スプリングバレーブルワリー東京

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2015年4月17日に東京・代官山にオープンするキリンビールのグループ会社「スプリングバレーブルワリー」によるブルーパブ「スプリングバレーブルワリー東京(SPRING VALLEY BREWERY TOKYO)」の記者会見が同年3月18日に行われた。会見では、同社の和田徹・代表取締役社長が「店舗・ビール体験・ブランド」について、田山智弘・シニアマスターブリュワーが「ビールと設備」について説明した。

スプリングバレーブルワリー東京の1回の仕込み量は250リットル、年間製造量は60キロリットルであり、これはご存じの通りビール免許のための最低醸造量である。つまり、ビール免許で運営しているブルワリーの中では小さい部類に入る。席数は215あり、さらにこれまでプロトタイプを取り扱っていたオンラインショップDRINXでのボトル詰めの販売もするそうである。これに親会社キリンのマーケティング力を持ってすれば、60キロリットルはあまりにも少ないように思える。しかし、もし不足しそうな場合は、3月25日にオープンする「スプリングバレーブルワリー横浜」での製造分でまかなうという。

仕込み釜やタンクはシースルーになっていて製造工程を可視化している。これまでどこの工場見学に行っても、各設備はブラックボックスのように見えないでいたことを考慮すると、これは評価できる取り組みだ。リアリティーを持って製造工程を理解できる。なお、このシースルーの仕込み釜は、素材の問題による麦汁の焦げを防ぐため、煮沸中は下から撹拌する仕組みになっている。

製造スタッフは4人で、現在は立ち上げ時期のため応援でもう1人が加わっている。このブルワーに選ばれたのは社内公募ではなく、任命される形で決まった。そのため「自分がやりたかったのに」と思ったキリンの社員は少なくなかったという。

定番銘柄は、496、COPELAND、Afterdark、on the cloud、Daydream、JAZZBERRYの六つ。気になる価格は、ブルーパブで提供される際は380ミリリットルで680円前後。驚くほど高くもなく安くもなくといったところだろう。DRINXで販売するボトルは330ミリリットルで400円台にするという。

これら定番銘柄はいずれも一定のクオリティーを満たしていると思う。これらが代官山と横浜でいつも飲めるのは価値があることだ。特に代官山は朝8時から営業しており、朝からビールが飲めるお店が東京に一つ加わることになる。東京観光のスポットになるかもしれない。

記者会見を受けて、気になったことがある。それは和田社長の説明による同ブルワリー事業の目的だ。そこには「クラフトビール市場の拡大・定着をリードすること」とある。キリンは30年以上、小規模での醸造を続けているそうだが、「地ビール」または「クラフトビール」という枠組みでは後発だ。「先輩」をリードするということが、尊大な形でないことを心から願う。また、使いたいホップなどの原料を、キリンの力を持ってして買い占められてしまうのではないかという、ブルワーの危惧も聞いたこともある。

スプリングバレーブルワリーは「クラフトビール市場の拡大・定着を、既存のブルワリーと一緒に進めていくこと」ができるかもしれない。しかし興奮したゾウは人間を踏みつけることがあるが、大人しいゾウも普通に生きているだけで地面の虫を踏み潰している。つまり、同社が全うに利益を追求していくだけで、ほかの既存のブルワリーの商機を奪うこともあり得る。これは本誌2015年冬号の記事「クラフトビールは死んだ?」でも指摘しているところである。今後も同社の動向を注視していきたいと思う。

Kumagai Jinya

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