Rye Beers

The Brewer’s Nightmare Rye IPA– much more enjoyable for the consumer.  (Photo: Baird Beer)

ライ麦は、大麦や小麦ほどではないが、何世紀にもわたってビールに用いられてきた穀物である。そして世界のクラフトビールづくりにおいて、再び人気を集めている。大麦とよく似ているが、痩せた土地でもよく育ち、干ばつやかなり寒冷な気温にも耐え得るので、理想的な冬の作物の一つである。ドイツからロシア、そしてスカンジナビア半島にかけての中・東欧では主食にもなっている。そうした地域では共通して、濃色のパンにされたり、丸ごとでスープやジン、ウォッカ、そしてビールにも使われたりしている。

ライ麦ビールは当然、こうした地域で最初につくられた。歴史上、最もよく知られているのは、バヴァリアンロッゲンビア(ロッゲンはドイツ語でライ麦の意)である。これにはライ麦麦芽が30〜60%用いられていて、ヴァイツェン酵母で醸造され、出来上がりは明るい色でスパイス香が豊か。ヘーフェヴァイツェンに似ているが、ライ麦麦芽からもたらされる穀物特有のスパイスの特徴が加わっている。これは1516年にビール純粋令が施行されてライ麦がビール醸造に当たって使用が禁止されるまで、ありふれた存在だった。ロッゲンビアは20世紀に、ビール純粋令前と全く同じものというわけではなく、いまだに普及しているとは言えない状況だが、復活がなされた。トゥルンウントタクシスロッゲンは、ライ麦ビールのなかでもおそらく最も有名であり、日本でもときどきお目にかかる。日本でつくられているロッゲンビアとしては、ベアレン醸造所(岩手)がつくるライ麦ビールは本物であり、おそらく最も優れている。ベアレンは過去にもライボックとロッゲンヴァイスをつくったことがある。

北欧諸国でも同様に、ライ麦をビールづくりに使う伝統がある。フィンランドのサハティというビールは通常、ほかの穀物とジュニパーベリー(セイヨウネズ。ジンづくりに使われることで有名)と一緒にライ麦が用いられている。このつくり方は、スウェーデンのゴットランズドリッカやエストニアのKoduõlu も同様である。こうした伝統的なビールは現在も家庭でつくられている一方で、商品として販売されているものも存在している。特徴としていくぶん単純になる傾向にある。それらは酵母そのものの特徴が出ていて、スパイシーで、スモーキーであることもある。そして「初心者」をびっくりさせるような豊かで興味深い味わいを伴う。バルト地方やスラブ諸国でつくられているクワスは、たいていはライ麦でつくられたパンを発酵させてつくられ、フルーツを加えることも多い。アルコール度数は0.5〜1.2%と低く、ビールというよりはむしろソフトドリンクとしてしばしば扱われる。

Two-row malted barley on the left, malted rye on the right Two-row malted barley on the left, malted rye on the right

ライ麦ビールは、米国でのクラフトビールづくりで多く使用されるようになり、さらに人気が広まってきた。使われることが多いのは例えば、IPA(ライピーエーと言うべきかもしれない)や、ベルギービールの影響を受けたファームハウスエールである。ライ麦はビールにはっきりとしたスパイス香を加えてくれて、米国発祥のホップ品種の一部や、ファームハウス酵母のスパイシーな特徴とよく合う。ライ麦の粒の皮は硬くないので、たくさんの水を吸い、ビールづくりにおいては扱いが難しいという悪評が知れわたっている。どろどろと粘着性の高いオートミールのかゆ(日本のおかゆに似ている)が糖化タンクに残っていて、取り除くのに時間と手間がかかるのを想像してみてほしい。そうしたことから、ベアードブルーイングの季節限定銘柄であるブルワーズナイトメアライIPAような名前が付けられることもある。このビールは、ライ麦のスパイス香が、複数種類のホップとよく合っている。ブルワーにとっては悪夢かもしれないが、消費者にとっては素晴らしい原料なのだ!

日本に輸入されているさらに興味深い米国産のライ麦ビールには、レフトハンドのフェイドトゥーブラックというブラックライエールや、ライ麦の特徴がネルソンソーヴィン種のホップと素晴らしく合っているアルパインのネルソンIPAがある。ブルーリーテルーというブランドのサワーインザライは、木樽熟成のサワービールであり、相当な量のライ麦が使われている。ブールヴァ—ドのライオンライという銘柄のように、ライ麦ウィスキーの樽で長期熟成されたライ麦ビールは新たに出てきたビールで、日本ではなかなかこのアルコール度数12%という化け物にはお目にかかれない!

日本のブルワリーも同様に、ライ麦を使うところが増えてきている。湘南ビールや丹後地ビール、ハーベストの丘(大阪)ではライ麦ラガーをつくっていて、興味深くかつ穏やかな用い方をしている。伊勢角屋麦酒やスワンレイクビール、コエド、カンピオンエール、ロコビア、シャトーカミヤなどでは、さまざまなタイプのライ麦エールがつくられている。京都市の山岡酒店が新潟麦酒で委託醸造している京都ぐるりという銘柄は独特で、地元である京都産のライ麦を使用している。埼玉県の麦雑穀工房マイクロブルワリーも挙げなければならない。ブルワーの鈴木等は、家族が育てたライ麦を用いたいくつかの独特なビールをつくっていて、とりわけ素晴らしいのは雑穀ヴァイツェンとラスティックセゾンだ。

クラフトビールづくりでは、新しくて独特な味わいの探求が熱を帯びてきているので、ライ麦のような従来とは違った穀物の使用が増えることが期待できる。ファームハウスライ麦ビール、サワーライ麦ビール、ライ麦木樽熟成、ライピーエー——。ライ麦は我々がもっと親しむべき穀物である。

All Beer Styles articles are written by Mark Meli, author of Craft Beer in Japan.


This article was published in Japan Beer Times #26 (Spring 2016) and is among the limited content available online. Order your copy through our online shop or download the digital version from the iTunes store to access the full contents of this issue.