Beer Roundup (Summer 2017)



創刊号以来、この「Round Up」コラムは、主に日本国内のビールのイベントや関連ニュースを要約するためのものであった。近年では海外ニュースも定期的に報じてきた。今後は、海外に焦点を当てた情報とビール関連の突飛で面白いレポートを中心に届けたいと思う。海外のビール業界の発展について学べる日本のリソースはほとんどなく、我々はその情報のギャップを埋める必要があると感じている。もちろん、日本で重要な発展があれば、それについても報告する。

世界最大規模のヘビーメタルイベント「Wacken Open Air(WOA)」が、8月にドイツ北部で開催される。もちろんそこでビールが提供されるわけだが、なんと長さ7キロメートル、直径35センチメートルのパイプラインで運ばれるのだ。これは、毎年ビールを輸送するトラックを何台も呼び込むよりも環境に優しく、言うまでもなくコストパフォーマンスがよいと主催者は主張する。ドイツのメディアによれば、同イベントには約75,000人のファンが参加し、3日間の日程で1人平均5リットル(9パイント)以上のビールを消費するという。ビールシャワーがあるかどうかについては、現時点でまだ不明である。

実際のところ、ビールのパイプラインは斬新だというわけではない。去年、ベルギーの都市ブルージュが、その歴史地区にあるドゥ・ハルヴ・マーン醸造所と郊外にある瓶詰工場をつなぐ3.2キロメートルのパイプラインを開通させた。WOAと同様、ビールの運搬用巨大トラックを、世界遺産に登録されているような、趣きある街の通りをやかましく走るよりも正当性があったのだ。同醸造所としては、数百年の歴史があるブルワリーを記念館にしてしまうのではなく、ビールをそこでつくりを続けたかったのだ。この計画は450万米ドルかかったそうだが、そのほとんどがクラウドファンディングによって集められた。実際、この額はベルギー国内のクラウドファンディングの記録を打ち立てた。1時間あたり4,000リットルのビールが、パイプラインを通ってブルワリーから瓶詰工場に送られる。極めて重要な技術的特徴として、パイプが自身の洗浄システムを持っていることが挙げられる。3キロメートルにわたるビールが汚染が原因でだめになってしまうという事態をあなたは想像できるだろうか。

ビールがベルギーの国民精神の一部であるか否かという疑問がもし浮かんだならば、このニュースを紹介しよう。ベルギーの天文学者チームが今年初頭に、惑星系を新たに発見し、それを同国の伝統的なビールの一つにちなんで名づけた。その名も「TRAPPIST-1」は、7つの惑星を持つ惑星系の正式名称である。トラピストビールは指定のトラピスト修道院の僧侶によってつくられるビールで(世界に11あるトラピスト修道院のうち、ベルギーに6つある)、その惑星系の全ての惑星が同ビールにちなんで名づけられた(オルヴァル、ロシュフォールなど)。同天文学者が使用していた望遠鏡までもが、トラピストと呼ばれていた(「TRAnsiting Planets and Planetesimals Small Telescope」の略語)。今年の冬に発表されたこの発見は広く反響を呼び、航空宇宙局(NASA)は同惑星系への旅行ポスターを公開するほどだった。あなたがこの宇宙旅行に出かけようと考えているなら、フライト用にたくさんのビールを詰める必要があるだろう。光速で移動する場合、TRAPPIST-1に着くには4,000万年を要する。

この春、米国の大御所ブルワリーであるオスカーブルースが「ファグリ」という名のビールを発売した。このビールは、日本でもビールの副原料として人気の柚子が入っているが、実のところ、同ブルワリーが以前ヤッホーブルーイングとコラボレーションしてつくった「KaBREWki(カブリューキ)」という柚子IPAに着想を得たものである。柚子の魅力と、日本のビールと柚子との連想性が米国では強いようである。ビアキャンププロジェクトの一環として、シエラネバダブルーイングは、木内酒造(常陸野ネスト)とコラボレーションし、柚子を使ったホワイトIPAをつくった(「ホワイト」というのは、それがウィットビアまたは麦芽とともに小麦を使ったビールであることに由来する)。ビアキャンプは、シエラネバダが12の一流ブルワリーと一連のビールをコラボレーション醸造する企画である。今年は、米国内から6つ、海外から6つのブルワリーが選ばれた。そして、全米各地の都市で、それらのコラボレーションビール、さらには地元そして全国各地のビールを集めて大規模なフェスティバルを開催するのだ。シエラネバダの創設者であるケン・グロスマン自身が、今年サンフランシスコでのフェスティバルでビールを注いでいるのを見て、我々は驚き、感激した。これらコラボレーションビールは、特別な12本入りケース、そしてカリフォルニア州バークレーにあるシエラネバダのトルピードルームといった特別なクラフトビアバーで飲むことができる。日本のブルワリーがそこのタップメニューに載るのはなんとも素晴らしい。それが最後とならないことを祈っている……。

最近上海で行われたクラフトビアチャイナ・カンファレンスでは、3日間にわたって業界に関するエキシビションが行われ、スピーカーが数日間登壇した。同カンファレンスはトレードショーを世界各地で展開するドイツ企業であるニュルンベルクメッセによる主催で、主にブルワリーの機械やそのほかの関連技術が展示されていた。展示の中で一番クールだったものは、運送用コンテナにぴったりとフィットするように設計された業務用醸造システムだ。もし実際にそれをコンテナの中に収納したとしても、そこで醸造するには電気、水、下水は必要となるだろう……。しかし、この超コンパクト醸造システムは、土地が限られている日本には良い。理論上、持ち運びも可能である。同展示会の約1カ月前に、米国ビール醸造者協会(以下BA)が、毎年開催されるクラフトブルワーズ会議の一環として、(中国のものよりはるかに大規模の)展示会をワシントンD.C.で開催した。複数の運動場に匹敵する空間で、ブルワリーが望むであろう全てのものがずらりと並んでいた。我々が参加してきた5年という短い期間で、自動運転機械やソフトウェア制御機器からバーのタップシステムに至るまで、ますます複雑化されていっていることに気が付いた。ロボットがビールを注ぐ未来はいつ来るのだろう。TRAPPIST-1への宇宙旅行のお供としてロボットビアサーバーを連れていくことも可能性としてなくはない。

This article was published in Japan Beer Times #29 (Winter 2017) and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.