Beer Roundup (Winter 2017)



読者の皆様がこの秋、健康に美味しいお酒を楽しんだことを我々は願っている。秋のビアフェスティバルに行き過ぎて、肝臓が音を上げる寸前ではないかと心配だ。大人の飲み方を身に着けてほしい。オクトーバーフェスティバルなどの時だけでなく、毎日きちんと責任を持った飲み方をするのが大切だ。……という表向きのコメントはさておき、ちょっとした告知をさせてほしい。

我らがマーク・メリ教授が執筆した“Craft Beer in Japan: the essential guide”の日本語版「日本のクラフトビールのすべて」が夏に出版された。おかげさまで、ビアフェスや、日本全国で作者と翻訳者が行ったバーでのトークイベントでの売れ行きがとても良かった。トークイベントや本の販売に興味をお持ちいただける飲食店の方は、ぜひご連絡いただきたい。購入希望者は、本誌ウェブサイトでビアバーを30軒弱ほど掲載しているので、そのお店でご購入いただくか、直接ホームページからご注文いただけると幸いだ。良い本を読みながら良いビールを飲む、ちょうど良い口実になるだろう!



秋のビアフェスティバルと言えば、熊澤酒造(湘南ビールの製造元)のオクトーバーフェストは、緑が生い茂った、とても環境の良い神奈川県茅ヶ崎市の同社敷地内で行われた。規模は小さいものの、最高のビアフェスティバルの一つである。特筆すべきは、熊澤酒造は美味しいビールと日本酒の両方を醸造しており、どちらも提供されること。さしずめサケトーバーフェストといったところだろうか。従業員の中に才能あるギタリストがいて、彼のバンドが小さなステージで演奏し、我々を魅了した。その他ヘッドブルワーの筒井貴史自身が特別なビールを注ぎ、ランドル(ホップが詰まったチューブフィルター)を使ったビールも提供されていた。なにより、金儲けとは無縁といった雰囲気がとても良い。家族経営のブルワリーが小さなフェスティバルを催し、来場者のほとんどが地元の人達である。これこそフェスティバルのあるべき姿のように思う。いや、あるべき姿なのだ!

大阪府茨木市で9月に開かれた麦音フェストも、規模は熊澤酒造より大きいが、同じようにコミュニティー感に溢れたフェスだ。その理由はおそらく、地方自治体を含む共同体が開催に大きく関わっているからだろう。念のため言っておくが、我々は反資本という訳ではない。年中大規模なイベントが多数開催され、何十万人もの人達が楽しんでいるのは承知している。ただ公共施設でそういったイベントが開催されるならば、地元の地域社会が一番利益を享受すべきだと思う。イニシアチブをとる茨城市には拍手を送りたい。

春に続いて、関東地域では埼玉のけやきひろば秋のビール祭りとビアフェス横浜、これら二つの大きなフェスティバルが同時期に開催され、ブルワーは時間を分けるかどちらか片方だけに参加するか選ばなければならなかった。朝にサーフィンをして夜にスキーやスノーボードに行くアウトドア好きのスポーツ中毒者はいるが(これは日本の多くのエリアで実行可能だ)、同じように、早い時間にどちらかのフェスに行き、遅い時間にもう一つのフェスに行くというビアフェスティバルの熱狂的なファンはいるのだろうか。いずれにせよ、最近はとにかくフェスティバルが数多く開催されていて、ブルワーはほぼ毎週同じような決断に迫られている。そう遠くない将来、もしかしたらロボットがビールを注いでいるかもしれない。そのような世界はユートピアか、はたまたディストピアか。その答えはビールの品質で決まるだろう。



今年の秋は米国のブルワリーから日本を訪れる人が多かった(大統領選のドタバタ劇にうんざりしたのも理由かもしれないが)。ファウンダーズブルーイングカンパニーの共同創業者であり社長のデーヴ・エングバーズと国際販売部門のヴァイスプレジデントであるブライアン・メイが、彼らが9月に日本進出したことを祝うため、10月に来日した。彼らをインタビューした結果、彼らがロボットではないことを我々はほぼ確信している。インタビュー記事はウェブサイトに掲載しているのでぜひともチェックされたい。

モダンタイムス(今号特集記事を参照)からはヘッドブルワーのマット・ウォルシュと「ビアジーザス」(冗談ではなく本気だ……)のフィル・マクニットが10月下旬に来日し、多くのバーを訪れた。東京のウォータリングホール、横浜のアンテナアメリカ、名古屋のホップバズ、大阪のクラフトビアベース、ディグビアバール、ビアバルガレットが、彼らの熱狂的なファンのためにイベントを開催した。連日続く忙しい夜にはたくさんのスタミナが必要なはずだ。彼らこそロボットなのか? いや、献身的に働くブルワリースタッフというだけだろう。



スティルウォーター・アーティザナルのブライアン・ストランキは11月に来訪し、名古屋と東京でパブクロールを楽しんだ。彼は、うしとらブルワリーで栃木のブルワーとのコラボレーションビールをつくるために栃木に立ち寄った。梅と柚子を使ったサワーエールで、お正月あたりにリリースされる予定だ。伊勢角屋麦酒ともコラボレーションし、酒米とツツジから採取した野生酵母を使った、スプリング・フィーバーという名前のセゾンビールもつくった。前号の特集記事でも明らかにしたが、伊勢角屋は花から採取した野生酵母を使ったビールづくりの可能性を探っている。冬は始まったばかりだが、春を味わうのに早すぎるということは無いだろう。

同じく11月、米国ブルワーズ・アソシエーション(以下BA)とアメリカンビールのインポーターが合同で開催した第2回アメリカンクラフトビア・エクスペリエンスが東京の竹芝ニューピアホールで行われた。BAのEDP(輸出開発事業)総括担当のマーク・スナイダーが旗手となって、この素晴らしいビールが集まったイベントを盛り上げていた。また比較的小さなブルワリー関係者も来日していた。サウンドブルーイング代表のマーク・フッドとアラン・モウムは、滞在中ほぼ毎日、大阪、名古屋、東京を回ってタップ・テイクオーバーを敢行し、忙しい日々を過ごした。スクーナーエグザクトのマーク・マックラングとネブラスカブルーイングのポール・カヴァラックも、来場者と交流したりセミナーを開催したりと、ビールの売り込みをした。将来的な輸出の可能性を鑑みて、ハーディウッドパークのリチャード・ミラーとラッキー888のピエール・アグスティンもそれぞれ自分達のビールを持って来ていた。



そして、ストーン・ブルーイングカンパニーの20周年を祝い、渋谷で開催されたパーティーに出席するため、共同創業者のグレッグ・クックも来日した。コエドビールの朝霧重治、ベアード・ブルーイングのブライアン・ベアード、スラッシュゾーンの勝木恒一らがグレッグ・クックと共に壇上に上がり、米国と日本の市場について話し合った。その後は、ストーンのビールを相当量飲み、サインを求める出席者達と交流を深めていた。この夜一番人気だったビールは限定ビールのシトラカドIPAだった。このビールはシトラホップとアボカドの花から採れる蜂蜜を使ったダブルIPAである。こんな変な組み合わせは人間しか思いつかないだろう。



この寒い季節、読者の皆様はくれぐれもご安全に。友達と暖かく過ごされたい。大丈夫、友達は地元のバーで見つかるだろう。

This article was published in Japan Beer Times #29 (Winter 2017) and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.