないことは誰もが知っている。彼が常にベストドレッサーであることも大きな理由なのだ。

日本一流のペアリングイベント、「ルボーマリアージュ2014」は、ハイクラスな八芳園で行われ、世界各国のゲストが参加した。参加者のほとんどが、その週後半に行われた「インターナショナルクラフトビアコンファレンス」に参加するため日本を訪れていた。我々のシニアライターである熊谷陣屋による本イベントのベストペアリングは「帆立貝の燻製に山葵酢味噌と横浜ビールのヴァイツェン」。その理由を彼はこう説明する。「燻製の香りとヴァイツェンの香りの一部は同じ物質由来なので、お互いの香ばしさが高まり合う。山葵のスパイシーな香りはこれまたヴァイツェンのスパイシーさと高まり合い、酢味噌の酸味はヴァイツェンの酸味を強まり合い、この組み合わせの豊かになりすぎる味わいを引き締めていた」

繰り返すが、フェスティバルは上記で述べたものだけではない。他にも良いイベントは確かにある。そして今後数ヶ月のうちに開催されるものもまだまだある。アップデートは本誌Facebookページをチェックされたい。

太平洋を越えてアメリカでは、シエラネバダブルーイングが、7都市を巡るビアフェスティバル「Beer Camp Across America」でビールに関する話題を独占していた。まさしく、ツアーバス群で構成されるカーニバルのようだ。開催目的の一つは、「史上最大のクラフトビールの祭典」となること。総来場客数という点でみれば、その目的はおそらく達成されただろう。キャンプツアーの鍵となる特徴は、度肝を抜かれるほどのビールの数。「キャンプ」が訪れた都市で、シエラネバダはその周辺地域の何百ものブルワリーとともにサーブした。アメリカ各地の多くのビールファンにとって、しかしその最大の魅力は、アメリカ最高峰のブルワリー達とコラボレーションした12種類のシエラネバダのビールセットだろう。ケースは選ばれた数都市で販売され、瞬く間に完売した。

『ジャパン・ビア・タイムズ』の発行人ライ・ベヴィルは、貴重な本ケース1箱を手に入れる機会に恵まれ、シエラネバダのトルピードルームですべてのビールをフレッシュな樽生で味わうことができた。彼いわく、「これらのビールは、コラボレーションビールたるものがどうあるべきかの最たる例だ。近年、コラボレーションビールは一般的なものになってきており、それは必ずしも悪いことではないものの、多くはマーケティングだけを目的としているように思われる。実際のコラボ醸造はいったいどこだ? このビアキャンプのビールを飲めば、ブルワー達が知識を交換し、新しい何か、つまり彼らの強みを体現するビールをつくろうとしていることが感じられるだろう」 
いつの日か、日本各地を巡るビアキャンプはいかがだろう? 皆で実現を願おう。

同時に、シエラネバダのトルピードルームでは、カリフォルニア大学デービス校で醸造教育過程を率いる世界的に有名なチャーリー・バムフォース教授を迎えて講義が行われた。同校は世界でも一流の醸造学校で、バムフォースは非常に人気のある教授だ。ウェイティングリストに記入し、彼の講義の受講を何年も待っている学生がいるほど。理由は以下の通り。豊富な知識を持ち、魅力的で陽気なのだ。日本の偉大な醸造学の先生は誰になるだろう? まだその席は空いている。

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