ホップは、熱を加えると“苦み”が出て、香りは飛んでしまいます。反対に熱を加えないと苦みは出ませんが、ビールに華や香りを与えます。
ビール醸造では、このホップの性質を利用して、ビールに苦みと香りを付けます。
麦汁を煮沸する工程でホップは投入されますが、煮沸の初期段階で投入されるホップは、苦み付けの目的で。煮沸の最終段階で投入されるホップは、香りづけの目的で投入します。
ドライホッピングとは、煮沸段階で投入されるホップのどちらでも無く、ある程度発酵も終わり、ほぼ完成に近づいたビールに直接ホップを投入する、と言うテクニックです。これをすることにより、熱が加わらない、とてもフレッシュなホップの香りがビールに付きます。
ドライホッピングの方法は、簡単。通常はティーバッグの様な袋にホール状のホップを詰めて、ビールに投入し約1週間そのままにして、ビールにホップの香りが移るのを待ちます。ですが、アメリカにはとてもユニークな方法でドライホッピングを行っているブルワリーもあります。アメリカ、カリフォルニアのブルワリー“シェラネバダブルーイング”です。ここでは、
“トーピード エクストラIPA”というIPAが造られています。
トーピードは、『魚雷』の意味で、その名の通り、魚雷の様な容器にホップを詰め込んで、ビールが貯蔵されているタンクと直結し、そのホップの入ったトーピードにビールを循環させます。要するに通常は、ホップをビールの中に入れるのに対して、トーピードは、ホップの中をビールが通ってドライホッピングされます。
色々な方法でドライホッピングを試したそうですが、この方法でドライホッピングした方が、より純粋なホップの香りが付くようです。
ドライホッピングと言えば、イギリスの伝統的なカスクコンディションエールを忘れてはいけません。カスクコンディションエールは、一次発酵が終わったビールが、醸造所からパブに届き、そこで、パブのセラーマンによってドライホッピングされます。
その為、同じビールでもセラーマンの感覚次第でそれぞれのパブで違ったコンディションになります。セラーマンの腕が物を言います。
ベアードビールの定番ビール『駿河ベイIIPA』ではダブルドライホッピングを、そして季節限定ビールで、トリプルドライホッピングを採用しています。これは、発酵の終わったビールにドライホッピングし、約1週間後、別のタンクに移送し、その中で再度ドライホッピングを行うと言うやり方です。1回醸造で大量のホップと時間を費やします。
最近では、ドイツのシュナイダー社とアメリカブルックリンブルワリーのコラボで、ドライホッピングをしたヴァイツェンなんかも登場し話題となりました。
ビールをより華やかにしてくれる、ドライホッピングは、単純な方法ながら、ブルワー達の創意工夫で、日々変化を遂げています。
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