日本ではこれまで「クラフトビア・バー」と「ベルギービール・バー」を区別する人も多かったが、今この二つの言葉は区別が難しくなってきている。ベルギービール専門店としてスタートした後に国産のクラフトビアも扱うようになった店も多いし、国産クラフトビア中心だった店が新たにベルギービールを扱うようになったという例はさらに多い。大阪・梅田にあるCraft Beer Baseも国内外のクラフトビアを取り揃えていて、美味しいビールなら何でも!ということのようだ。
このような傾向は当然の成り行きとも言える。消費者の志向は国内外のプレミアムビアとクラフトビアに向かっているし、日本で飲まれているベルギービールの大部分は基本的にクラフトビアだからだ。ベルギーのブルワリーの多くは小規模な個人経営で成り立っており、ブルワーたちは品質を下げてまでコストの削減を考えることには興味が無い。
デュベル社のミシェル・モルトガット社長は以前本誌のインタビューの中で、アメリカでクラフトビアが広がりを見せ始めた頃にベルギービールがアメリカに大きな刺激を与え、アメリカのクラフトビア市場の拡大に大きな役割を果たした、という事実を指摘していた。そして今、日本でも同様のことが起こりつつあるという。ベルギービールのお陰で、少々値は張るが間違いなく美味しいプレミアムビアを志向する消費者が増えてきている。ベルギービールの美味しさを知り、それが国産クラフトビアに対する興味につながる、という流れだ。
本誌がこれまでにインタビューを行った国内のブルワーたちの中でもベルギービールにインスパイアされた製品を造っている、というブルワーは多い。ヒューガルデンなどのベルギービールにインスパイアされた日本のクラフトビアには素晴らしいものがいくつかあるが、昨年のワールドビアカップで金賞を受賞した「箕面ビールゆずホ和イト」もその一つ。一方、スワンレイクの本田、横浜ビールの五條、厚木ビールの望月はベルジャン・イーストを大変興味深い方法で用い、ビール造りを行なっている。
本誌は今後毎号、ベルギービールのためのページを組んでゆく予定だ。何世紀にもわたるベルギービールの長い歴史と、そこから生み出される素晴らしいビールについて知識を深めるのはとても有意義なこと。まず今号ではベルギービールに密接な関係を持つ日本国内の三氏をご紹介しよう。彼らの力でさらに日本に美味しいビールが広まってゆくことだろう。そしてそれは私たちみんなにとって、とても有難いことである。
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