Beer Styles: Belgian Blond / Golden Ale



ベルギーでつくられ、世界でも模倣されている、ビアスタイルとして範囲が広い金色のビールがある。このスタイルは、一見すると混乱してしまうような名称を複数持っている。実際、トラピストシングル、アビイトリペル、セゾン、ストロングゴールデンエールがある。しかしながら、これらのスタイルのビールを試すとき、それぞれのスタイルの違いを正確に言及することはかなり難しい。

「アメリカンBJCP(米国ビール審査員認証プログラム)」のスタイルガイドラインでは、金色をしたベルギー発祥のエールのスタイルとして、四つが挙げられている。ベルジャンブロンドエール、ベルジャンゴールデンストロングエール、トラピストシングル、ベルジャントリペルである。これらのカテゴリーは基本的な違いを示すのには便利かもしれない。しかし、それぞれを分類するための境界線は重複しているし、明確とは言えない。そして実際には、それらのカテゴリーにぴったりとは当てはまらない、金色のビールが多くある。類似した名称による混乱を避けるため、本稿では、BJCPのガイドラインが挙げたスタイル名はイタリック体で表記し、一般的な金色をしたベルギー発祥のビールを総称してベルジャンブロンドと呼ぶ。

例を挙げつつ簡単に説明すると、ベルジャンブロンドエールはアルコール度数6~7.5%で、麦芽由来の甘味がはっきりと感じられ、酵母や副原料由来のスパイス香があり、ホップの特徴は比較的軽めである(銘柄例:レフブロンド、ヴァルデューブロンド)。ベルジャンゴールデンストロングエールは、アルコール度数7.5%以上で、ホップの特徴がよく出ていて、スパイス香はやや弱く、フルーツの味わいが穏やかにある(銘柄例:デュベル、デリリウムトレメンス)。トラピストシングルはアルコール度数6%未満で、すっきりしていて、ホップの特徴が良く出ており、酵母の特徴が控えめに出ている(銘柄例:ウェストフレテレンブロンド、セントベルナルデュスエクストラ4)。ベルジャントリペルはボディーが強く、すっきりとしていて花のような香りがあり、軽快でさっぱりとした麦芽の特徴があるが、たいていはベルジャンゴールデンストロングエールよりボディーが強い(銘柄例:ウェストマーレトリペル、シメイホワイト)。

また、BJCPのスタイルガイドラインに載っているスタイルとしてベルジャンブロンドと共通の特性を持つものが、ベルジャンIPAとセゾンである。ベルジャンIPAは混成したスタイルであり、ここでは名前を挙げるだけにとどめる。セゾンは本誌第14号で触れたので、ここでは繰り返さない。

補足だが、ビールの名前に「トラピスト」または「アビイ」が付いていても、これらは明確なスタイルを示しているわけではない。トラピストは公式な名称であり、カトリックのトラピスト修道団による修道院の中で醸造されたビールを意味する。キリスト教の修道院を指す「アビイ」は、ビール名としては非公式な属性であり、カトリックの修道院の中でつくられることがその由来だが、たいていは修道院の中ではつくられていない。アビイビールをつくっているブルワリーの中には、修道院への寄付と引き換えにアビイという名称を使う権利を得ているところもあれば、そうでないところもある。

一般的なベルジャンブロンドは、のアルコール度数は4.5~10%で、色の範囲は淡い金から深い金である。使用する麦芽のうち大部分がピルスナー麦芽かペールエール麦芽であり、ほかの特別な麦芽が少し加えられることがある。氷砂糖が使われることもあり、これはアルコール度数とボディーを高める一方で、色を淡色にしたままにするためである。少数だが、コリアンダーなどのスパイスが加えられた銘柄もある。ホップの香りは弱いレベルから適度に香るレベルで、苦味と甘味は両方とも弱いレベルから適度に強いレベルである。ホップは、特にザーツやスティリアンゴールディングスなどハーブと軽めの柑橘類の香りを持つ、ヨーロッパ発祥の品種が用いられる。アメリカ大陸発祥の、柑橘類やトロピカルフルーツの特徴が大きく出ている品種はあまり用いられない。すべてのベルジャンブロンドが共通して持っているのは、金色、高めの発泡性、そして最も決定的なのは、ベルジャン酵母の類型を用いていることだ。そうした酵母はエステルやフェノールといったさまざまな化合物をつくり出す。それらの物質は「スパイシー」や「フルーティー」といった特徴をビールにもたらし、比較的すっきりした特徴を出す米国や英国のエール酵母でつくられたビールとは全く違う出来上がりとなる。スパイスを加えていなくてもスパイシーと感じられることが多く、オレンジ、桃、リンゴ、そしてもしくはメロンといったフルーツの香りが加えられる。これらはすべてベルジャン酵母からもたらされる。

すべてのベルジャンブロンドはある程度、酵母からもたらされるスパイスの香りがあるため、あらゆるベルジャンブロンドは、典型的なアメリカンペールエールやアメリカンIPA、ドイツやチェコ発祥のラガーよりもスパイスの特徴が出ていることを覚えておかなければいけない。ゆえに「スパイシー」という尺度は相対的である。

「ホップの特徴が出ている」というのも相対的な尺度だ。45IBU(国際苦味単位)という値は、ベルジャンブロンドにとっては上限と言っていいほど高いが、IPAとしては中程度だ。このカテゴリーのビールをつくるのに、びっくりさせるようなIBU値を誇示することはない。ペールエール麦芽しか使わないが、それゆえに、カラメル麦芽などの味わい豊かな特別な麦芽を用いたビールよりも、ホップの特徴がよりはっきりと感じられる。だから、ベルジャンブロンドはIBUの値が示す以上に苦いビールだと思われがちなのである。

これまでに述べた三つの異なる特性について、厳密なルールというわけではないが、いくつかの傾向が見て取れる。まず、アルコール度数が高いものほど甘いということがある。これは当然のことで、発酵される糖が多ければ多いほど、残留する糖も増える。しかしながら出来の良いベルジャンゴールデンストロングエールは、はっきりとした甘味が前面に出ていたとしても、後味がすっきりとしている。第二は、感じられるホップの特徴はスパイシーさと逆の関係にある傾向があるということだ。ベルジャンブロンドはたいてい、スパイシー、「もしくは」、ホップの特徴がよく出ている。ホップとスパイスの両方の特徴をたくさん含んだビールを飲んだら、舌が混乱する。一方で、どちらかの特徴が少しもなかったら、味わい全体は軽薄になる。ホップを利かせたベルジャンブロンドは、スパイスそのものは添加しない。第三は、甘めのベルジャンブロンドはホップよりもスパイスの特徴がよく出ていることが多いということだ。これは決して普遍的というわけではない。しかしおそらく、甘味と苦味が共存するよりも、甘味とスパイスの特徴を合わせた方が美味しいという考えの下に、味わいの設計がなされている。

高品質なベルジャンブロンドは、ビンの中でも発酵させている。これは、ビン詰めをするときに麦汁もしくは糖分、そして酵母を加えてなされる、製造工程の一つである。糖と酵母による発酵により、発泡が得られる。この方法によって、ベルジャンブロンドに典型的なベルギービールらしい発泡を与えられる。ベルギービールらしい発泡とは、発泡の具合としては強いのだが、舌をピリピリとさせすぎるわけではなく、その代わりに小さくて柔らかい泡をつくり出す。ビン内発酵こそ、ベルジャンブロンドが樽詰めよりもビンの方に味の良さをもたらしている工程である。適切な発泡を与えるだけでなく、熟成の工程で添加した酵母と糖が、ビールの日持ちを良くさせる。3、4年熟成させたベルジャンブロンドはホップの特徴をほとんど失い、それゆえに味わいとしてはより甘く感じる。しかし同じくらい寝かせたIPAやラガーと比べるとまだ格段に味わい深い。

日本で広く買い求められる、筆者がおすすめするベルジャンブロンドのリストを挙げる。

ボディーが軽く、ホップの特徴がよく出ている
デランケ「イクスイクスビター」:トラピストシングルのようで、たっぷり、うっとりするようなホップの特徴がある。
デラセーヌ「タラスブルバ」:アルコール度数4.5%の割には味わい豊か。さっぱりとしていてホップの特徴がよく出ている。
その他に、ルル「エスティバル」、デライト「マメールスペシャル」、ルプルス「ホップエラ」。
国産では、ヨロッコ「カルティベイター」。

ボディーが軽く、スパイシー
シメイ「ゴールド」:雑味がなくすっきりしていて、大きくて軟らかい味わい。
ウィットカップペーター「スティムロ」:すっきりとしていて苦いが、非常にフルーティーでややスパイシー。
その他に、ヴァルデュー「ブロンド」、グルート「ブロンド」、カピテルワトウ「ブロンド」。
国産では、小西酒造「白雪ブロンド」。

ボディーが強く、ホップの特徴がよく出ている
強く、ホップの特徴が
ウェストマレ「トリペル」:すっきりとしていて、フルーティーであり、苦い。一流のトリペル。
シメイ「ホワイト」:酵母の特徴がよく出ていて、ホップは控えめであり、すっきりとして、美味しい。樽詰めの方がいい。
その他に、デランケ「グーデンベルク」、デュベル「デュベル」、ドドレ「アラビア」、モアネット「ブロンド」。
国産では、アウトサイダーブルーイング「ドランクモンクトリペル」がかなり近い。

ボディーが強く、スパイシー
「トリペルカルメリート」:甘く、スパイシーで、複雑さがありつつ、後味はすっきり。
キャスティール「ブロンド」:甘味とジューシーなフルーツの味わいがいっぱいで、後味に苦味。
その他に、アヘル「8ブロンド」、サンフーヤン「トリペル」、ドドレ「デゥルティーブ」、ルル「トリプル」。
国産では、こぶし花「グランクリュ」、ベアードブルーイング「無礼講時間」、厚木ビール「アビイトリプル」

筆者にとっては、ボディーが軽めでホップの特徴がよく出ている「シングルタイプ」がかなり魅力的である。しかし残念なことに、本物のシングルタイプはほとんど日本に輸入されていない。ウェストマレ「エクストラ」とウェストフレテレン「ブロンド」は杯が進み、特徴にあふれたセッションビールである。しかしこれらはブルワリー併設のカフェ以外ではめったに飲むことはできない。これらのビールはベルギーの外に輸出されるべきである。しかしながら、すっきりとしていて、ホップの特徴が出ているベルジャンブロンドの新しい波が来ている。これらをつくるブルワリーとしては、修道院というよりも、ベルギーの「クラフト」ブルワリーの方が連想される。上のおすすめリストに入れておいたので、ぜひ試してみてほしい。

米国やベルギー以外のヨーロッパでも、数千銘柄のベルジャンブロンドがつくられている。筆者の経験では、一般的に言って、イタリアのブルワリーが最もうまく再現している。彼らはホップの特徴がよく出ていて、すっきりしていて、味わい豊かな銘柄をたくさんつくっていて、しばしば地元特産の素材が加えられている。

米国では、本物のベルジャンブロンドの特徴を模倣することは避けて、野生酵母を用いて木樽熟成をしたり、さらにはサワービールやファームハウスエールに近付けたりしてきた。もしくは、米国品種のホップを用いてベルジャンIPAをつくっている。米国でベルジャンブロンドの本物を再現しようとしているビールの多くは、最終的に非常に甘くスパイシーなビールとなってしまっている。そうしたビールよりも、ベルジャンIPAや野生酵母を使ったブロンドをつくったほうがいいだろう。

日本でもわずかだが、こうしたビールをつくるブルワリーがあり、ベルジャンIPAやセゾンをよくつくっている(それらの多くは実際、ベルジャンブロンドのカテゴリーによく合致している)。ホップよりもスパイスの特徴を出した銘柄の方が多い。そして使われるホップはたいていヨーロッパ品種ではなく、米国品種である。それらのうちでも新しいものにヨロッコのカルティベイターがある。柑橘類の香りを特徴とする米国品種のホップを用いていて、ベルジャン酵母と完璧に合う。探し出してでも飲みたい逸品である。日本の多くのブルワーはベルギービールを「醸造が難しいビール」と思っているが、良い銘柄をつくるのに成功しているところも多い。願わくばそうした傾向が続いてほしい。今のところは、冷蔵コンテナで適切な方法で運ばれてきた輸入銘柄を見つけるのが安全策かもしれない。

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


This article was published in Japan Beer Times #27 (Summer 2016) and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.