Bohemian Pilsner



by Mark Meli

世界で初めての金色のラガー(下面発酵ビール)は、現在のチェコ共和国の一地方であるボヘミアのプルゼニュで、1842年にババリア(ドイツ・バイエルン州)出身のヨーゼフ・グロールにより醸造された。その明るく金色に輝く色と透明さで、瞬く間に世界中で注目を集めた。特にボヘミアンクリスタルと呼ばれるチェコ伝統のグラスに注がれることで、美しさが際立つ。グロールが醸造していたブルワリーは今ではピルスナーウルケル(ドイツ語で「元祖」の意)として知られている。ボヘミアンピルスナーは世界のすべての淡色ラガー、米国のバドワイザー社から日本のアサヒビール社まで影響を与えた。

しかしここでは、淡色の偽物ではなく、本物だけを取り上げる。チェコ語で「スヴィエトリ・レジャーク」は、私たちが普段ボヘミアンピルスナーと呼んでいるビールの名前だ。これは金色でプラート度(糖の濃度の単位)が12~13のビールであり、仕上がるビールのアルコール度数は4.5~5.5%となる。スヴィエトレ・ヴィツェプニーはプラート度が10度と軽めで、アルコール度数は4%となる。これらのビールは無濾過で提供されることもある。さらにイースト風味のある麦汁を足して提供されることもあり、その場合はクヴァスニツヴィー(酵母ビール)と呼ばれる。(ここで、話しているのは二つの異なるタイプのビール。無濾過のビールは Nefiltrované、イースト風味のある麦芽を加えるのがクヴァスニツヴィー。)

チェコ語のレッスンはこれぐらいにしよう。ボヘミアンピルスナーを特別にしているものは何なのか、ほかのタイプの金色のラガーとの違いは何なのだろうか?ボヘミアンピルスナーには、豊かな味わいや、パンのようなモルトの特徴があり、フルボディー寄りだが重すぎず、ボヘミア地方で育ったジャテツ種ホップがもたらす、素晴らしいアロマとすっきりとした苦味があると、一般的に言われている。このチェコのホップは、ドイツ語名の「ザーツ」で世界中に知られている。草やハーブ、わずかに柑橘類のアロマを持つザーツホップを使わないピルスナーは、本当のボヘミアンピルスナーとは言えない。一方、ジャーマンスタイルピルスナーは、モルト風味がやや軽く、後味により苦味が感じられ、ホップの品種も少し違ったアロマを持つものを使うことが多い。例えばウルケルとビットブルガーを並べて飲んでみれば、違いがよく分かるだろう。しかし、この2つのビールを日本で飲み比べても、それは本物の味をテイスティングしたことにはならないだろう。銘柄は同じでも、ピルスナーは輸送に弱いデリケートなビールだからだ。私はボヘミア以外で、ボヘミアで飲むのと同じくらい良いボヘミアンピルスナーに出合ったことはない。

幸運にも、日本では多くの素晴らしいクラフトなピルスナーがつくられている。まず挙げられるのが日本海倶楽部のピルスナーであり、これは実際にチェコ人によってつくられている。ザーツホップとモルト風味がもたらす豊かな味わいがある。明石海岸ビールも素晴らしいビールで、クリーンで輝きさえ持つホップの風味と後味にスッキリとした苦味がある。横浜ボヘミアンピルスナーは、ほれぼれするような深い金色で、ビスケットのような穀物感と力強いザーツホップの味を持つ。

プラハの歴史ある広場に座って新鮮なドラフトのピルスナーを味わうことよりも素晴らしい体験は、世界中見渡してもなかなか見つからないだろう。しかし、日本国内でつくられた良い品質のピルスナーを、暑い夏の日に飲むのだって悪くない。

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


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