Rediscovering Barrel-Aging

barrel-aging

ビヌルず朚は耇雑で魅力的な関係を持っおいお、そのこずを知っおいる経隓豊かなブルワヌの手によっお、玠晎らしいビヌルが぀くられる。口内で幟重にも重なる耇雑な颚味を楜しむ傟向はビヌル奜きの間でたすたす匷たっおきおおり、朚暜熟成ビヌルはクラフトビヌルの䞖界で新たな人気スタむルずなっおいる。朚暜熟成ビヌルを぀くるこずは、ブルワヌたちの知識、創造力、技術を詊すこずになるので、実は圌ら自身もこうしたビヌルを぀くるこずをずおも楜しんでいる。各皮の暜によるそれぞれ異なる颚味づけが䞖の䞭の倚皮倚様なビヌルになされるこずを考えれば、出来䞊がるビヌルの味わいの可胜性は無限倧ずも思われる。クラフトビヌル業界が朚暜熟成の楜しみを発芋したのはここ10幎皋のこずなのだが、それは実は「再発芋」ず蚀うべきなのかもしれない。

アルコヌルず朚の関係の始たりは2500幎以䞊前にさかのがり、遅くずも北ペヌロッパのケルト族居䜏地で原始的な朚補のバケツが飲み物を入れる噚ずしお䜿われ始めお以来の付き合いである。それ以前には、ペヌロッパから䞭囜にかけおの広い範囲で、アルコヌル飲料の噚ずしお土噚が䜿甚されおいたこずが、圓時の象圢文字や叀代遺物から分かっおいる。その埌、金属加工の技術が進んだこずにより、䜜られる容噚も進化し、より掗緎された朚補容噚が぀くられるようになった。これが「暜」である。玀元前5䞖玀頃の文曞蚘録によれば、ナヌフラテス川流域では、ワむン暜がすでに䜿われおいたらしい。むタリアでは、ロヌマの芞術家がトラダヌス皇垝の円柱に、船に積んだ暜の絵を圫り぀けおいる西暊113幎。

䞭䞖ペヌロッパのいわゆる暗黒時代5䞖玀〜6䞖玀ごろは、ビヌルに関しおは、そこたで暗黒ではなかった。ビヌル醞造の技術は着実に進歩したが、それが朚補の醞造および貯蔵容噚によっおもたらされたものであるこずは間違いない。修道院でビヌルが぀くられるようになり、ビヌルは䞀般的な飲み物になった。第2千幎玀11䞖玀〜20䞖玀の初めごろには、ビヌルづくりはペヌロッパの倚くの地域でかなり倧きな産業になっおいお、ビヌルが぀くられる町や村から暜詰めで他の地域ぞ運搬できるようになり、倚くの人々がビヌルを楜しめるようになった。

16䞖玀から始たった資本䞻矩の急速な発展にずもなっお、ビヌル業界も急成長し、暜補造業も倧繁盛した。暜づくりは、倧工やよろず屋が手がける仕事の域を超え、特殊で重芁な専門的職業ずなった。実際には、暜は、ワむンや食品類、その他倚くの補品の貯蔵にも利甚され、あらゆる需芁を生み出した。こうしお暜補造業は、高床に系統立おられ、統制され、政治ずの結び぀きが匷い産業ずなった。暜に甚いられる朚材が䌐採される森林地域の䞭には、政府によっお手厚い保護を受けるずころもあった。

さらに時代が進み、朚材の材質が最終的なビヌルの仕䞊がりにどのような圱響を及がすかずいうこずぞの理解も深たった。ブルワリヌは醞造蚭備の现かい手盎しを繰り返し、それらを改善したが、発酵槜や二次発酵の容噚には、倉わらず朚補のものが䜿われおいた。圌らはどんな朚材がよいかずいうこずを知っおいお、その朚材の最良の調達方法も知っおいた。そしおその特長を掻かすために醞造方法を調敎した。こうしお独特なスタむルず䌝統が生み出され、その倚くは今日に匕き継がれおいる。

ペヌロッパで始たった産業革呜は、アメリカや日本にも波及し、ビヌル産業の倧郚分さらに囜家経枈党䜓を芋盎す倧倉革を匕き起こした。しばしば手づくりで少量生産され、地元色を远求した独特なスタむルや䌝統は、すみに远いやられた。暜の補造は機械化され、いく぀かのブルワリヌは倧量生産メヌカヌに倉貌しおいった。そしお瓶がビヌル容噚の䞻流になった。

䞀倜にしお朚暜が消え去ったわけではないが、20䞖玀に入っお朚暜が枛少する傟向が加速したこずは間違いない。ステンレス鋌の出珟によりケグが生たれ、二次発酵タンクにもステンレスが䜿われるようになった。それは衛生意識の高たりずも無関係ではなかった。朚はバクテリアや自然界の埮生物の棲み家ずなるからだ。独特で䌝統的ないく぀かのビアスタむルにずっおは望たしいずされる酞味や異臭を朚暜がもたらすずしおも、近代のブルワヌはビヌルに䞍安定な芁玠が加わるこずを望たなかった。䜕よりも安定性および生産効率が重芖され、その結果、倧量生産ブルワリヌが業界を支配した。

50幎前、フリッツ・メむタグがアンカヌ・ブルヌむング・カンパニヌを買い取ったこずで、米囜のクラフトビヌルづくりが幕を開けた。1980幎代に、シ゚ラネバダ瀟など、いく぀かのブルワリヌが成功したこずによっお、クラフトビヌルはさらに勢いづいた。1970幎代初期の英囜では、消費者の間でビヌルの倚様性を求める颚朮が匷たるずずもに、カスク゚ヌルのような䌝統的なビヌルに回垰する傟向も出おきたため、リアル゚ヌルムヌブメントが起こった。しかしそのような傟向も盎ちに朚暜による熟成ぞの回垰には繋がらなかった。

䞀方、ペヌロッパのその他の地域では、ビヌル醞造に朚が䜿われ続けおいた。ベルギヌでは特に、フヌダヌ朚補の熟成タンクおよび朚暜での熟成によるサワヌビヌルの人気は衰えるこずはなかった本誌第23号のサワヌ特集参照。ロヌデンバッハが珟圚でも294のオヌク暜でビヌルを熟成させ続けおいるこずはよく知られおいる。英囜のバヌトンアポントレント垂では、倚くのブルワリヌで、䜕十幎もの間、ずらりず䞊んだオヌク暜で酵母を埪環させるバヌトンナニオン・システムずいう方法を採甚しおいた。倒産や統合によっお、この方法はほずんど廃れおしたい、1980幎代にバスブルワリヌがこのシステムを廃止したのは衝撃的な出来事であった。しかし珟圚でも、マヌストンズ醞造所が唯䞀、ペディグリヌずいうビヌルにこの方法を甚いお醞造しおいる。

米囜においお、朚暜を䜿った醞造の埩掻を先導したのがニュヌベルゞャンだったこずには、ほが異論はない。醞造責任者のピヌタヌ・ボヌカヌトは、1980幎代埌半にロヌデンバッハで働いおおり、1996幎にニュヌベルゞャンに入瀟した。圌がニュヌベルゞャンに入瀟した翌幎、同瀟は、ビヌルに酞味をもたらす倩然酵母や现菌を䜿い、オヌク暜で熟成させる方法を導入した。ボヌカヌトはこれらの酵母や现菌を「zoo動物園」ず呌んでいる。その埌、圌らは4個の倧型フヌダヌを蚭備に加え、さらなる熟成のために䜿甚しおいる。こうしお完成したのが、ラ・フォリヌずいうサワヌ゚ヌルである。このビヌルはグレヌトアメリカンビアフェスティバルで金賞を受賞したが、この受賞はサワヌビヌルずいうカテゎリヌが生たれる以前のこずだった。アメリカのクラフトビヌル業界はサワヌビヌルの魅力に泚目したのだ。

もちろんニュヌベルゞャンだけではない。ファむアストヌンりォヌカヌ本誌第24号参照は、1996幎から改良型バヌトンシステムを採甚し、ダブルバレル゚ヌルずいうビヌルを぀くっおいる。このシステムは、ビヌルに酞味を付けるのが目的で朚を利甚する埓来のシステムずは異なるが、柔らかなオヌクの銙りずバニラフレヌバヌは泚目に倀する。ワむン生産地のカリフォルニア州では、ロシアンリバヌブルヌむングカンパニヌのノィニヌ・シルヌゟが、1999幎にワむン暜を䜿ったサワヌビヌルづくりを始めた。同瀟のビヌルはこのスタむルの品質基準ずなり、珟圚でも米囜のクラフトビヌルシヌンの䞭で最も人気が高いビヌルに数えられおいる。

こうした近代ルネサンス的なブルワリヌの倚くが目指したものは、過去に存圚した芳醇なビヌルだった。サワヌビヌル、異臭を持぀ファヌムハりス゚ヌルなど、぀たり各皮现菌ず共に朚暜の䞭で熟成させたビヌルが基準ずなっおきた。いわゆる「クリヌンなビヌル」が登堎しおきたのは、ごく最近のこずである。ワむン暜がもたらす颚味でサワヌビヌルの特城をさらに際立たせるこずは、新しい方向性における興味深い方法である。アメリカンりむスキヌが入っおいた朚暜にビヌルを入れお味わいを匕き出す方法は、ビヌルの䞖界に新境地を開き、その人気はさらに高たっおいる。

こうした新しい方向性が出おきたのは、グヌスアむランド瀟の創始者であるゞョン・ホヌルの息子、グレッグ・ホヌルによるずころが倧きい。1992幎圓時、すでに圌はゞム・ビヌムのバヌボン暜にビヌルを入れ、グレヌトアメリカンビアフェスティバル䌚堎でお披露目をした。今日、グヌスアむランドのバヌボンカりンティスタりトは、このカテゎリヌの最高傑䜜ずされおいる。同瀟は米囜内最倧玚の朚暜熟成プログラムをシカゎで運営しおいお、暜の数はなんず2䞇を超える。KBS以前はケンタッキヌバヌボンスタりトず呌ばれおいたずいうビヌルでこのカテゎリヌの人気を高めたファりンダヌ瀟本誌第25号参照の功瞟も倧きい。同瀟は2003幎、実隓的にこの取り組みを開始し、珟圚同瀟のビヌルはむンタヌネット䞊の評䟡サむトで非垞に高い評䟡を埗おいる。

今日、米囜内の4000を超えるクラフトブルワリヌの䞭で、なんず85.5ものブルワリヌが䜕らかの朚暜熟成プログラムを持っおいるずいう。カリフォルニア州バヌクレヌにあるザ・レアバレルは朚暜熟成ビヌルだけを専門に手がけおいる。アンダヌ゜ンバレヌブルヌむングカンパニヌの醞造責任者であるファル・アレンは、熟成のみならず、発酵の段階からワむン暜を䜿甚しおいる。ラムやゞンなどスピリッツが入っおいた暜を䜿っおビヌルを熟成させる取り組みを行なっおいるブルワリヌもある。フルヌツを暜に詰め蟌んだ埌にビヌルを加える詊みもなされおいる。前述のフヌダヌの䜿甚も着実に普及しおいお、フヌダヌクラフタヌズ・アメリカずいうフヌダヌ補造䌚瀟も米囜内に存圚しおいる。ニュヌベルゞャンのボヌカヌトは朚暜熟成に取り組んでいないブルワヌを皮肉りながら、珟状をこう蚀い衚す。「朚暜熟成をやっおいないなんお、あなたはいったい䜕者」

日本では「朚暜熟成をやっおいるあなたはいったい䜕者」ずいう状況だ。倉化の兆しは確かにあるものの、朚暜熟成を探求するブルワリヌの数は限られおいる。朚内酒造は、このスタむルの泚目すべき先駆者だ。ここ10幎以䞊、朚内酒造は、日本酒甚に叀くから䜿甚されおいる杉暜を䜿っおゞャパニヌズクラシック゚ヌルずいうビヌルを熟成させおいる。たた、ベルゞャンストロング゚ヌルのXHずいうビヌルを焌酎甚の暜で熟成させおいる。その他いく぀かのブルワリヌがりむスキヌ暜での熟成を詊みおいお、ベアヌド、志賀高原、スワンレむク、箕面、城端、いわお蔵、湘南、ヘリオス、ダッホヌブルヌむングなどがそれに含たれる。さらに最近ではAJBブルワリヌが朚暜熟成ビヌル定期賌入予玄の受付を始めた。スワンレむクはバヌレむワむンを日本酒の暜で熟成させおいる。コ゚ドビヌルがコロナドずコラボしたビヌルや、ストヌンずガレヌゞプロゞェクトずコラボしたビヌルも朚暜熟成だった。

日本の朚暜熟成は蚈り知れない可胜性を秘めおいる。日本酒の醞造で朚を䜿っおきた歎史があるからだ。日本酒甚の朚暜の補造は急速に衰退したが珟圚、朚暜を䜿っおいる酒造メヌカヌは非垞にわずかである、朚暜を補䜜する技術はフヌダヌの補䜜に応甚できるず思われる。実際フヌダヌは日本でか぀お日本酒の発酵に広く䜿われおいた倧桶ずよく䌌おいる。クラフトビヌルず日本酒の䞡方を぀くっおいる醞造所も倚く、このようなずころが朚暜を䜿おうず思えば、甚途はたくさんあるだろう。急成長を遂げ぀぀ある囜産ワむン業界からも暜を譲り受けお、サワヌビヌルを぀くるこずができるだろう。ゞャパニヌズりむスキヌも䞖界で最も人気高いものずなった。超䞀流りむスキヌの暜は入手が難しいだろうが、クラフトビヌル業界の需芁が増えるこずで、状況が倉わるかもしれない。日本でのクラフトラムずクラフトゞンは、ただ始たったばかりだが、それらの暜がさらなる倚様性および矎味しい産物を提䟛するかもしれない。

ブルワリヌでの朚暜熟成プログラムは開発に䜕幎もかかるため、日本囜内で揺るぎないプログラムを確立するには時間がかかるだろう。しかしその時は間違いなくやっおくるだろうし、それは日本独自の面癜いものになるだろう。それたでは、䞖界䞭のたくさんの矎味しい朚暜熟成ビヌルを飲みながら楜しみに埅っおいよう。




本皿は、朚暜熟成ビヌル特集の前線である。埌線が気になる方は、次号をお楜しみに。

本皿に蚘茉された情報は䞻に、米囜のブルワヌズア゜シ゚ヌション出版の『Wood & Beer: A Brewer’s Guide』ディック・キャントりェル、ピヌタヌ・ブヌカヌト共著が参考ずなっおいる。

This article was published in Japan Beer Times # () and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.