
今年で第2回を迎える「つくばクラフトビアフェスト」。去年の第1回は最終日が台風の影響で中止になってしまったが、今年は時期がずれ、天候に恵まれそうである。
このビールイベントは、学生が主体となって運営されているのが大きな特徴である。大学や研究所などの教育・研究機関が集中するつくば、は緑豊かだが、外で飲めるところが少ない。それならば、気持ち良く外でビールを自分たちでつくってしまえばいいんだ、ということで、学生たちが2012年9月の第1回を開催させた。会場はつくばエクスプレス(TX)つくば駅に隣接する野外広場。秋葉原から最速で45分である。
第2回の代表である、学生の明田川育生(Aketagawa Narumi) に、どうしてこのようなイベントを開催しようと思ったのか聞いた。
ビールに関しては、大手ビールももちろんおいしいのだが、クラフトビールの多様性をより面白いと思うようになった。そうして木内酒造、ブリマーブルーイング、ろまんちっく村などを訪問し、現在どんなビールが国内でつくられているのかを知り、イベント開催についてアドバイスを得るところから始まった。特に、佐倉市のロコビアでは、レシピは基本的に同じだが、ホップの品種だけが違うという3種のビールを飲ませてもらった。ホップのキャラクターによってビールが全く違う性格を見せることに、ただただ驚いた。
そうして2012年9月に第1回を開催。年齢確認ができることも考えて入場料を設定したが、その確認のために大行列が発生。イベント自体は盛況だったものの、入場の列を見て帰ってしまう人もいたのも事実だった。そうした反省を踏まえ、つくば市とも協力し、今回は入場料を撤廃し、誰もが自由に入れる場を現出した。
第1回は、ビールメーカーは13社が出展したが、今年は20社が出展。増加の理由はもちろん、目下のクラフトビールの盛り上がり挙げられる。しかし、このつくばクラフトビアフェスでの出店営業の方法は基本的すぎてユニークだ。代表は言う。「私たちは実際に飲んでみて、『おいしいから是非来ていただきたい』と思えたところにお声がけしました。 もちろん、様々な理由から参加を断られたところはたくさんありましたが、いらしていただいたところはすべて、私たちが来てほしかったブルワリーだと言えます」。とはいえ、茨城県を中心に千葉県や北関東のブルワリーが多く参加しているのは地域性が出ていて、遠方から来る人にとっては、わざわざ行く甲斐があるというものだし、近隣住民にとっては「近くにこんなにおいしいビールがあるのか」と知る機会となるだろう。
なぜこれが可能か。それは、運営サイドが利潤を追求していないからである。実際、昨年の最終日は台風に見舞われてしまって中止、運営側のトータルの利益はほとんど上がらなかったが、さして問題にはならなかった。わずかに上がった利益は今回の運営に充てている。学生が主体の運営の強みと言えよう。運営メンバーは、地元の筑波大学の学生を中心としている。ボランティアスタッフには参加の制限はなく、様々な立場から参加している。ほとんどの仕事をこの運営メンバーとボランティアスタッフでこなしているという。
協賛企業は29社に及ぶ。このなかにはもちろん、参加ブルワリー20社、フードで出店している13社は一切含んでいない。運営スタッフのアルバイト先など、本当に好意で地元の企業の方々に協賛してもらったという。
価格設定も興味深い300円と500円の2種類で、それぞれの提供量は各ブルワリーに任せている。「とにかく、色んなブルワリーの様々なビールを飲んでほしかったので、なるべく安い設定をしたかった」という明田川代表の思いは、学生感覚というだけでなく、クラフトビールを入門者にとってありがたくなっているだろう。
会場内にはステージもあり、近隣の大学のサークルだけでなく、つくば周辺で活動するアーティストが出演している。今年からの試みとしては、スタンプラリーがある。各ブルワリーのブースで何か買うごとに1つ押してもらえて、8つ集めるとビアマグ(筑波大学焼き物の会手作り)がもらえるというものだ。これも、様々なブルワリーのビールを味わうきっかけになるだろう。
運営スタッフはフェスト開催に至るまで、関東のブルワリー、ビアパブ、ブルーパブを巡ってきた。そのなかにはベルギービール専門店も入っており、私が「なぜそこに行こうとしたの?」と聞くと逆に、「色んなおいしいビールが飲めると聞いていただけで、特に考えはなかった」と答えが返ってきた。そうだ、おいしいビールに国籍は関係ない。それはちょうど、つくばが学園都市として、世界中から優秀な研究者が集まっているかのようにだ。
つくばビアフェスタは26日(日)まで。今のところ、雨の天気予報はないし、ましてや台風も来ない。春と夏の狭間の時期、野外で気持ち良く、自由にビールを飲みに、つくばに行くことをお勧めする。
http://tsukubacraftbeerfest2012.weebly.com

