Beer Roundup (Autumn 2017)

夏の忙しいビールシーズンが終わり、これでひと息つけると思っていた人もいるかもしれない。しかし、そうもいかないようだ。本号で紹介したフレッシュホップビールに加え、秋限定のビールはたくさんある。この秋、どんな新しいビールがタップに繋がっているのかを見つけに、地元のブルワリーに立ち寄ってみよう。

どこに住んでいるかにもよるが、あなたの地元に新しいブルワリーが一つや二つ、加わっているかもしれない。日本では毎月のように新しいブルワリーがいくつか開業しているようだ。この傾向は少なくとも1年は続いている。そのほとんどが都市や郊外地域に拠点を置く小規模のブルーパブだ。これは、20年以上にわたる日本のクラフトビール史において、過去は観光促進の目的や土地の安さを背景に地方で開業するブルワリーが多かったのに対して、ほとんど逆の傾向である。しかし、人口密度の高い都市部におけるクラフトビールの認知度は比較的高く、さらに成長を遂げていて、起業家や大企業は、魅力的な飲食店を運営することで、消費者と結び付く好機を多く見出している。

また、小規模のブルーパブが、全国的な拡大を目指すのではなく、近所やその町だけにビールを提供したいと望むこの傾向は、米国や英国などのクラフトビールが人気な国のそれに続いているようだ。これはクラフトビール業界の専門家からは「ローカリズム」あるいは「ネオ・ローカリズム」と呼ばれている。簡単に言えば、消費者が家の近くでつくられたクラフトビールを口にする機会が増えているということだ。近所でつくられるビールを飲む人は多く、例えば、スーパーマーケットで州外(または県外)や地域外のブルワリーのビールを買うのではなく、地元のブルーパブに行って地元のビールを飲んでいる。米国では少なくとも、市場が禁酒法以前の状態に戻ってきているようだ。しかし中間規模のリージョナルブルワリー(訳者注:BAの定義するクラフトブルワーの製造規模による3分類のうち真ん中の概念で、年間製造量が1万5000~600万バレル)は以前の顧客が離れていて、それが課題となっている。

では、彼らリージョナルブルワリーにはどのような道が残されているのだろうか。まず、悲しい結末に倒産がある。新しいタップルームをオープンしたり輸出事業に乗り出したりして、新しい市場に挑戦するブルワリーもある。また、パートナーシップを探すブルワリーもある。パートナー先としては、資金力のあるところか、戦略的な関係性を築けるところが多い。これまで本誌は、多国籍企業の買収劇について何度も取り上げてきた。

この夏のビッグニュースは、サッポロがサンフランシスコのアンカーブルーイング(本誌第28号で特集)を買収したことだ。米国のクラフトビール関係者のほとんどは、1965年にアンカー社を購入したフリッツ・メイタグが近代のクラフトビールムーブメントの生みの親だと考えていたが、2010年に彼は同ブルワリーを投資家に売却した。ほかのリージョナルブルワリーと同様、アンカー社は圧迫感を感じていたのだろう。しかし、1993年に新設された蒸留酒部門は極めて順調だ。同社の投資陣は、その歴史をよそに、ビール部門を売却するときが来たとみたようだ。そこにサッポロが飛びついた。我々はこれは良い投資だったとみている。サッポロはその資金をもって、この伝説的な銘柄に「スチーム」のごとく新たな活力を与えられるのだから。

Fritz Maytag (photo courtesy of Anchor Steam)

このニュースはサンフランシスコ・ベイエリアの新聞の一面に大々的に取り上げられ、多くの人に衝撃を与えた(または浅ましい政治ニュースの一面にうんざりしていた人たちにとってこの記事が新鮮だっただけかもしれない)。多くのクラフトビールファンや業界関係者は、サッポロ、あるいはサッポロの意図をほとんど知らず、言葉を失った。様子を見ようという人が多いようだ。

近頃の買収は必ずしも大手ビール会社や大企業が絡んでいるわけではない。日本のビールファンにも馴染みがあるということもあり、最近の買収ニュースのいくつかが目に留まった。サンディエゴに拠点を置くコロナドがモンキーポーという小規模ブルワリーを買い取った。一方で、コロラド州フォートコリンズのニューベルジャンが、規模は小さいがサンフランシスコの象徴的なブルワリー、マグノリアが倒産の危機にあったところを買収。エリシアン(現在はアンハイザー・ブッシュ・インベブが所有)の共同創立者でクラフトビール界の巨匠としても知られるディック・キャントウェルが少数派パートナーとして加わり、マグノリアの醸造オペレーションを率いることとなった。これは全て業界のオタクトークだ。では、消費者であるあなたにこれが意味するものとは何だろうか。第一に、それらの素晴らしいビールが日本に入ってくるのか? それは輸入代理店の手に委ねられている。第二に、日本国内でクラフトブルワリー間の出資、または買収は起こるのか? 少なくとも、現時点では考えにくい。より面白い質問は、もしあなたが日本のクラフトブルワリーを買収するならどこにする? そしてその理由は?


買収の話はこの辺にしておいて、楽しいニュースをいくつか紹介しよう。

6月、テキサスのあるブルワリーが日清カップヌードルに着想を得たビールをリリースした。カップ・オー・ビールと名付けられたこのビールは、実際にラーメンの麺が使われている。スタイル自体はゴーゼ(小麦使用比率50%以上、後味に若干の酸味と塩気を感じるスタイル)で、さらにライムとショウガ、レモングラスの風味がするそうだ。うん、変わっている。また、最近我々はツイッターでホップ味のキットカットがいつ出るのかという投稿をした。ぜひともIPAスタイルのホップ味であってほしい。

ラグニタスも最近、変わった原料を用いてビールをつくっている。大麻だ。大麻はホップと同じ科に属する植物で、その抽出成分が使われているそうだ。この二つの植物は、テルペンという、植物の精油の中に含まれる芳香のある有機化合物を共通して持っている。ラグニタスは地元のハイテク大麻抽出会社(カリフォルニアではマリファナは準合法)の協力を得て、テルペンを分離し、精神活性物質であるTHCを除いたものを使って醸造した。そのビールはスーパークリティカルエールと名づけられた。長きにわたってTHCを含まないヘンプビールが世に出回っているが、ラグニタスのビールは、より高度な技術が駆使され、それによってビールづくりにおける香りの探求の新しい分野が切り開かれるといえよう。



数十年以上にわたり、自家醸造コミュニティーは新しい原材料を探求している。自家醸造者の多くが、最終的には醸造を仕事にし、世界最高峰のビールをつくっている。米国では、彼らの一部が自家醸造者たちにレシピを公開し、そのコミュニティーに還元している。今年の夏、米国自家醸造家協会(AHA)が国内のブルワーから得た50近くのレシピを自家醸造用(約22~46リットル)に縮尺し、公開した。ロシアンリバーのプライニー・ジ・エルダーやベルズのトゥー・ハーテッド・エールなど、(少なくともビアギークから)最高評価を得る米国のビールもそのレシピに名を連ねていた。残念ながら、日本では自家醸造は非合法である。しかし、「実験」している人があなたの周りにいるかもしれない。

本誌2015年夏号の表紙にヨガをしながらビールを飲む若い女性を起用した。お堅い読者は、それに腹を立て、様々な文脈で不適切であると非難した。しかし我々は性差別主義者ではない。先見性をもってしてそうしたのである。ロンドンのコミュニティー、ファンジングは「ユニークな体験」を促進する団体だが、メンバーの一人がビールヨガクラスを主催し、人気を博している。参加者はビールを飲みながら1時間、ヴィンヤサヨガをするそうだ。ビールヨガが行われるのは何もロンドンだけではない。ドイツやオーストラリア、米国などにも、このようなヨガクラスを行う団体がある。この新しいトレンドは、『ビジネスインサイダー』や『マッシャブル』といった国際的な大手ニュースサイトでも取り上げられ、さらに普及した。日本もビールヨガの時代が来た。地元のバーやヨガスタジオに話を持ちかけてみてはいかがだろう。それが実現するまでは、家のリビングルームでやるといい。きっと楽しいはずだ!


This article was published in Japan Beer Times #32 (Autumn 2017) and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.