The Porter

マーク・メリー



「ポーター」はビールのスタイルの一種で、色は暗褐色〜黒色、通常は上面発酵タイプでアルコール度数は5.0〜6.5%、甘いチョコレートモルトの香りとホップの苦み、ロースト麦芽の芳香のバランスが取れたビール。元々ホップは苦み目的で使われてきたものだが、今日では必ずしもそうではなく、アロマ目的で使われることも多い。

ポーターは1700年代初頭にロンドンで人気のビールとなった。ポーターという名称の由来は、当時テムズ川で荷役人(ポーター)として働いていた労働者たちが好んで飲んでいたことによる。その後100年近くの間、イギリスで最も人気のビールとなり、古くなった黒ビールと新しくて軽い口当たりのマイルドエールを混合したものがポーターとして飲まれていたこともある。ポーターの人気は海外にも広がり、アイルランドのギネスや、バルト海沿岸で造られる下面発酵でアルコール度数の高いバルチックポーターにも影響を与えた。

ポーターとスタウトをはっきりと区別して定義することは難しい。アルコール度数7%を超える強いポーターを意味する「スタウトポーター」という呼称も存在した。今日では真っ黒な色を生み出すために焦がした大麦を使うのがスタウトとされている。スタウトは焦げたような、エスプレッソのような香りがあるが、ポーターにはそのような香りはない。また、ポーターはスタウトよりもライトボディであることが普通だ。

現在日本で入手可能な正統派ポーターの好例がサミュエルスミスとフラーズである。暗褐色で甘く、焦げ臭くは無いが程よいロースト麦芽の香りが楽しめる。日本にも美味しいポーターがいくつかあるので紹介しよう。サンクトガーレンの「ブラウンポーター」は昔ロンドンで造られていたポーターを彷彿とさせる甘い香りを持った茶褐色のポーター。スワンレイクのポーターは色が濃く、フルーティーな仕上がりで、海外でも高く評価されている。ヤッホー・ブルーイングの「東京ブラック」はアメリカの影響を感じさせるはっきりとした柑橘系のホップアロマを持ち、樽生だけでなく缶バージョンもあるのがとてもいい。ベアードの「黒船ポーター」はモルトのクリーミーな甘さとコーヒーのような香ばしさのバランスが素晴らしい。麦雑穀工房の「山椒ポーター」は山椒のピリッとした刺激とチョコレートモルトの甘みのバランスが絶妙。

ポーターの味は夏の暑い日には不向きだが、秋のちょっとひんやりした清々しい空気の中ではとても美味しいものだ。冷やさず室温で飲む強めのポーターは冬の夜にコタツに入って楽しむと最高にうまい。黒ビールの中でも比較的取っ付きやすく、風味も豊かでありながらとても飲みやすいのがポーターの魅力といえるだろう。

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


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