by Mark Meli
セゾンはベルギーのフランス語圏であるワロン地域の農家で造られるエール。セゾンとは“季節”を意味するフランス語で、元々は夏季に飲むために冬季に醸造され、数カ月間寝かされた後、夏の農作業中に農民たちが喉の渇きを癒すために飲んでいたという。
色はゴールドあるいはアンバーで、グラスに注ぐと豊かなヘッドと強いカーボネーションが特徴。フルーティーなモルトのキャラクターを持つ爽やかなライトビールが本来のセゾンである。現在造られているものの多くはピルスナーモルトを用いており、小麦を使用する場合もある。かつてはスペルト小麦、ソバの実、オーツ麦なども加えることが普通に行われ、このスタイルは今でも一部に残っている。かつてはアルコール度数の低いものが多かったが現在はアルコール度数5〜7%のものが主流になっており、ホップが効いていて大変ドライな味わいのものが多い。はっきりしたホップフレーバーと苦みの効いたフィニッシュが特徴で、喉の渇きを癒す目的で造られるビールなので、甘みは全く感じられない。発酵にワイルドイーストを使うことから、いかにも農家で造られたような独特の土臭さを持つものも多いが、このキャラクターはランビックほど顕著ではない。
セゾンの代名詞ともいえるのが「セゾン・デュポン」で、日本でも広く流通している。マイケル・ジャクソンの著作を通じ、他のセゾンをジャッジする際の基準となるビールとして世界中にその名を知られるようになった。スパイシーで、ホップが強烈に効いており、バランスも完璧で爽快感溢れる味わい。ベルギー料理のみならず日本料理にもよく合う。まだ飲んだことが無いという人は是非飲んでみよう。
日本で造られるセゾンも増えてきているようだが、その種類はまだまだ少ない。ベアードの「セゾンさゆり」は最も早くから造られているもので、品質も本格的。「山伏・壱・セゾンワン」は自家栽培の酒米「美山錦」を用いており、これはもちろん本家ベルギーのセゾンにはないものだが、地元産の穀類を使うというスタイルは本来のベルギーの農家の精神を受け継いでいる。
特にアメリカのクラフトブルワーの間では本家ベルギーの標準的なセゾンよりも酸味を効かせた素朴な味わいのものを造ろうという動きがみられる。これらの中にはワイルドイーストのみを使っているものもあり、これはむしろ本来のセゾンのスタイルに近い。バーモント州のヒル・ファームステッド・ブルワリーのセゾンはその代表例で、同社のセゾンは他地域にはほとんど流通していないが世界的に大変評価が高く、酸味の効いた素朴な味わいが魅力である。日本国内では山伏の樽熟成バージョン(オークエイジ)が最もこのスタイルに近いと思われる。
気温も上がり、花が咲き乱れるこの季節、ゆったりした時間を過ごすのにセゾンほどぴったりなビールはない。
All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.
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